ついに全員からの結婚の承諾が貰えた二人は早速婚約式の準備に取り掛かった。最も、アーチーは学生なので専らアニーが招待状などの準備をしたが、アーチーも週末は毎週のようにシカゴに戻り、婚約式までの蜜月をしっかりと堪能した。
婚約式の招待状を送ってからはキャンディや、パティ、ポニー先生や、レイン先生、アーチーの悪友などから、二人に沢山の祝福の手紙が送られてきた。
キャンディからの手紙には『私の手紙も役にたったでしょう。』と自信ありげに書かれていたので、アーチーは思わず声を出して笑ってしまった。
『まぁ、キャンディスからの手紙はこの決定に大した影響を置きませんでしたがね』という、エルロイの言葉は黙っておこうとアーチーは心に決めた。思えばアニーとの交際はキャンディから始まったが、その事に今となってはとても感謝していたからだ。
アニーの婚約式でのドレスはアーチーが長い時間をかけて見立てた。それは、柔らかい生地ででできた薄水色のドレスで、所々に細やかに金色の刺繍が施されており、アニーの華奢な体格をひきたたせるデザインが、アーチーはとても気に入った。
一方のアーチーは、アニーと合わせるように、白とウォーターグリーンをアクセントとしたタキシードに爽やかなブルーのタイを選び、納得のいくスタイルが完成した。
アーチーはアニーとの婚約式は、サプライズで水の門から登場しようと決めていた。
水辺から自分たちが現れることで、ガーデンパーティを涼やかにすることができるだろうと思ったのだ。また、最愛の兄、ステアにより近い場所で、婚約式を見せたいという思いもあった。
アニーに相談すると優しく微笑んで素敵な考えだと賛成してくれた。
そこからつつがなく準備は行われ、ついに婚約式も前日に迫っていた。アーチーは、自分の婚約者の手際の良さと、客人を労る工夫が所々に施された、思慮深さに感激していた。
アニーはこれから、きっとエルロイの良い補佐役になるだろうと、アーチーは予想した。
一方、婚約式前日を迎えたアニーは身体中が震えるような気持ちだった。
アニーは、特別な日を最愛の友であるキャンディとパティと一緒に過ごしたいと願った。キャンディもパティもその誘いを断るはずがなく、その日はブライトン邸に二人が泊まりに来ていた。
久々に会った親友3人の話が止まらず、その内容はアーチーやアルバートさんのバカな話、日常生活のちょっとした悩み、最近の流行、その他多岐に渡った。
「ねぇ、アニー。今日は本当に私たちで良かったのかしら?最後の、恋人の日よ?ご両親や、アーチーと一緒に過ごした方が良かったんじゃないの?」
女たちがひとしきり花を咲かせた後、パティが少し控えめに尋ねた。
「ええ。私が二人と過ごしたかったんだもの。パパたちとは結婚式の前日にゆっくりとお話するつもりよ。私が家を出ていく日まではいつも通りに過ごしていたいの。それに、アーチーは今日は男にも色々考えたいことがあるだろうってパパが言っていたわ。でも、私一人でいると緊張で仕方がなくて、どうしても二人に来て欲しかったの。わがまま言ってしまったわね。」
アニーが、舌をペロッと出して答える。そんな様子が可愛らしくて二人は思い切りアニーを抱きしめた。
「あぁ、もうアーチーったら妬けるわ。こんな可愛いアニーを奥さんにしちゃうんですもの。」
「本当に。こっちまで恥ずかしくなっちゃうわ。」二人は思い切りアニーを茶化した。
そんなふたりに笑いかけながらアニーは言った。
「私、すごく幸せよ。本当に。でも、本当はね、怖くて怖くて仕方がないの。」
二人は驚いてアニーに何が怖いのかと尋ねた。
アニーは少し黙ったが、こう続けた。
「こんなに幸せでいいのか。私でしっかりアーチーを支えていけるのか、恐ろしくて不安でたまらないの。」
キャンディとパティはアニーの気持ちがとてもよく理解できた。アーチーはこれから、アルバートさんの補佐として大切なアードレー家の一員となっていくだろう。その妻となるプレッシャーは想像に易い。キャンディは、心を込めて妹のような幼なじみを抱きしめた。
「大丈夫、大丈夫よ、アニー。アニーはきっと良い奥さんになれるわ。アーチーの自慢の奥さんにアニーはそのままで、なれるはずよ。」
パティもそれに続いて、アニーを抱きしめながら言った。
「そうよ、アニー。キャンディの言う通りだわ。それにアーチーがそばにいるんですもの。何も心配することないわ。あなたはとても綺麗で優しい女性よ。私たちもいつもすぐそばにいるわ。」
二人の言葉にようやくアニーの心の震えは収まり、笑顔を見せた。素晴らしい友人が2人もいてくれることに、アニーは心から感謝した。
「早く寝なきゃ。明日は大切な日だもの。アニーにクマなんて作ったらアーチーに叱られちゃうわ。」
3人はキャンディのその言葉に笑って、幼い子がするように、抱きしめ合ってひとつのベットで眠りについた。
翌日の婚約式はとても晴れた素晴らしいお日和のもと行われた。
アニーと、アーチーは美しいドレスとタキシードを身にまとい、水の門から登場した。客人は驚いたが、涼やかで爽やかな愛し合っている2人の様子は見る人をとても幸せな気持ちにさせた。
大好きな人達に祝福され、最高に幸せを感じていた2人にそのとき、今まで体験したことのないような心地よく、特別優しい風が通り過ぎた。
二人は目を合わせ、驚きを共有したが、あの風はステアに違いないとアーチーが言うと、アニーもそうね。と穏やかに笑った。