2004年 エロール・モリス監督 アカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作
ロバート・マクナマラ(1916~2009)の主に米国防長官時代(1960~1966)のことを本人のコメント中心にまとめたドキュメンタリー映画である。
教訓として本人の口から下記11箇条が語られる。
1.敵の身になって考えよ
2.理性には頼れない
3.自己を超えた何かのために
4.効率を最大限に高めよ
5.戦争にも目的と手段の釣り合いがある
6.データを集めよ
7.目に見えた事実が正しいとは限らない
8.理由づけを再検証せよ
9.人は善をなさんとして悪をなす
10.”決して”とは決して言うな
11.人間の本質は変えられない
しかしこれらは、各章の表題のようなものと考えた方が良い。
マクナマラという人は、エリートの出ではなく自分の能力を武器に立身出世した人である。統計学の権威でハーバード大学の教授から実業会に転身し、フォードの社長に上りつめる。現在なら 金融工学の天才がウォール街で成功を収めるようなものだ。理系の天才が実業の世界で活躍する先駆者のような人である。
ただ 映画では題名にもある通り「戦争」に焦点をあてる。第2次大戦中米空軍のスタッフとして対日戦争に関わる時期と ケネディ&ジョンソン大統領の下で国防長官を務めた時のことだ。偶然2つの時期に 部下・上司として関わった典型的な猛将タイプの軍人であるカーティス・ルメイと対比して語られるのも興味深い。
ものすごく頭の良い人が、出世して大きな舞台で活躍する。その時の成功よりは失敗を正直に語っているのがおもしろい。特に国防長官には、軍の近代化(つまり経費削減)の為に任命されたことと思うが、本人もアメリカにも思いもよらないベトナムという小国との戦争が泥沼化してしまい、苦悩し傷つくことになる。「今週のベトナムでの死傷者数は・・・」と伝えるニュースが出てくるが、現在のコロナ感染者数のニュースを思い出させる。こんなのを連日ニュースでやられると世論は沸騰するので政治家はやりにくかっただろうと思う。
統計学者らしく、人的損害・物的損害&経費と相手の損害を合理的に算出して戦おうと(運営しようと)するが、ベトナム人の損害を顧みない祖国防衛の「意思」と自国民のうつろいやすい厭戦「感情」に翻弄されたあげく精も根も尽き果てやがて解任される。非常ににがい内容のドキュメンタリー映画だった。
結論として 戦争は複雑で 一旦始まってしまえば人間の手で制御できるものではない、今まで核戦争が起きていないのは運が良かっただけで、いつ起きてもおかしくない といったところか。見る価値のある映画だと思う。