その日私はバイトがあるのに寝坊して、ろくに身支度もせずに駅に向かって走っていた。
東京都道311号環状八号線、通称「環八」。
長く続く一本道を、道ゆくランナーや家族連れとすれ違いながら走った。
ちまちま時計を確認しては、やはりタクシーを呼ぼうかなどと考え、いやでもお金がと、頭の中でたくさんの私が議論を交わしていた。
昨日は誕生日だった。
たくさんの方が、お祝いの言葉をくれた。
ひとりひとりに感謝を返しながら、駅前で買ったケーキを食べた。
22歳。
不思議な響きである。
自分の歳に疑問を抱き始めたのはいつからだろう?
なんとなく子どもの頃は、22歳はクールな強キャラ、というイメージだった。
少年だった頃の私は、たくさんの漫画を読んだ。
主に少年漫画。
たまに例外もあるが、少年漫画の主人公はだいたい若い。そりゃそうである。
熱いバトルを繰り広げるおっさんたちが「仲間の力で!」とか言ってたらなんか嫌だ。
その中で22歳というのは、「主人公よりも大人で、でも若い」という立ち位置だ。
主人公の覚醒を高い崖の上から眺めて、「フン…」みたいな。
くぅ〜痺れる!
主人公の熱さに感化され、中ボスとかに負けそうな時に、「俺だけ負けるわけにはいかねえだろ」みたいな。
くぅ〜!くぅ〜〜!!
さらっと凄いことしといて、たいして喜びもせず「まぁ、こんなもんっしょ」みたいな。く、、く、くぅぅ〜〜〜!!!
私の22歳の朝はこのザマである。
こんなこと書いてる暇があるなら急げと怒られるかもしれないが許してほしい。何しろ電車の中なのだ。
はぁ、はぁ…暑い。
やっと渋谷での乗り換えも終わり目的の中目黒駅に着く。
店長は怒るだろうか…まぁ怒るわな。
なんて返そう、22歳。
「まぁ、こんなもんっしょ」
いかんいかん、殺されてしまう。くぅぅ。