LILY BORN & MEI DIE

LILY BORN & MEI DIE

注意*愛と憎しみの言葉ばかりです。

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恵美が今夜、逝った

砂時計が落ちて
花が水溜りに浮かぶような
優しくて静かな最後だった
とても彼女らしい

団欒の中に一瞬、微笑を残して

死んだ恵美の横顔は
とても穏やかだった、写真を撮りたい
くらい美しかった
そんな事は出来なかった

僕が今まで見た中で多分
一番天使に近い物で(たくさん祈ってしまった)
いつまでも眺めていたかった

お別れを言わなくちゃいけない時間だったので
指を滑らせながら、僕は一人で話した、返事はない
腕が冷たかった、髪も嘘みたいに縮れ
みんな泣いてたけど
僕はあまり涙が出なかった
やっぱり昨日一緒に寝ればよかったなって
そう思っただけ

寝る前に
僕の天使になって、ほしいって
お願いした、

彼女の鼻息は荒かったけど
小さく頷いた気がした

「あなたはさよならフェチなのよ」
なんて笑ってた

可愛い、声も、瞳も、唇も、

あの頃きみは女子高生で
ナンバーガールのコピーバンドを
やりたがってた
役所の34階にあるレストランの真ん中で
ピアノを弾く前、髪に一回くしを通して
オルゴールみたいな声で歌ってた

世界が魔法みたいに
美しく見えた、現実なんて
信じられなかった

自由が好き 自由が好きなの 私

最後の日も彼女は
散歩に行きたがってた

もう誰かを好きになりすぎるのはやめよう

これほど死が近くにあって
自然な物だなんて知らなかった
これほど死が近くにあって
優しい物だなんて知らなかった

安心感さえあった

僕も連れてってほしかった。正直
恵美の手を握って、行きたかった

死にたいと思ってる、17歳から
死にたいと思ってる、明日も、明後日も
電車に揺られて、痙攣する瞼で
まだ生きなくちゃ
駄目だって

誰よりもわかってたはずなのに

彼女の魂は旅に出る
まだ近くにいるけど、明日にはいない
恵美、遠くへ行ってしまっても
きっと会える気がする

だからこそ
もう少し生きたい
大丈夫かもしれない

狂ってしまっても
愛される限りは
生きなくちゃ駄目

文章にしなければ
こんな簡単な事も理解できなくて
涙すら、出て来ないなんて
僕の心臓はプラスチックより
軽薄で、終わってる、廃墟、口をゆすぐ

誘いに乗っては行けない
天使が
優しい微笑で
見守ってくれてるから

生きよう、生きよう、
生きよう、無理して笑顔を作って

おやすみ、おやすみ
おやすみ、幸せな時間が終わる

永遠が終わる

だけど僕には
きっと朝が来る
おはようって
誰にも言えない

階段

とても寂しそう
消えてしまいそうなほど

生きなきゃな

恵美、おやすみなさい

明日の朝、
涙を流しながら夢見る僕の
ほっぺたを叩いて

「嘘だよん」なんて
言ってくれないかな、

そしたら散歩に行こう
今度は
絶対そうしよう



/笠原メイ