トワくんの部屋で捕まえた一匹のネズミは、
実はケージの中に入れられてナギさんの部屋にいる。
かおる
「ナギさん、またネズミに餌をあげてるんですか?」
ナギ
「ああ。腹を空かせたら可哀想だからな」
かおる
「…その餌、なんだか豪華ですね」
ナギ
「そうか?余り物で作っただけだぞ」
(さすが、誰かにご飯をあげることに関してはナギさんにかなう人いないよね)
ナギ
「お前、船長に言うなよ?」
かおる
「はい。船長にバレたらもうネズミは飼えませんもんね」
チューチュー
(すごいなぁ、このネズミすっかりナギさんに懐いている)
ナギ
「…ちっちぇーな」
かおる
「まだ子供くらいですかね」
ナギ
「そうだな」
ナギ
「…こいつにも親とか兄弟とか、いたんだろうな」
ナギ
「…離れ離れじゃ、寂しくねぇかな」
かおる
「ナギさん…」
チュチュチュ!
(!?)
(今なんか別の方からネズミの鳴き声が…あっ!)
かおる
「ナギさん、見てください。あそこにまたネズミがいます、しかも2匹」
ナギ
「なんだと?」
ネズミを見つけるなり、ナギさんはあっさりと捕まえてしまう。
ナギ
「……」
ナギ
「ちょっと同じゲージに入れてみるか」
チューチュー!
チューチューチューチュー!
かおる
「なんだか再会を喜んでるように見えますね」
ナギ
「じゃあ…やっぱりこいつらは家族だったのかもしれねぇな」
かおる
「再会できてよかったですね、ネズミの家族たち」
ナギ
「…そうだな」
ナギ
「かおる、ありがとな」
ぐしゃぐしゃ
ナギさんが私の頭をぐしゃぐしゃに撫でる!
(ナギさん、すごく優しい顔してる…)
(…家族かぁ。私も随分長いことお父さんとお母さんに会ってないな)
バッターン!
ナギ
「!」
かおる
「!」
リュウガ
「ナギ!むちゃくちゃいい酒を手に入れたんだ」
リュウガ
「見合うような極上のツマミを作って…」
リュウガ
「く……れ?」
チューチュー
私とナギさんはとっさにケージを背に隠す!
リュウガ
「お前ら…その後ろに隠しているものは何だ?」
ナギ
「な、何でもありません」
リュウガ
「嘘つけ!チューチュー言ってるじゃねーか、それはなんだ!」
リュウガ
「おいおい、こりゃネズミじゃねーか」
リュウガ
「お前ら、この船のルールをまさか知らないわけじゃないよな?」
(船のルール…伝染病や食糧不足を防ぐため、ペットは厳禁っていう、あれのこと…?)
ナギ
「……」
かおる
「で、でもこの子たちはこうしてケージに入れておけば安全ですし…」
リュウガ
「お前らがネズミを可愛がりたい気持ちはわかる」
リュウガ
「だがな、ルールは守るためにあるんだぜ」
かおる
「そ、そうですよね」
ナギ
「……」
リュウガ
「まあ、ケージに入れているし、お前らなら変なことにはならないと思うが」
リュウガ
「次の港に着いたら絶対に逃がせよ」
ナギ
「……アイアイサー」
(うわ、ナギさん…すごく不満そう…)
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私たちは港に寄港した。
船長に言われたとおり、ナギさんはネズミを逃がしたのだけれど…
チューチュー
かおる
「ついてきますね、ネズミ」
ナギ
「ああ…」
かおる
「ナギさんのことを、餌をくれる人だって覚えちゃったのかもしれませんね」
ナギ
「無駄に賢いねずみだな…」
ナギ
「まあ、いい」
ナギ
「適当なところまでつれてってやるか。お前も来い」
かおる
「はい」
チューチュー
チューチューチュー
(すごい、どこまでもついてくる)
(うぅ、そんなことされると別れがたいよ)
ナギ
「あっちの森に行ってみるぞ。その方が人気がなくて安全だろう」
ナギさんはチーズを取り出して、小さくちぎってネズミたちに投げてみる。
かおる
「ふふっ、喜んでますね。ネズミたち」
ナギ
「お前もやってみるか?」
かおる
「いいんですか?」
ナギ
「ほら」
ぽん…
ナギさんが私の口の中にチーズのかけらを放り込んだ。
かおる
「!」
(やってみるかって…ねずみ側をやってみるかってこと?)
ナギ
「満足か?さっさと行くぞ」
かおる
「は、はい…」
(びっくりした…。けど、そういえば子供の時こんなふうに両親と歩いたなぁ…)
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ナギ
「この辺りなら逃がしても安全だろう」
かおる
「そうですね」
(大丈夫かなぁ、ネズミたち。急に知らない場所にきて痩せちゃったり)
(親子が離れ離れになったりしないかな…)
ぶんっ!
ナギさんがチーズの塊を放り投げる!
チューチュー!
トタトタトタ…
ナギ
「よし、チーズを追いかけていったか。おい、今のうちに戻るぞ」
かおる
「はい…」
ナギ
「なんだ、お前。あいつらのこと心配してるのか?」
かおる
「実は…少しだけ」
ナギ
「親子で一緒なんだから大丈夫だろ。そんな顔するな」
(親子で一緒かぁ…)
ぐいっ!
ナギさんに手を引かれ、私はその場から遠ざかった。
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ナギ
「どうした、暗い顔して」
ナギ
「家族のことでも考えてたか?」
かおる
「え?」
ナギ
「お前は考えてることが顔に出やすい。図星だろ?」
かおる
「…はい、図星です」
ぎゅ…
(…肩を抱かれた…?)
ナギ
「寂しいか?」
かおる
「……時々は。でも…」
ナギ
「でも?」
かおる
「その…ナギさんが一緒にいてくれるから大丈夫です」
ナギ
「…かおる…」
ナギさんは私の肩を抱きながら、そっと指切りしてくれる。
ナギ
「約束する。お前のことは、俺がずっと守ってやるから…」
(ナギさん…!)
嬉しくてつい、ナギさんの手を握った。
ナギ
「…いてーよ」
かおる
「…だって、嬉しいんです」
ナギ
「なにが?」
かおる
「ずっと守ってくれるって言ってくれて」
ナギ
「…」
ナギ
「もう言わねーからな」
かおる
「ええっ!もっと言ってくださいよ」
ナギ
「いやだ」
かおる
「え~」
ナギ
「うるせーな」
ナギさんは私の肩をさらに強く抱いて
ナギ
「何度も言わなくてもわかるだろーが」
そうしてナギさんは私の言葉をさえぎるように、強引にキスをしてくれたのだった。