沢口杏美は本日も友人の由記ひなこの家に遊びに来ていた。

 

「きゃあー!!モフモフーーーっ!!」

杏美はひなこの家で飼われているメスのキジトラ猫を可愛がっていた。

「モフモフではない、マロン様だよ。」ひなこは半笑いの顔でそう答える。

「マロン様モフモフすぎてつらいいいいいっ!!」

「マロンはおデブ様だから触りごたえあるだろう。」

「もうずっとモフモフしてたいいいいっ!!」杏美はジタバタと

床を転げまわりながらデブ猫のマロンを可愛がる。

猫好き。生粋の猫好き2人。

基本的に似ていてとても気が合う昔からの付き合いの友達同士。

 

「そうそう、今日はオムレツだからね。夕ご飯。」

いつも通り、杏美は遊びに来るとひなこの料理を必ず食べる。

そしてテレビを見ながら談笑する。

 

「オムレツだけだと足りないから私が今日買ってきた

デパ地下のお惣菜も食べようよ。そのために買ってきたんだし。」

マロンの顔を左右に軽く引っ張りながら杏美はそう言う。

 

キラーンと目を輝かせるひなこ。

「おおぅ。デパ地下デパ地下!!貧相な今日の食事には

嬉しいね。食卓が豪華になるし腹も満たされるねぇ。」

口元の左側から少しよだれが垂れそうになっていた。

 

「そんなに貧相なの???オムレツでしょ?」

なんとなく不思議に思って聞き返してしまう杏美。

 

ぎくりと体を固まらせ、聞かなかった顔でオムレツを作り始める。

フライパンに油をひく。そして具を炒めていた。

気になったのか台所まで様子を見に来た杏美はぎょっとする。

「え、なにこれ。ピーマンと人参のみじん切り・・・???」

更にぎくりとするが気にせず調理をするひなこ。

「え、まさか・・・。具はこれだけなの?!」

語尾が大きくなる杏美はムンクの叫びの様な顔になった。

「ちょっと待って!ピーマンと人参オンリーのオムレツなの?!

あんた正気か!!!??」

「ええい、うるさい!嫌なら食うべからず!!」

ひなこは眉間にしわを寄せながら誤魔化すように口笛を吹いた。

「うわあ、ないわー。」杏美はデブ猫のマロンの方に帰っていった。

 

それでも問題のピーマンと人参オンリーのオムレツは綺麗に出来て、

食卓に並ぶ。きちんと二皿。

「これはね。醤油かけて食べるのがうまいんだよ。」

少し誇らしげに微笑みながらそう言うひなこ。

「醤油ううう?!」普通はオムレツはケチャップだろうと言わんばかりの

顔をする杏美。

「足りなければ湯豆腐も作るがなにか?」不機嫌気味にひなこは

そう言い足した。

「いや、湯豆腐は今度でいいよ。お惣菜があるじゃん。

私が買ってきたやつ。」

「そうそう!!君の買ってきてくれたナポリタンとハンバーグのセットね。

豪勢だこと!!!ほんとうまそう!!!食べるべ!!!」

不機嫌がご機嫌に変わり、目をきらきら輝かせながら食事の用意をする。

 

「あ、意外とイケる。このオムレツ。」

一口食べてみて杏美はその不思議な美味しさにハマりそうになった。

「でしょ!!だから言ったじゃないかい!!うまいんだよ、私の料理は!!」

えへん!と鼻高々になるひなこはすかさずデミグラスソースたっぷりの

ハンバーグも嬉しそうに頬張った。

 

デブ猫のマロンは床で気持ちよさそうに眠っていた。

 

「そうそう。今日は満月だろう?」

「うん?そうだけど何???」

「満月の日は月に向かって財布とスマホをフリフリするといいんだぜ?」

得意げにそう言うひなこ。

「あ、占い系の話?」

「そう。」

「後で空を見よう。2人で。まずご飯食べてから。」

スパゲティーをちゅるりと口に入れる杏美。

「金運が良くなるんだぜぃ。知らんけど。」

「知らんのかいwwww」

 

食後2人はベランダに出て月を探す。

「今日は月が見えにくいな・・・。」

ひなこは少し落胆した。

「もうちょい待ってみようよ。」

杏美は中に入ることをひなこに促した。

 

床の上には杏美の買ってきたファッション雑誌が散らばっていた。

こんな感じで2人のだべりや遊びはしょっちゅう続くのである。

 

続。(多分続くw)