一度だけ、これが空(くう・ヴォイド)なるもの?
と思った経験がある。
ある夜のこと
目を閉じて瞑想、というよりは
意識がぼーっとし始めた時の事。
どんどん空間が広がる感じを覚え
そのままにしたら
何もない所に出くわした。
そう、そこには何もない。
光もなければ、
ザラザラしたようなマテリアルも何もない。
姿も形もない。
だけど、在る。
奇妙だけれど
何かがあるはずなのに、何もない。
でも、有る。
ないのにある
この状態を表そうとしたら
『あるけどない、ないけどある』
しか言葉が見つからない。
そんな感覚、初めてだった。
意識をどんどん拡大しようとすると
本当にどんどんどんどん広がって
最果てのなさに怖くなり、
このままいったら戻れないかもと
途中でやめて
意識を何もないところの中央に戻した。
そこに『意識』はあるような気がした。
何の意識かはわからない。でも何かある。
だけど完全に『ない』ものが一つある。
それは感情。
そう、ここには感情なるものがない。
それで、意識の中に聞いてみた。
感情はないの?
するとこんな感覚の答えが返ってきた。
人間の肉体に入った時、感情なるものが生まれるのだ、と。
正確なニュアンスを言葉にすると、
意識体に感情(みたいなもの)がないわけではないけれど
人間のような情感豊かなものじゃない。
人間の感情って起伏があるけれど
ここにはそういうものはないらしい。
この点にはいまだ謎が残るけれど
少なくともこの時、
私がいた場所には
感情なるものがなかったのは確か。
感情がないとこんなにフラットというか
ニュートラルなんだと感じたから。
その後、それ以上ここで得られるものは
ない気もして(というか、これ以上どうしていいのかわからなかった)
少しして意識を自分の体に戻した。
後にも先にもこの体験は一度きり。
その後もやろうと試みたけれど
自分自身の意識が邪魔して
うまくいかなかった。
それでもなお、いまだに
ないのにある、あるのに何もない
という体感が自分の意識の奥に刻まれている。

