ある企業に訪問したときのこと。

求人ニーズ、特にエンジニアの採用についてお伺いしたわけですが、

そのときに印象に残ったお言葉は、

「入社して1年経過したら全員マネージャーになってほしい」

というものでした。


全員、マネージャーになってしまうのか、

と一瞬考え込んでしまいそうになりましたが、

よく考えてみると、別に大量採用して、全員が

部下を持つというわけはないわけで。


これは、(システム)エンジニア(を目指す人)が

働く場所を選ぶ上での本質的なハナシでした。


システムを作って供給する側と、

ある事業をおこなうためにシステムを導入する側。

それぞれ、エンジニアを採用する必要があるわけですが、

根本的に、その目的、というか仕事の中身が違うわけですね。


事業会社は、システムを作ることが目的ではありません。

事業そのものが目的であり、システムはあくまでそのための手段。

システムは、仮に自社で作ることができないとしても、

外注して作ればいいわけです。

でも、外注するにしても、分かる人が社内にいなければ、

的確な外注ができません。

そこで、エンジニアを採用するわけですね。


すなわち、事業会社におけるエンジニアの要件は、

システムがある程度分かると同時に、

的確な外注、すなわちディレクション、あるいはマネージメントが

できることなわけですね。


一方で、いわゆるSI企業。システムを作って供給すること

そのものを事業としている企業において、そのエンジニアはつまり、

プレーヤーです。つくれなければいけないわけです。

社内では当然マネージメントが必要ですが、

つくることが目的となっている以上、求められる人材の大半は、

実際に作ることができる人材、というわけです。


ITの世界は、さらに複雑で、

システム会社であっても、受注するのがほとんどで、

実際のシステムづくりは子会社や下請けに投げる(しかも超丸投げ)

ケースも多々あります。有名な会社の場合、実はそういう

ケースのほうが多かったりもします。


また、システムそのものをサービスとして提供している会社でなくても、

自社内でそのシステムをつくりこんでしまう会社もあります。

独自の技術に基づいてサービスを提供している会社というのは、

外注しようにもそれを作れる会社というのが自社以外にないわけですから。


なので、一概には言えないかもしれません。

でも、少なくとも、

「マネジメント」志向なのか

「専門家」志向なのか、

その立ち位置、あるいは方向性は、自分なりに持っておくことを

エンジニア(志望者)の皆さんには強くオススメするわけです。


と、いう話は、何もエンジニアに限った話ではない、と

書きながら思いました。


一つのスキルを極める専門家志向か、

複数の専門家を動かすマネジメント志向か、

そのどちらを志向するのか、キャリアを考える上では

自分なりの方向性を考えておいたほうがいいですね。


従来、特に日本の大企業では、

専門職と管理職の垣根があまりはっきりしていませんでした。

専門職、という呼び名が的確ではなかったかもしれませんが、

全員、非管理職としてスタートして、「管理職」に出世する、というのが

典型的キャリアだったからです。そしてその「非管理職」のなかに

「専門職」が含まれがちでした。

つまり、どうしても、「専門職」が「管理職」の下に位置するような

構図が成り立ってしまっていたわけです。


時代は変わりました。


アメリカでは、本当に強いスキルを持った「専門職」が、

日本で言う「上司」にあたる、「管理職」の倍以上の

給料を稼ぐケースもあります。

いずれ、日本もそういう状況が当たり前になって来るでしょう。


ちなみに、私が生命保険会社で営業課長をしていたころ、

対外的には「部下」にあたる営業職員の中に、私よりも

高い給料を取る人が何人かいました。

ある意味、それは私にとって誇りでもあったわけです。


営業のように、歩合で高い給料をとりやすい職種以外であっても、

特定の、強いスキルというのは、管理職よりも高い給料を

払って然るべき、というケースは確かに存在します。


また、思うに、「マネージメント」というのも、一つの専門職

といえるような気がします。

特に、生命保険会社時代の私のように、自分より年齢も

経験も上の人たちをマネージメントして、チームとして結果を出す、

というのは、明確な一つの「スキル」だと思うわけです。

方法はいろいろありました。私は優秀な営業職員の採用に

特化する、という古典的(でもみんなあまり積極的にやらない)

方法で結果を出しました。

優秀な専門家集団に仕事をさせる。

それがどのような専門家であっても、意外と共通するスキルが

存在するのではないか、と思ったものです。


まあ、とにかく、「管理職」「専門職」優劣はありません。

現状の日本では、まだまだ「総合職」優位なのが否めないのが残念ですが。


あなたは、どちらですか?