　この本の第1章「I shall be Emperor」には、私が初めて知った戦後史がありました。

　ヨーロッパの敗戦国の王室はすべて廃止され、日本にだけ王室が残されたこと。　昭和天皇の誕生日4月29日は、東京裁判において戦犯が起訴された日であること。明仁天皇の15才の誕生日12月23日は、Ａ級戦犯の処刑された日であること。

　この本にも書いてありますが、明仁天皇はご自分の誕生日はつらい日であったことでしょう。しかし強靭な意思があったからこそ、次期王位継承者として覚悟や葛藤が、「平和日本」を軸にした象徴天皇としてのありかたを一貫して指し示してきたのだと思います。そして美智子皇后との結婚を機に、皇室の改革をも推し進めたことは、希望に繋がるパイオニア（開拓者）でもあったと思います。

『戦争をしない国　明仁天皇メッセージ』から、天皇陛下のお言葉　

”いまは日本のどん底です。（略）これからは苦しいこと、つらいことがどのくらいあるかわかりません。どんなに苦しくてなっても、このどん底から這い上がらなければなりません。それも皆、私の双肩にかかっているのです”11才1945年8月15日の作文において

　「I shall be Emperor」

15才の春1949年4月学習院高等科の最初の英語の授業で「将来何になりたいかをかきなさい」という課題に対して書いた答え

”普通の日本人だった経験がないので、何になりたいと考えたことは一度もありません。皇室以外の道を選べると思ったことはありません”「I shall be Emperor」その言葉の真意を40年近くたったのち説明されています。（1987年9月/即位の1年4ヵ月前、アメリカの報道機関からの質問に対する文書での回答/英文）

”ぼくは天皇職業制をなんとか実現したい。（略）毎日朝10時から夕方6時までは天皇としての事務をとる。そのあとは家庭人としての幸福をつかむんだ”

”ぼくは皇居内に住みたくない。皇居はなるべく早く解放して、大衆向きの公園に使ってほしい。天皇になっても、僕は街の中に住む”25歳で美智子妃と結婚する直前の友人の証言

”私は、いまも終戦後のある日、ラジオを通し、A級戦犯に対する判決の言い渡しを聞いた時の強い恐怖を忘れることが出来ません。まだ中学生で、戦争から敗戦に至る事情や経緯につき、知ることは少なく、したがってその時の感情は、戦犯個人個人への憎しみなどであろうはずはなく、おそらくは国と国民という、個人を越えたところのものに責任を負う立場があるということに対する、身の震うような怖れであったのだと思います”80才の誕生日に皇后陛下のお言葉/平成26年〔2014年〕10月20日

　Ⅴ戦争をしない国から

”80年の道のりを振り返って、やはり最も印象に残っているのは先の戦争のことです。

　この戦争にによる日本人の犠牲者は約310万人と言われています。前途に様々な夢を持って生きていた多くの人々が、若くして命を失ったことを思うと、本当に痛ましい限りです。

　戦後、連合国軍の占領下にあった日本は、平和と民主主義を、守るべき大切なものとして、日本国憲法を作り、様々な改革を行って、今日の日本を築きあげました。”－平成25年〔2013年〕8月15日/80歳の誕生日会見

「戦争をしない国 明仁天皇メッセージ」②

「戦争をしない国　明仁天皇メッセージ」②