労働の定義1
私は家のお金を抜く子供だった。罪悪感は微塵もなく当然のことだと思っていた。当時の私は母の実家に引っ越したばかり。両親の離婚後、母と二人で暮らしていた。と、いっても父と兄はすぐ近所に住んでいたため日常的に自分が住んでいた家に遊びに行っていた。両親が離婚したのは私が小学校に上がる前。母の実家に引っ越すことになったのは4年生の終わりごろだったと思う。私が嫌いな祖母が他界したことをきっかけにして。私は祖母も祖父も嫌いだったのに。まず最悪だったのは小学校のだっさい制服。ブレザーと吊りスカート。両方ねずみ色。実家は海の目の前で潮の香りがきつかった。祖父は昔の人の割りに背が高くて声も態度も大きかった。無駄に厳しくて気に入らないことがあると怒鳴り散らして私を殴った。その祖父に学校が終わって家に帰ると家の全ての部屋の掃除をするようにと強要された。さぼったことがバレたら?そんなことは言わずも がなだ。住み慣れた環境から遠く離され。友人や父や兄に会うこともできなくなり。毎日、毎日掃除をしろと言われて、気に入らなければぶん殴られる。風呂に入っていてもお構いなしにドアを開けて怒鳴りつけてくる。そんな暮らしだ。金ぐらい抜いて何が悪い?私からたくさんのものを奪ったのだから。恐怖で私を支配しているのだから。コレくらいもらって当然だろう。真面目にそう思っていた。他の札が入ってなかったので毎回一万円札を一枚だけ。そしてこの経験が私の労働の定義となった。