晴れた夜空を見上げると
無数の星々をちりばめた真暗な天球が
あなたを中心に広々とドームのようにひろがっている。
ドームのような天球の半径は無限に大きく
あなたに見えるどの星までの距離よりも天球の半径は大きい。
地球の中心から延びる一本の直線が
地表の一点に立って空を見上げるあなたの足の裏から頭へ突きぬけて
どこまでもどこまでも延びて行き
無限のかなたで天球を貫く一点、天の頂き、天頂。
地球を南極から北極へ突き通る地軸の延長線がどこまでもどこまでも延びて行き
無限のかなたで天球を貫く一点、天の北極。
遠く地平の北から
大空へ昇って遙かに天の北極をかすめ
遙かに天頂をよぎって
遠く地平の南へ降る無限の一線を
仰いで大宇宙の虚空に描きたまえ。
大空に跨って眼には見えぬその天の子午線が
虚空に描く大円を
三八万四四○○キロのかなた
角速度毎時一四度三○分で月がいま通過するとき
月の引力は、あなたの足の裏がいま踏む地表に最も強く作用する。
そのとき
その足の裏の踏む地表がもし海面であれば
あたりの水はその地点へ向かって引き寄せられやがて
盛り上がり、やがてみなぎりわたって
満々とひろがりひろがる満ち潮の海面に
あなたはすっくと立っている。