歌に乗せて綴ろうかと思います。
読んでくれたら嬉しいな。
YOU 2
その日の夜は、木村さんからのメールが来るのを待ちくたびれていた。
もしメールが来ると困るって事で、律子と話したくても、メールで我慢していた。
やっぱりこんな風に話しかけちゃ逆に引くんだろうか…とか、
ガムの紙ってのがよくなかったんだろうか…とか。
後悔の連続だった。
午後11時。
携帯の着信音が鳴った。
律子からだ。着信音でわかる。
メールかと思いきや、電話だった。
『もしもし?歩美?』
「どしたの。律子。さっきまでメールしてたのに」
『いや~ちょっと気になってさ。』
「何それ。木村さんからメールが来たら、真っ先に律子に知らせるってば」
『まぁそれはわかるんだけど。
つーかアンタさ、信哉くんはどうすんのよ』
信哉とは、私の付き合ってるのか付き合ってないのか、よくわからない彼氏だった。
「だって信哉とは付き合ってないようなもんじゃん。
別に私が好き勝手してても関係なくない?」
『まぁね。アンタがそれでいいならいいけどさ』
「うん。つーかもしかしたら木村さんからメールが来るかもしれないんだから、切るよ!」
『はいはい。じゃーまたね』
律子との電話が終わり、ふと見るとメールのマークが。
もしかして!!と思わずにはいられなかった。
メールを開いてみる。
すると見知らぬメールアドレスが。
『遅くなってごめんね。 隆』
「やったーーーーーーー!!」
その直後、律子に電話して、叫んだのは言うまでもない…。
YOU 1
そこは学校からほど近いコンビニだった。
いつも学校帰りに寄っているところ。
いつもの帰り道。いつものコンビニ。
でも歩美の気持ちだけはいつもと違った。
普段見たことのない、レジにいる店員。
(かっこいい…)
歩美は彼に一目惚れだった。
「ねぇねぇ!あの人めっちゃカッコよくない!?」
私は親友の律子に話しかけた。
「そう?でもあの人今までいなかったよね」
「めっちゃカッコいい!タイプ!!」
私は名前も知らない彼に、もうすでに夢中になっていた。
それからというもの、学校帰りにいつもそのコンビニに寄るようにした。
ガムやお茶を買うだけのためにレジに並んで、彼と話した。
店員と客の会話だから、話したとは言わないんだろうけど…。
日に日に、彼をもっと知りたいという気持ちが増えた。
彼にもっと近づきたい…。
名札で、彼が木村さんということを知った。
年は多分20代前半っぽい…。
毎日、律子と木村さんの話ばかりした。
「決めた!私、木村さんと友達になる!!」
「それはいい決意だけど、どうやって友達になるの?」
「とりあえず今日こそ話しかけるわ!」
私は、話しかけて友達になる事を決意した。
手紙を渡して、メルアドを書くことにした。
「律子~なんか手紙書く紙ない?」
「ないよ。持ってきてないよ」
「え~!じゃあこのガムの紙でいっか」
「アンタ…初めて話しかけるのに、ガムの紙渡すなんて…」
「いいの!紙なんて!伝われば!!」
私は木村さんのいるコンビニで買ったガムの紙で、木村さんへの手紙を書いた。
『はじめまして。
歩美っていいます。
友達になってください。
ayumi×××××@docomo.ne.jp 』
「それだけかよ!」
律子が突っ込んだのは言うまでもない…。
「いいの!シンプルな方が伝わるでしょ!」
ほとんどギャグのような手紙…。
それを持って、木村さんのいるコンビニへと向かった。
「うわぁ~!めっちゃドキドキするよ~!」
「まぁ、ここまで来たんだから、頑張って」
律子は人事のようだ。
コンビニの外からレジ付近を覗く。
どうやらレジには木村さんしかいないようだ。
今がチャンス!とばかりに、私はコンビニに入った。
律子は面倒だからと言って、外で待ってることになった。
私の緊張が高ぶる。
コンビニ内に入って、レジに直行。
「あの!」
木村さんが私の方を見る。
「はい?」
「これ、読んで下さい!」
それだけを言って、その場を去ったのは言うまでもない…。
大好きだよ。
風が冷たくなってきて、肌寒くなってきた、10月。
美奈子は親友の由紀と、いつも行くお馴染みのスターバックスにいた。
「大丈夫なの?本当に」
由紀が心配そうに美奈子に尋ねた。
「晃くんがいなくなって辛いのはわかるけど…、本当に元気だして」
美奈子は何も言葉に出来ない。
本当に口にチャックをしてしまったのかのように、声が出てこない。
ボーっとする。私は何しているんだろう。
「美奈子!」
由紀に叫ばれて、美奈子はハッとした。
「本当はずっと一緒にいてあげたいんだけど…ごめんね。バイトだから…」
「ううん、いいの…ありがとう…」
ようやくそこで美奈子は声が出した。
由紀と離れて、美奈子は自分の家へと向かった。
途中、近くの公園が目に入った。
(ここ…晃とよく来たな…)
公園の端にあるブランコ、二人でこぎながらお互いの夢を語った。
そんな日々はもう来ない。
美奈子はフラッと公園に入った。
日が沈みかけているのもあって、公園には人気がない。
ブランコの前まで来て、そっと座ってみる。
「晃…私もう我儘言わないから…だからお願い…戻ってきてよ…」
悲しい気持ちになるのに、全く涙は出てこない。
渇き切ってしまってるかのようだった。
(もう帰ろう…)
一人で公園にいても、思い出してしまう事ばかりで辛すぎる。
本当は家に帰っても思い出ばかりなのだが、それでも外にいるよりはいくらかマシだと思ったのだ。
アパートに着き、鍵を開けた瞬間、携帯が鳴った。
(晃…!?)
着信画面も見ないで、慌てて電話に出る。
『もしもし?美奈子?』
電話の相手は由紀だった。
「由紀…」
『ちゃんと家に着いた?』
「うん、着いたよ」
由紀は上京してきてからの、唯一の友達だった。
「ねぇ、私は大丈夫だから。そんな心配しないでよ」
『心配だよ。だって…』
「大丈夫だって!もしかしたら晃だって戻ってきてくれるかもしれないじゃん!」
『美奈子!』
由紀の声に少しビクッとなる。
『美奈子…辛いのはわかる。わかるよ…。確かに私は美奈子の気持ちは理解出来ないかもしれない。でも…晃くんはもうこの世にいないんだよ…。お願いだからしっかりしてよ…』
それを聞いて、美奈子はハッとした。
そうだ。晃はもうこの世にいない。もう私の前には戻ってこないんだ。
途端に晃と過ごした日々がフラッシュバックされる。
この部屋で一緒に生活していた事。
このベッドでだっこしながら寝ていた事。
晃の単車で、いつもドライブしてた事。
いつも夜、星を見に行ってた事…。
そうだ。晃はバイクで事故に遭ったんだ。
もう、戻ってはこない…。
美奈子の目から途端に涙が溢れてきた。止まることなく溢れ出た。
いつの間にか手に持っていた携帯も床に落としていた。
落とした携帯からは、『美奈子!?』と叫ぶ由紀の声がかすかに聞こえる。
晃がいなくなったこの1週間、何度も自殺を図った。
だけど病院に連れて行かれるだけで、晃のところには行けなかった。
そしてそんな記憶もなくなるほど、美奈子は毎日浴びるように酒を飲んでいた。
ずっと受け入れる事が出来なかった、晃の死…。
だけど受け入れなければ前に進めない…。
「晃…晃……」
美奈子は何度も晃の名前を呼んだ。
届かないのはわかっていたが、何度も呼んだ。
「晃…ずっと…ずっと…大好きだよ……」
美奈子はその場にうずくまったまま、動けなかった。
冷たい床に、美奈子の目から溢れた涙の雫が零れ落ち続けた。
大塚愛
