「今年のバレンタインデーに、マーブルのパウンドケーキを作りたいんよー」

突然娘が言い出した。

不登校で、みんなとイベントを過ごすことにはこれまで縁がなかった。

去年のバレンタインデーも、兄と父にチョコレートを買って渡しただけだった。

それが、突然、バレンタインを手作りしたいと言い出した。

年末に過食の調節入院をして依頼、今年に入っては登校日の連休は減り、1月の出席時数の割合は、初めて70パーセントを超えた。

12月は0パーセントだったので、冬休みもあったとはいえ、かなりのオーバーペースなのでは…と気になっていた。

過食の発作も規模は小さくなったが、ほぼ毎日あった。

数もクラス40人分という。

あまりの数に、市販のチョコを小分けにラッピングしてもいいのでは?と提案するものの、頑なに手作りしたいと言い張る。

前の学校では、休んでいても手作りされたバレンタインのチョコやお菓子をまとめて友達が持って来たりしてくれていたので、もしや、「バレンタインは手作りでないといけない」と思い込んでいるのではないか…そう思って、理由を聞いてみた。


恥ずかしそうに、理由を語った。


「三年生を送る会で、食事係に立候補したんよ。
パウンドケーキ150個作らんといけんけー、その練習したいんよ。手作りしたことないし。クラスで、もらえん子いたら嫌な気持ちになるけん、多めに作りたいんよ。」



びっくりびっくりびっくりびっくりびっくり


びっくりした‼️

いや。そんな上品なことばでは足りない。

たまげた、鼻血が抜けそうになった。

冬季五輪で、金メダルが100個取れたぐらいの驚きだった。



つい、1か月前までは、

「転校なんかするんじゃなかった」
「みんな、友達の我ができていて入れん」
「ずっと1人でいるのが苦しい」
「居場所なんてどこにもない」

そして最後は

「前の学校に戻りたい」と号泣。

過食発作も落ち着くどころか、どんどん悪化し、入院。

ずっとずっと、現実を受け入れることができなかった娘が、初めて今の学校で、自ら手を挙げて係を引き受けたらしい。



結局6時間かかって、5本のパウンドケーキを焼き上げた。





「すごいねー‼️すごいじゃん‼️」

思わず17歳の子の頭を、クシャクシャポンポンしていた。

顔をしかめながら私の手を避ける娘の表情は、、5年前、希望の学校に合格した時に見せた表情だ。

小学生だった娘のは、今、高校生になり、少し大人びた顔に同じ表情を見せていた。



すごくすごく頑張ったんだね。


そして


ちょっぴり自分に自信を持てること…思い出したんだね。




しばらくして、小さな声で



「明日、もし学校行けなかったら、お菓子全部仕事に持って行ってね。」



とも付け加えた。



学校に行けなかった時には、過食するかもしれない…

それが分かっていても、

その恐怖と闘いながらも

前に進もうとしている姿に胸が熱くなった。




病気はいつ治るかわからない。

明日治るかもしれないし、もしかしたらもう少し時間がかかるかもしれない。

それは誰にもわからないけれど

過食をした日は、自己嫌悪と、倦怠感で学校に行けなくて、ずっとその場で立ち止まり、完璧主義の娘は、やはり病気も完治ばかりを望んでいた。

しかし

今。

その病気としばらくは共存していく道を見つけたらしい。