※筆者は2階席 前から6列目 真ん中からやや左寄りの位置から鑑賞したという背景の下、お楽しみ下さい。



12月25日。

クリスマス。

突然のホームページ上で始まったカウントダウンの後、公にされた活動再開の合図と言うべき「NEW SINGLE 輪郭」と「12/25 TOUR2012 IN SITU 東京国際フォーラム ホールA」。東京国際フォーラム ホールAは全指定席の会場。近年のDIR EN GREYにしては珍しい。果たして、この選択は何を意味するのか。

さらに、MINERVAにおけるDieの言葉。そして、インターネット上の「開場したら早くに会場に入ってもらった仕込んだ甲斐がありやす。 薫」という薫の言葉。これは何を意味するのか。



開場すると、気付けば筆者は1番乗りで会場に入っていた。

そこで流れていたのはオルゴールで奏でられたAMONだった。

そう。

クリスマスに合わせて、オルゴールver.のDUM SPIRO SPEROの楽曲がBGMとして流れていた。

その後、DUM SPIRO SPEROの中から7曲がオルゴールver.として開演前に流されていた。

DIR EN GREYの粋な計らいである。

【BGMセットリスト】

AMON
DECAYED CROW
激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇

流転の塔
THE BLOSSOMING BEELZEBUB
DIFFERENT SENSE



スクリーンは、今ツアーお馴染みの、筒状スクリーン、ステージ両サイドにDUM SPIRO SPEROの像型スクリーン、そして通常のバック・スクリーンだ。

暗転すると、今ツアーお馴染みの映像と共に『狂骨の鳴り』が響く。ピアノの旋律に合わせスクリーンには白い液体が飛び散り、低音が鳴り響き始めるとそこには赤く染まった障子が浮かび上がる。メンバーが登場し、京が現れると筒状のスクリーンが降り、『狂骨の鳴り』がフェードアウトしていく。

『DIABOLOS』が始まり、京のシルエットが赤いライトと共に浮かんだ。明らかに10/10の時よりも消化され、京の喉の調子もものすごく良い。『怖い夢の続き』を表すべく、ここが広い会場であることを忘れる程、会場を大きく揺らした。クリスマスに合わせてなのか、Dieだけでなく、京のマイクのコードも赤かった。

『DIABOLOS』の残響が消えると、始まったのはシンフォニックバージョンの『LOTUS』のSEだ。Dieの前の床とToshiyaと薫の前の床の2ヶ所に蓮の花が映されていた。『LOTUS』のPVでもお馴染みの着物を身に纏った女性が京を包むスクリーンで空を泳ぐ。突然、空を泳ぐ女性はスクリーンの左側、そして、右側へと移り、スクリーンから消えた。すると、ステージ側の会場の壁の1番左端から右端まで泳いで現れたのだ。その後、両サイドの壁には朱色の光が飛び交った。

そう、ここで知らされたのは、この会場を選んだ理由だ。

DIR EN GREYの醍醐味である視覚への刺激。これを新たなステージへと進めるべくこの会場は選ばれたのだ。
関係者席の殆どが2階席 1列目と統一されていたのも理解できる。

続いて、『流転の塔』が始まった。『流転の塔』からは京の声の高音の安定だけでなくグロウルの鋭さも感じることができる。また、この曲の今ツアーの映像は同時に2種類使われており、京の筒状のスクリーンと両サイドのスクリーンに1種類、バック・スクリーンに1種類だ。使われている映像はAGE QUOD AGISのものと同じで、主に、バック・スクリーンに景色が映し出され、もう片方には昆虫などの物体が映し出される。この映像駆使のクオリティも今までのライブの中では1番だ。

『流転の塔』が終わり、少し間をおいて、DeityのSEのフィルタがかかった部分から始まった。怪しげなメロディと共に会場を沸かせると、『AMON』のシンフォニック・バージョン、『滴る朦朧』『蜜と唾』へと続き、指定席という慣れない環境からか乗り切れていないファンもボルテージを上げていく。『滴る朦朧』では筒状のスクリーンに大きな目が映し出された。過去10回以上は『蜜と唾』をLIVEで聴いているが、『蜜と唾』は会場が大きければ大きい程、Toshiyaのベースの低音が会場を大きく揺らし、迫力があり、恐ろしさを感じる。

1度目のINWARD SCREAMでは、AGE QUOD AGISでもおなじみの和太鼓や笛の音が聞こえるもので、京の声と共に森の中を進む映像が使われ、最後には首を吊った京が映し出された。

首を吊った京がスクリーンから消えると、京を覆っていた筒状のスクリーンが上がり、『THE BLOSSOMING BEELZEBUB』が始まった。バック・スクリーンには今日の腕もしくはマイクに付けられたCCDカメラによって京の顔が映された。そこで、京は手で顔を覆ったり、前髪で顔を覆ったりとカメラに向かって恐ろしさを表現した。新たな試みである。

さらに、恐らく武道館のUROBOROS -with the proof in the name of living…-ぶりであろう凌辱の雨が披露された。

『凌辱の雨』が終わるとバック・スクリーンが上がり、LEDの電子パネルが表れた。久々の曲の披露に込み上げる気持ちが収まる間もなく、新曲である『輪郭』が始まった。曲にLEDパネルには『輪郭』のPVが流れた。フルのPVはPromotion Edit ver.とは順番が異なっていた。得る覚えであるが…

腐食した鳥→部屋に飾られたメンバーの絵画が変化→溶け出した物体が地を這い蠢く→腐食した鳥の目が動く→黒い葉が落ちる→腐食以前の鳥の体が元のものになって仰向けに倒れていて、小鳥が目を覚まし飛び立つ→階段を上がる→その先にメンバーの影

といった流れになっていた。結論としてその鳥は元の体になっていたのか、天国に逝ったのかは微妙なところだ。

2度目のINWARD SCREAMは、AGE QUOD AGISでお馴染みのもので、洞窟でバケツを叩いたような音で始まるもう片方の方だ。

INWARD SCREAMが終わると後ろの方で何かが動いた。『「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨』が始まると、スクリーンに映された影からDUM SPIRO SPEROの像の実物が表れたのが分かった。

『OBSCURE』では、スクリーン上に棘のような模様がスクリーン上に浮き上がり、『獣慾』では両サイドのスクリーンに心臓の様なものが映し出され、『獣慾』のリズムに脈を打った。

『DIFFERENT SENSE』が始まると『LOTUS』で床に映された蓮の花と同じ位置に蛸の足が映された。バック・スクリーンにはお馴染みの無数の眼。「誰もが…」の部分で、日の丸から次々と蛸の足が生え、広がっていくと、スクリーンを超え、ステージ側の会場の壁いっぱいに蛸の足が広がった。この迫力もやはりホールならではのものだ。

『冷血なりせば』が始まると、ステージ外の壁の両サイドには拝む僧侶の絵が、バック・スクリーンには金色の観音の顔が4つ。さらに、UROBOROS期に使われた映像がステージ外の壁とバック・スクリーンに映し出され、ステージ側の壁が濃い宗教色で染まった。曲が終わってもなお、京は全力で頭を振り続けていた。まるで、TOKYO DOME CITY HALLでのAGE QUOD AGIS -ratio ducat non fortuna-の時の様に。



アンコールに応えてメンバーが表れ、京がマイクを叩きつけると、会場が静まり、Dieのギターと共に『VANITAS』が始まる。Dieが弾いていたのは10/10にSHIBUYA AXでやった時はなかったと思われるスタンドに置かれた赤いアコースティック・ギターだった。もちろん、肩からは昔のモデルのDDTがかかっている。この曲では逆に10/10の時より低音がカットされていたように思えた。映像はAXの時と同じで、スクリーン上では雨が降り、輪郭のそれぞれのメンバーのアーティスト写真も映し出された。

『VANITAS』が終わり、会場湧くと薫がギターを鳴らし、会場を鎮めた。すると、ファンの間ではこの日のセットリストとして予想されていた『ain’t afraid to die』のピアノの旋律が鳴り響いた。だが、予想が当たったのは曲目だけで、そこで映し出されたものはファンの度肝を抜いた。

なだらかな丘の上で靡くたくさんの旗。

正座するチベット仏教徒。

タイのお寺など。

ここから、いきなりシーンは変わる。



逃げ惑う人々。

暴行を加える兵隊。

拘束。

虐殺。

勢いよく高く燃え上がる1人の人間。

そして、死んでゆく。

再び、なだらかな丘の景色や寺。

そして、1人ずつ明かりを持って涙するチベット仏教徒。



ちなみに、全ての映像が仏教で統一されているわけではないと思われる。

京の「届いているか」の一声に間髪入れず『羅刹国』が始まった。この大きなホールで大勢のヘッドバンキングはなかなかの迫力だった。メンバーも会場の端まで行き、会場を煽った。

京が前に来てマイクを持ち「お前ら1つになれるか」と煽り、『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』が始まり、お馴染みの大合唱でこのライブは幕を閉じた。やはり、この楽曲の一体感はすごい。

VANITASのオルゴールが流れると、京がマイクを持ち「今年は…心配かけました…また来年」とだけ言い。ステージを去った。最後のDieがステージから去ると同時にVANITASのオルゴールが止まり暗転し、スクリーンに何かが映し出された。

「怖い夢の続き」

「輪郭」

「『THE UNRAVELING』 RELEASE」

「TOUR2013 TABULA RASA」

新たな発表がDIR EN GREYのクリスマスプレゼントとなった。やはり、MINERVAから予測できるようにMINI ALBUMという形だった。ちなみに、「TABULA RASA」とはラテン語で「白紙状態」の意であり、「THE UNRAVELING」の「UNRAVEL」とは「(糸などが)ほどける」「(問題が)解ける」「崩壊し始める」など共通して「終着」を意味するが、それはプラスにもマイナスにもとれる。

会場には『FINAL』のピアノバージョンがBGMとして流れていた。

これも、DIR EN GREYのクリスマスプレゼントなのだろうか。




【セットリスト】

DIABOLOS
LOTUS –Symphonic ver.-
流転の塔

Deity
AMON -Symphonic ver.-
滴る朦朧
蜜と唾

INWARD SCREAM

THE BLOSSOMING BEELZEBUB
凌辱の雨
輪郭

INWARD SCREAM

「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
OBSCURE
獣慾
DIFFERENT SENSE
冷血なりせば

VANITAS
ain't afraid to die
羅刹国
激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
会場に入るとステージ正面から五つのライトが観客を照らし。少なくともスタンディングからはいつもよりステージの状況を把握しにくい。

準備が遅れているのかメンバーが焦らしているのか、感覚的にはいつもより10分程開演が遅れたように感じた。


照明が落ちるとともに狂骨の鳴りが流れ、この時を待ち望んだファンの歓声がSHIBUYA AXに鳴り響いた。

私達の視界を遮っていた正面の五つのライトが消えると、ステージ後方のスクリーンの両サイドに白の物体が置かれていたが、まだ何なのかはわからない。ピアノの旋律に合わせスクリーンには白い液体が飛び散り、低音が鳴り響き始めるとそこには赤く染まった障子があり、何か文字がかかれていたが、何と書いてあったのかはわからない。

暫くすると、丈の長い白のシャツに白のドレープのようなカーディガンを羽織りタイトな黒のズボンに自らの細い足を包んだShinya、黒のフード付きのロングカーディガン(おそらく輪郭の写真のもの)の中にストールを巻きタイトの黒のズボンを履いたDieがフードを被り黒のマントの様なものに身を包み黒のミドルのスカートと素足に黒のロングソックスにブーツを履き黒のメッシュのアイマスクをしたToshiya、白シャツに黒のロングのテーラードジャケットとラメの入った少し緩めの黒のズボンにお馴染みのharaKIRIのロザリオを付けた薫が順にステージに現れると、上から前回のツアーにも使われた筒がセ上から降りてきた。また暫くすると、素肌に黒のテーラードジャケットを羽織りショルダーベルト(?)を垂らした黒のカーゴパンツを履いた京が現れた。京の髪は黒で、2011のWACKENと殆ど同じだ。


狂骨の鳴りが終わり、オーディエンスの歓声だけが残る会場に鳴り響いたのは、THE BLOSSOMING BEELZEBUB。しかも、私の耳がおかしくなければ、シンフォニックバージョンのTHE BLOSSOMING BEELZEBUBだ。映像は基本的には同じだが、所々変化が見られた。それは他の曲も同じであることを先に伝えておこう。ちなみに、前回は筒の部分にのみ映像を写したが、今回は基本的に筒にもバックスクリーンにも映像を写していた。

流転の塔は京の喉の復活を証明した。今まで聴いた中で1番綺麗に出ていたのではないかと、AQAに13公演行った筆者は感じた。ブランクを感じさせない程、一体感とともにOBSCURE、滴る朦朧、蜜と唾をこなしていくメンバー達。そして、それに続き一体感を作り上げていくオーディエンス。

そして、INWARD SCREAMかと思いきや、流れたのはDIABOROSのSE。「怖い夢の続き…」と歌いだす京の歌声に、この時を私達は待ち望んだのだと、様々な感情が湧き上がってくる。やはり、初めてということもあり、消化はしきれてはいないものの、曲の表現する怖ろしさは痛い程伝わってくる。

INWARD SCREAMの後、始まったのは
「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨 。曲が始まると京を覆っていた筒が上がり、京の頭上から一本の緑のレーザーライトが降り、直様回転しながら五本に分裂し広がり、レーザーライトが止まるとその光はメンバーを照らした。さらに、謎に包まれていた両側の白い物体にはDUM SPIRO SPEROの象徴である像が照らされた。その白い物体の形は像の輪郭だったのだ。

DIFFERENT SENSEが始まると正面を向いていた像は横を向き、スクリーン真ん中には一部変更されたDIFFERENT SENSEの映像が流される。

この二曲で映し出された新たな若しくは真のDUM SPIRO SPEROの世界にオーディエンスの歓声はさらに大きくなる。

その後、獣慾 、INWARD SCREAMを挟んでaudience KILLER LOOP 、BUGABOO 、HYDRA -666- 、GRIEF 、冷血なりせばと オーディエンスを煽りながら会場の熱気をあげていく。そこには、明らかに元の喉を取り戻した京の姿。その荒い使い方は活動休止前と何も変わらない。決して手を抜いたものではない。

また、二回目のINWARD SCREAMではライトによって京のシルエットが写しだされたのだが、その絞り込まれた身体のラインは、休止中にこの日を思いながら過ごしたであろう彼を表しているようだった。

ネット上で話題になったアンコールは結局「アンコール」でまとめられていた。

メンバーが現れると、流れ始めたのはVANITAS。この曲を待ち望んだオーディエンスは、高ぶる気持ちを押し殺し、一言も発さず、その曲を聴き通した。ギターはアコギを使っていなかった。スクリーン上では雨が降り、輪郭のそれぞれのメンバーのアーティスト写真も映し出された。この曲は、CDはわからない程に低音が効いていて、その低音はVANITASの旋律に加え、悲しさや切なさといった感情が強く感じられる。やはり、DIR EN GREYはLIVEに行かないと全てを知ることはできないのだと改めて感じた。

VANITASが終わると、Shinyaのハイハットから曲が始まった。話題になっている霧と繭かと思いきや、聴いた感じは秒「」深のように感じられるのだが、どうものっていて合わない。暫くして気づいたのだが、MISSAの秒「」深をベースにした新しいものだったのだ!それが、単に今風なのかリメイクなのかはわからない。

羅刹国が始まるが、京は「ラスト」と言わない。この瞬間に「なるほど。最後はあの曲か。」と、皆が予想ついただろう。

羅刹国が終わると京がマイクをとり「お久しぶりです。…まぁ、特に言うことないけど…」と軽く喋り、会場からは笑いが上がった。

会場を煽り、始まった最後の曲は、予想通り、「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」。サビでの合唱は、この時を待ち望んだオーディエンスとメンバーの思いが音を通してひとつになった。

曲が終わり、お立ち台に立つ京は、滅多に見せない程の満面の笑顔。それは、彼の歯並びが悪かったことを思い出す程の笑顔。少なくとも私は初めて見た。

メンバーが去ると会場からは自然と「DIR EN GREY」コール。抑えきれないオーディエンスの喜びが表れた瞬間だった。さらに、ネットで話題になったアンコール問題だが、最終的にこのような形で丸く収まったことにも私は喜びを覚えた。

完全復活を遂げたDIR EN
GREYだが、これはあくまでも始まりだということを忘れてはならない。私達に与えられた、輪郭と霧と繭という二曲は私達の前には現れていないし、今回、MISSAベースの秒「」深が披露されたことで、自然に他のMISSAなどの昔の曲も今後披露される可能性が浮上するし、今後の彼らの活動に目が離せないということは、活動している彼らがいてこその私達ファンの喜びである。




【セットリスト】
狂骨の鳴り
THE BLOSSOMING BEELZEBUB
流転の塔
OBSCURE
滴る朦朧
蜜と唾
DIABOLOS

INWARD SCREAM

「欲巣にDREAMBOX」あるいは成熟の理念と冷たい雨
DIFFERENT SENSE
獣慾

INWARD SCREAM

audience KILLER LOOP
BUGABOO
HYDRA -666-
GRIEF
冷血なりせば

ENCORE

VANITAS
秒「」深
羅刹国
激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇