TPP問題で一躍有名になったのが京大大学院の中野剛史さんでしょう。(この人の専門は都市工学らしいですが)
ある番組での中野さんの主張を聞いてみると、TPP参加国の中で日本とアメリカだけでGDPの90%を占めるというものでした。
確かにTPPにはチリやブルネイといった経済的に小さい国が多く参加しているため、この説明は納得いきやすいかもしれません。
しかしTPPは貿易問題であるため、GDPではなく輸出入額の規模で比較するのが適切ではないでしょうか。
というのも日本とアメリカのGDPに占める輸出入額はそれぞれ22%、18%と他国に比べて低いからです。
チリは75%、オーストラリアは33%となっており(2009年総務省統計局のデータより)、中野さんのデータにはこのことが考慮されていません。
これを考慮した値を算出すると日本とアメリカの占める割合はTPP参加国の中で75%となります。
75%でも十分大きい割合ですが、残りの25%は無視できる数値ではありません。
またカナダとメキシコもTPP参加へ打診したことから、この割合はさらに下がると予想されます。
彼が意図的に数値を操ったかどうかは分かりませんが、精細さを欠いていることは事実です。
そしてインターネットによくあるアメリカ陰謀論も全くナンセンスな主張だと僕は思います。
このことは多くの点から確かめることができます。
第一にオーストラリアが入っている点。アメリカとオーストラリアではオーストラリアの方が農業に強いため、TPPに参加した場合アメリカからの輸入よりもオーストラリアからの輸入が増えることは簡単に予想できます。
また、ISD条項(TPPの法律が国内法より優先される)にオーストラリアが反対していることから、実現の可能性が低いと考えられます。他国と連携して批准できないと主張すればいいだけですしね。
第二に日本のTPP参加をアメリカはむしろ迷惑だと思っている点。そもそもTPPに入りたいと言ったのは日本からです。しかもアメリカの自動車業界や一部の議員は日本のTPP参加に反対しているといいます。実際オバマ大統領も日本が入るといろいろ条件を付けてきて決定が遅れると考えているようです。
他にもいろいろ判断材料はありますが、それでも陰謀だと言う人は放っとけばいいでしょう。どの国も戦略は持っていますが、それを陰謀と言い張る人達ですから。
アメリカの医療が日本の保険制度を壊すという主張。これもナンセンスな主張で説明するのがめんどくさいですが、オーストラリアとニュージーランドが保険制度を持っていることからあり得ないと考えます。
もしアメリカの医療が入ってきたとしても、混合診療になってお金がある人はいい治療が受けられるというだけで、従来の保険制度がなくなることはないでしょう。診察料は市場で決定され人々がそれに見合う額だと思わなければ淘汰されて浸透しないだけです。言語という障壁もありますし。
最後に日本の農業が壊滅するという主張。そもそも日本の農家の平均年齢は65歳となっており、TPPに参加しなくても10年20年後には壊滅します。それはこれまでのデータから見ても分かる通りでしょう。
元々日本は農業に向いていないため大量生産することは難しいです。であれば味や高品質といった付加価値を付けるしか生き残る道はないはずです。実際今ある農家は高品質というイメージで作物を売り出しているはずです。
それはおコメにも言えることです。安いといったからって主食であるおコメを外国産に変えるといったことはあまり考えられません。寿司ネタに使うおコメも外国産では水分が足りなくて合わないでしょう。
90年代おコメが不作だった時にタイ米が輸入されましたが皆さん捨ててましたね。
月数千円のために主食の日本米を食べないという選択をするのであれば、それはTPPの問題ではなく所得が下がっていることが問題だと僕は認識しています。
お金に困っている人には外国産のおコメを食べるという選択が増えることにもなりますから、TPPはさほど問題ではないでしょう。
以上で批判は終わりですが、今度はTPPの問題点に関して野口悠紀夫教授と大前研一氏の意見を引用して述べてみたいと思います。