ユズが自分で考えた対策は
父のスマホを
自分の視界から消すことでした
そうすることにより
スマホに向けられる
自分の意識と行動を
コントロールしようと
ユズなりに考えた苦肉の策です
私から叱られた後
ユズが物置で何やらゴソゴソ
探していました
見つけてきた物は
透明のフィルムの袋に
包まれた
いかにも大事に
取っておいたふうの
セカンドバッグでした。
バッグに刻まれたブランド名は
ピエールカルダン
そのバッグに
父のスマホを入れて欲しいと
ユズから要求がありました
ここに至るまで
我が家は何度も
引っ越しをしましたが
そのバッグだけは
処分せずに持っていたようです
その割には
バッグの存在を
気にも留めていませんでした
結婚時に
夫が持ってきた物なのか
私が持ってきた物なのか
全く記憶にありません
ユズのおかげで
そのセカンドバッグは
日の目を見ることとなりました
バックの中には
膨らみを保つために
新聞が丸めて入っていました。
広げてみると
新聞の日付は
1994年9月でした
今からちょうど30年前の
毎日新聞でした。
まだ私がかろうじて
20代の頃です
新聞のスポーツ欄の記事には
「星野仙一氏来季は中日の監督か」
という記事が書かれてありました
そのセカンドバッグの中には
30年前の
空気と匂いが残っているような
気がしました
そして今
そのセカンドバッグは
夫が在宅時の
スマホの保管場所という
役目を与えられています