「パラサイト・シングル」という言葉は侮蔑的であり、彼らの真の優先事項を とらえたものではない。

こんにちの日本の若いシングルの人々は、これまでとは異なる好みをもち、自分にとっての優先事項を配列しなおしたのだ。彼らは恋愛関係を始めるより前に、友人と時間を過ごしたり、キャリア上の目標を追い求めたり、ファッションの好みを追求したりしたいと 考えている。

調査によれば、このような選択は単に経済的な配慮からのみ、おこなわれているわけで はない。価値観の変化によるものでもある。実際、独身の18~24歳の日本人のうち、男性 の約30%、女性の85%は異性との交際を望んでいない。

その一方で、伝統的な価値観や家族を重視する価値観は、ほとんど大量消費主義にとっ て代わられている。

このように、こんにちの日本は、価値観のシフトのひとつの典型的な例となっている。 伝統や宗教から離れ、市場を志向し、キャリアを重視した、大量消費主義の文化になって いるのだ。

日本は極端な例だとしても、世界中で、資本主義や大量消費主義のトレンドがシングル の増加を助けている。ここには複数の要因が働いている。

第一に、大量消費主義が優勢になると、自分の属する社会、文化、家族に対して果たさ なければならない責任が少なく、自由市場で売り買いをする人々がもてはやされる。

その一方で、大量消費主義は、他者の利益よりもむしろ、自分の利益を追い求める者を 解放する。だから、彼らは伝統的な価値観を避けるようになる。個人主義と自己実現の考えが広まると、人々は、結婚が本当に自分の役に立つだろうかと考え直すようになるのだ。 こうして、キャリアは以前より重視されるようになり、自己実現や女性の独立に関連づけ て考えられるようになる。

結婚している人たちのほうが財政的には優位に立っていることを示す調査結果も出てい るのだが、家庭を築くことによる再生的なインセンティブよりも、個人主義的な好みをも つ独立した消費者でいることを選ぶことのほうが重視されるようになっている。

第二に、資本主義は人々に多様なライフスタイルの価値を認識し、比較することを奨励 する。ひとり暮らしを可能にする収入の上昇とともに、プライバシーは望むべき利益と考 えられるようになる。そういう意味で、資本主義は同時に二つの状況を生み出す。

ひとつ目の状況は、伝統的な価値観がもっと合理的な思考法にとって代わられ、人々は 自分の好みを優先し、それに価値を見出すようになるというものだ。そして、もうひ は、資本主義のシステムによって富が増大し、人々は自分の価値観に沿った生き方ができ るようになるので、しばしば結婚より独立、家庭生活よりプライバシーを選ぶようになる という状態だ。

第三に、労働分業と労働市場の変化によって、新しい柔軟性と機会が生まれる。人々は 家族の職業の外で働き始め、仕事は緊密な家族の輪から分離される。さらに、家族のビジ ネスを継続するために子どもをもつ必要も、親を扶養する必要も、以前ほどではなくなる。

そればかりか、こんにちのグローバル化された世界では、機動性と地理的な柔軟性を必 要とする職業もある。そういうわけで、多くの若いプロフェッショナルたちにとって、結婚はキャリアの発展の障害となってしまう。

まあ、早い話が、利口な若者もバカな若者ももう結婚はしないっちゅうこっちゃ🖐️