はじめに

以下の御言葉は、千年王国の一体性について預言されていると読むことができます。「ともに」と訳されているיָחְדָּו(ヤーフダーヴ)は、「一体・ひとつ」と訳されるאֶחָד(エハード)の関連語です。

(新改訳2017) イザヤ書 11章6-9節
11:6 狼は子羊とともに宿り、豹は子やぎとともに伏し、子牛、若獅子、肥えた家畜がともにいてיָחְדָּו、小さな子どもがこれを追って行く。
11:7 雌牛と熊は草をはみ、その子たちはともにיָחְדָּו伏し、獅子も牛のように藁を食う。
11:8 乳飲み子はコブラの穴の上で戯れ、乳離れした子は、まむしの巣に手を伸ばす。
11:9 わたしの聖なる山のどこにおいても、これらは害を加えず、滅ぼさשָׁחַת ἀπολλύω ない。主を知ることが、海をおおう水のように地に満ちるからである。

強いものと弱いもの、捕食者と捕食される者、種々の被造物が列べられています。これら一つ一つの被造物について、原語を調べてみると、字義通りの被造物として読むことのできるものがありました。(字義どおりに読める箇所→狼・זְאֵבヨハネ10:12、子羊・כֶּבֶשׂ民数記28:3、豹・נָמֵרエレミヤ5:6、子やぎ・גְּדִי創世記27:9、子牛・עֵגֶלレビ9:2、若獅子・כְּפִיר士師14:5、肥えた家畜・מְרִיא 2サムエル6:2、13、小さな子ども・נַעַר קָטֹן 1サムエル20:35、雌牛・פָּרָה創世記32:15、熊・דֹּב 1サムエル17:34、獅子・אַרְיֵה 1列王記13:24、牛・בָּקָר創世記12:16、乳飲み子・יָנַק 1サムエル15:3、コブラ・・פֶּתֶןヨブ記20:14、乳離れした子 גָּמַל 創世記21:8、まむし・צִפְעוֹנִיエレミヤ8:17)

以下は、字義通りに読んだ場合について、考察したことです。

(新改訳2017) ローマ人への手紙 8章19-21節
8:19 被造物は切実な思いで、神の子どもたちが現れるのを待ち望んでいます。
8:20 被造物が虚無に服したὑποτάσσω כָּבַשׁのは、自分の意志からではなく、服従させた方ὑποτάσσω כָּבַשׁによるものなので、彼らには望みがあるのです。
8:21 被造物自体も、滅びφθορά  שַׁחַתの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由にあずかります。

ローマ8:21被造物自体も「滅びשַׁחַת」の束縛から解放され、のヘブル語は、イザヤ書11:9わたしの聖なる山のどこにおいても、…「滅ぼさשָׁחַתない」と語根が一致するため、この二つの聖書箇所は繋がっていると考えることができます。また、ローマ8:20の「服した、服従させた方」のヘブル語訳は、כָּבַשׁ(カーヴァシュ)で、初出箇所は創世記1:28、「神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。『生めよ。増えよ。地に満ちよ。地を従えよכָּבַשׁ κατακυριεύω 。海の魚、空の鳥、地の上を這うすべての生き物を支配せよ。』」です。そのため、イザヤ書11章の各被造物を、字義通りの被造物として考え、聖霊によって新創造された人が(創世記1:27、イザヤ11:2、2コリント5:17、ヨハネ14:16-20)地を従えて、強いものと弱いもの、捕食者と捕食される者を正しく治め、被造物も一つになってともに生きることが実現される姿が記されていると、考えることができます。

一方で、イザヤ書11章に記されている被造物が、聖書の中で比喩として読めるところがありました。今回は、「狼は子羊とともに宿り」の比喩を通して啓示されている千年王国について、見てみたいと思います。


1.    狼と子羊とは、誰を指しているのか

①    狼とは、カルデア人、国々、異邦人

狼と訳されたזְאֵב(ゼエーヴ)が指し示しているものを、見てみます。

(新改訳2017)(新共同訳) エレミヤ書 5章6節 52章8節 
5:6 …荒れた地עֲרָבָהの狼זְאֵבが彼らを荒らす。…
52:8 カルデアכַּשְׂדִּים軍は王の後を追い、エリコの荒れ地עֲרָבָהでゼデキヤに追いついた。…

荒れた地の狼とは、カルデアの軍であることが分かります。ハバクク書では、カルデア人の馬が狼に例えられています。

(新改訳2017) ハバクク書 1章6、8節
1:6 見よ、わたしはカルデア人כַּשְׂדִּיםを起こす。…
1:8 その馬は…日暮れの狼זְאֵבより敏捷だ。…

以上のことから、狼とは、カルデア人であると、考えることができます。カルデア人はバビロンと同義です。(イザヤ13:19、בְּנֵֽי־בָבֶלエゼキエル23:15)そして、バビロンは異国נֵכָר(ネーハール)であると記されており(詩篇137:1,4)国々、異邦人גּוֹיִם(ゴーイム)のカテゴリーです。(詩篇18:43-44)そのため、イザヤ書11:6の「狼זְאֵבは子羊とともに宿り」の狼とは、カルデア人を含む、国々、異邦人であると考えることができます。

②    子羊とは、イスラエルの残りの者

子羊と訳されたכֶּבֶשׂ(ケヴェス)とは、何を指し示しているか、見てみます。

(新改訳2017) イザヤ書 5章17節
5:17 子羊כֶּבֶשׂは自分の牧場דֹּבֶרにいるように草を食べ、肥えた獣は廃墟にとどまって食をとる。

「牧場」と訳されているדֹּבֶר(ドーヴェル)は、聖書の中で二回使用されています。もう一つの箇所から、子羊の正体を見てみます。

(新改訳2017) ミカ書 2章12節
2:12 ヤコブよ。わたしは、あなたを必ずみな集め、イスラエルの残りの者שְׁאֵרִית יִשְׂרָאֵלを必ず呼び集める。わたしは彼らを、囲いの中の羊のように、牧場דֹּבֶרの中の群れのように、一つに集める。…

「牧場דֹּבֶרの中の群れのように、一つに集め」られるのは、「イスラエルの残りの者」であると記されています。

以上のことから、イザヤ書11:6の「狼は子羊כֶּבֶשׂとともに宿り」の子羊とは、イスラエルの残りの者であると、考えることができます。


2.    大きな苦難の時、千年王国でともに宿ることになる異邦人(狼)は何をするのか

(新改訳2017) イザヤ書 11章6節
11:6 狼זְאֵבは子羊כֶּבֶשׂとともに宿りגּוּר…

狼がカルデア人や異邦人גּוֹיִם、子羊はイスラエルの残りの者であると、聖書を読みました。千年王国でイスラエルの残りの者と、ともに宿ることになる異邦人が、大きな苦難の時に、どんなことをするのか、見てみます。

①    寄留する異邦人は、大きな苦難の時に、イスラエルの残りの者を捕らえる

(新改訳2017) イザヤ書 14章1 節
14:1 まことに、主はヤコブをあわれみ、再びイスラエルを選んで、彼らを自分たちの土地に憩わせる。寄留者גֵּרも彼らに連なり、ヤコブの家に加わる。

イスラエルに連なる寄留者גֵּר(ゲール)の語源の動詞は、イザヤ書11:6の、宿りגּוּר(グール)です。そのため、イザヤ書11:6「狼(カルデア、異邦人)は小羊(イスラエルの残りの者)とともに宿りגּוּר」と、イザヤ書14:1「寄留者גֵּרも彼らに連なり…」は、同じ状況や状態が語られていると、考えることができます。これを踏まえて、次節を見てみます。

(新改訳2017) イザヤ書 14章2節
14:2 …イスラエルの家は主の土地で、その寄留者גֵּרを男奴隷、女奴隷として所有し、自分たちを捕らえた者שָׁבָהを捕らわれ人שָׁבָהにし、自分たちを追い立てた者を支配するようになる。

以上のことから、千年王国で寄留者となる異邦人とは、イスラエルの残りの者を、捕えた者たちであることが分かります。次に、イスラエルの残りの者を捕らえた者たちの、君主が誰であり、どんなことをするのか、見てみます。

②    千年王国で寄留する異邦人の、大きな苦難の時の支配者、君主は、獣、荒らす者

(新改訳2017) ヨハネの黙示録 13章5、7、10節
13:5 この獣には、大言壮語して冒瀆のことばを語る口が与えられ、四十二か月の間、活動する(戦いを行うπόλεμον ποιήσαι(Byzantine Greek)לַעֲשׂוֹת מִלְחָמָה)権威が与えられた。
13:7 獣は、聖徒たちに戦いを挑んでπόλεμον ποιήσαιלַעֲשׂוֹת מִלְחָמָה打ち勝つことが許された。また、あらゆる(すべての)πᾶς כֹּל部族、民族、言語、国民ἔθνος גוֹיを支配する権威が与えられた。
13:10 捕らわれの身になるべき者αἰχμαλωσία שְׁבִיは捕らわれαἰχμαλωσία שְׁבִי、剣で殺されるべき者は剣で殺される。ここに、聖徒たちの忍耐と信仰が必要である。

イザヤ書14:2で「(イスラエルの残りの者)を捕らえた者שָׁבָה  αἰχμαλωτεύω (千年王国で寄留者となる異邦人)を捕らわれ人שָׁבָה  αἰχμάλωτοςにし」とありますが、黙示録13:10「捕らわれの身になるべき者αἰχμαλωσία שְׁבִי…捕らわれαἰχμαλωσία שְׁבִי」のヘブル語も、ギリシャ語も、すべて関連語が使用されているため、千年王国で寄留する異邦人の支配者は、獣であることが分かります。また、この獣は、すべての部族、民族、言語、国民を支配するようになります。

そして、その獣に、聖徒たちと戦いを行う権威が与えられる期間は、四十二か月です。四十二か月とは、三年半です。三年半という基準から、この獣について、ダニエル書から見てみます。

(新改訳2017) ダニエル書 9章26-27節 
9:26 …次に来る君主の民が、都と聖所を破壊するשָׁחַת。その終わりには洪水が伴い、戦いמִלְחָמָה πόλεμοςの終わりまで荒廃שָׁמֵםが定められている。
9:27 彼は一週の間、多くの者と堅い契約を結び、半週の間、いけにえとささげ物をやめさせる。忌まわしいものの翼の上に、荒らす者שָׁמֵםが現れる。…

半週とは、三日半です。民数記14:33では、「おまえたちが、あの地を偵察した日数は四十日であった。その一日を一年と数えて、四十年の間おまえたちは自分の咎を負わなければならない。…」とあるため、ダニエル書9:27の半週、すなわち三日半は、三年半であると考えることができます。

以上のことから、千年王国でイスラエルの残りの者と寄留する異邦人の支配者、君主は、獣であり(黙示録13:5)荒らす者であると(ダニエル9:27)、考えることができます。

③    千年王国で寄留する異邦人は、大きな苦難の時に、サタンと獣を拝み、仕える者たち

(新改訳2017) ヨハネの黙示録 20章2節、
20:2 彼(御使い)は、竜δράκων הַתַּנִּין、すなわち、悪魔 でありサタンΣατανᾶς הַשָּׂטָןである古い蛇を捕らえて…
(新改訳2017) ヨハネの黙示録 13章2-4節
13:2 …竜δράκων הַתַּנִּיןはこの獣に、自分の力と自分の王座と大きな権威を与えた。
13:3 その頭のうちの一つは打たれて死んだと思われたが、その致命的な傷は治った。全地は驚いてその獣に従い、
13:4 竜を拝んだπροσκυνέω שָׁחָה。竜が獣に権威を与えたからである。また人々は獣も拝んでπροσκυνέω שָׁחָה言った。…

竜とはサタンであると記されています。そして、人々は竜(サタン)と獣を拝むようになります。「拝んだ」のヘブル語訳はשָׁחָה(シャーハー)です。拝むשָׁחָהとは、仕えるעָבַדことであり、奴隷עֶבֶדとなって服従מִשְׁמַעַתし、聞き従うことשָׁמַעだと、記されています。(出エジプト20:4-5、ローマ6:16)

したがって、千年王国でイスラエルの残りの者と寄留する異邦人は、大きな苦難の時に、竜(サタン)と獣(荒らす者)を拝み、聞き従い、奴隷として仕えることになると考えることができます。寄留することになる異邦人が、サタンと獣の奴隷として仕えるとは、実際に何をするのか、見てみます。

(新改訳2017) ヨハネの黙示録 13章11、14-15節
13:11 また私は、別の獣(偽預言者)が地から上って来るのを見た。それは、子羊の角に似た二本の角を持ち、竜が語るように語っていた。
13:14 また、この獣(偽預言者)は、あの獣(荒らす者)の前で行うことが許されたしるしσημεῖον によって、地に住む者たちを惑わしπλανάω 、剣の傷を受けながらも生き返ったあの獣の像を造るように、地に住む者たちに命じた。
13:15 …また、その像を拝まない者たちをみな殺すようにしたἀποκτείνω(アオリスト受動態) מוּת(使役受動態)。

地から上って来る別の獣とは、偽預言者であると、考えることができます。(σημεῖον ・πλανάω黙示録13:14)そして、13:15の「殺すようにした」は、ギリシャ語ではアオリスト受動態、ヘブル語訳では、使役受動態で記されており、偽預言者は、獣の像を拝まない者たちである聖徒たちを(黙示録13:10)、殺されるようにする、と理解することができます。そして、千年王国で寄留することになる異邦人を含む地に住む者たちは(黙示録11:9-10)、獣の像を造ることから始まり、獣の刻印をもっていない者が売り買いできないようにするなど、サタンと獣のシステムに加わるものと考えられます。

以上のことから、千年王国でイスラエルに寄留する異邦人は、大きな苦難の時、竜(サタン)と獣を拝み、聞き従い、仕え、偽預言者に惑わされ、サタンと獣に加担する、と考えることができます。

④    寄留する異邦人は、大きな苦難の時に、イスラエルの残りの者を、火と剣と略奪によって、つまづかせる

(新改訳2017) ダニエル書 11章33節
11:33 民の中の賢明な者たち(イスラエルの残りの者(ダニエル11:35、ゼカリヤ13:7-9、マタイ25:40))は、多くの人を悟らせる。彼らは、一時は剣にかかり、火に焼かれ 、捕らわれの身שְׁבִי αἰχμαλωσία となり、かすめ奪われて倒れるכָּשַׁל。

イスラエルの残りの者を捕らわれの身שְׁבִי(語源はשָׁבָה)とするのは、荒らすשָׁמֵם忌まわしいものを据える軍隊 であると考えられます。(מִלְחָמָה πλανάωダニエル9:26、11:31、33)海יָםは国々גּוֹיִםと同義であると記されていますが、獣は海から上がって来ます。(黙示録13:1)そのため、異国から上がって来る獣、荒らす者の軍隊の中には、千年王国で寄留する異邦人が含まれていると考えられます。(イザヤ14:1-2、ダニエル11:33)その寄留する異邦人を含む軍隊は、イスラエルの残りの者を、剣によって、火で焼くことによって、捕らわれの身にすることによって、略奪することによって、倒し、(つまづかせ)ます。 しかしそれは、イスラエルの残りの者を、錬るため、清めるため、白くするためです。(ダニエル11:35)

⑤    千年王国で寄留する異邦人は、エルサレムを攻め、都を取り、女たちを犯す

(新改訳2017) ゼカリヤ書 14章2節
14:2 「わたしはすべての国々כָּל־הַגּוֹיִםを集めて、エルサレムを攻めさせる。都は取られ、家々は略奪され、女たちは犯される。都の半分は捕囚גּוֹלָה(イザヤ14:2 שְׁבִי と同義(ナホム3:10))となって出て行く。…

獣に支配される異邦人は、イスラエルに対して、都を取り、家々を略奪し、女たちを犯し、都の半分を捕囚とします。イスラエルの残りの者にとって、戦犯、略奪者、性犯罪者である異邦人が、自分たちの相続地に寄留することが実現します。この異邦人は、エルサレムに攻めて来たすべての異邦人のうちの生き残った者たちであると、考えられます。(ゼカリヤ14:16)このような異邦人ををなぜ、イスラエルの残りの者が迎え入れることができるのか、見てみます。


3.    なぜ、イスラエルの残りの者が、自分たちを苦しめた者たちを、イスラエルの地に迎え入れることができるのか

①    獣が硫黄の燃える火の池に投げ込まれ、千年王国で異邦人が脅威とならないため

(新改訳2017) ヨハネの黙示録 19章20節
19:20 しかし、獣は捕らえられた。また、獣の前でしるしを行い、それによって獣の刻印を受けた者たちと、獣の像を拝む者たちを惑わした偽預言者も、獣とともに捕らえられた。この両者は生きたまま、硫黄の燃える火の池に投げ込まれた。

火の池とは、死を意味します。(黙示録20:14)あらゆる部族、民族、言語、国民を支配する権威をサタンに与えられた獣は(黙示録13:4,7)、千年王国に存在しないため、イスラエルの残りの者は、大きな苦難の時に苦しめる者であった異邦人を、自分たちの地に迎え入れ、寄留することができるようにされると、考えられます。

②    イスラエルの残りの者が自分たちを苦しめた者たちを迎え入れられるのは、サタンが縛られるため

(新改訳2017) ヨハネの黙示録 20章2-3節
20:2 彼(御使い)は、竜δράκων הַתַּנִּין、すなわち、悪魔でありサタンΣατανᾶς הַשָּׂטָןである古い蛇を捕らえて、これを千年の間縛り、
20:3 千年が終わるまで、これ以上諸国の民を惑わすことのないように、底知れぬ所に投げ込んで鍵をかけ、その上に封印をした。その後、竜はしばらくの間、解き放たれることになる。

千年王国の直前に、サタンは縛られ、底知れぬ所に投げ込まれ、封印されることが記されています。そのため、イスラエルの残りの者は、もはやサタンが働くことのできない千年王国において、大きな苦難の時に、サタンを拝み、聞き従い、仕えた異邦人を、寄留者として迎え入れることができるようにされると、考えることができます。

③    イスラエルの残りの者が異邦人を迎え入れられるのは、異邦人に御霊が与えられるため

(新改訳2017) イザヤ書 52章1節
52:1 目覚めよ、目覚めよ。力をまとえ、シオンよ。あなたの美しい衣をまとえ、聖なる都エルサレムよ。無割礼עָרֵל ἀπερίτμητοςの汚れた者は、もう二度とあなたの中に入っては来ない。
 
「無割礼」עָרֵל(アーレ―ル)の汚れた者が、シオン、エルサレムに二度と入って来ないとはどういうことか、見てみます。

「無割礼」עָרֵל(アーレ―ル)の反対語は「割礼を施す」מוּל(ムール)περιτέμνω です。(出エジプト12:48)パウロは「御霊による心の割礼περιτομή מִילָהこそ割礼」と言っています。(ローマ2:29)そのため、イザヤ52:1「無割礼の汚れた者は、…あなたの中に入って来ない」とは、シオン、エルサレムに、御霊による心の割礼を受けていない者が入って来ないと理解することができます。そのため、そこに寄留する異邦人も、御霊による心の割礼を受けているはずです。

(新改訳2017) イザヤ書 11章2、6、9節
11:2 その上に主の霊がとどまる。それは知恵と悟りの霊、思慮と力の霊、主を恐れる、知識דַּעַתの霊である。
11:6 狼は子羊とともに宿り、…
11:9 わたしの聖なる山のどこにおいても、これらは害を加えず、滅ぼさない。主を知ることדֵּעָהが、海をおおう水のように地に満ちるからである。

イザヤ書11章に列挙されている被造物が、「聖なる山のどこにおいても…滅ぼさない」理由は、「主を知ることדֵּעָהが海をおおう水のように地に満ちる」ためである、と記されています。イザヤ11:2の、霊の特徴の一つである、「知識דַּעַתの霊」によって、大きな苦難の時に、イスラエルの残りの者を苦しめた異邦人も主を知り、狼である異邦人が子羊であるイスラエルの残りの者を滅ぼすことがないために、寄留することが実現する、と考えることができます。

④    イスラエルの残りの者が自分たちを苦しめた者たちを迎え入れられるのは、御国の建設のために、異邦人が道具として用いられたことを知るため

「死とサタンの関係」「死と信仰の関係」「信仰と御国の建設の関係」について見てみます。

A)    死とサタンの関係

(新改訳2017) ヘブル人への手紙 2章14節
2:14 …死θάνατος מָוֶתの力を持つ者、すなわち、悪魔διάβολος שָׂטָןを…

上記の御言葉から、死の力を持つのは、サタンであることが分かります。

B)    死と信仰の関係

(新改訳2017) ローマ人への手紙 4章19-20節
4:19 彼は、およそ百歳になり、自分のからだがすでに死んだもνεκρόω מוּת同然であること、またサラの胎が死んでいることνέκρωσις בָּלָה(מוּתと同義:イザヤ51:6)を認めても、その信仰πίστις אֱמוּנָהは弱まりἀσθενέω  רָפָהませんでした。
4:20 不信仰になって神の約束を疑うようなことはなく、かえってἀλλά 信仰πίστις אֱמוּנָהが強められてחָזַק、神に栄光を帰し、

アブラハムは、自分のからだがすでに死んだも同然であること、サラの胎が死んでいることを認めても、信仰が弱まらず、かえって信仰が強められた、と記されています。そのため、死の力を持つサタンが、人にもたらした死によって、信仰を強められる仕組みであることが分かります。信仰とはなにか、見てみます。

(新改訳2017) ローマ人への手紙 4章11節
4:11   彼は、割礼を受けていないときに信仰πίστις אֱמוּנָהによって
義と認められたことの証印として、割礼というしるしを受けたのです。
それは、彼が、割礼を受けないままで信じるπιστεύω אָמַן すべての人の父となり、彼らも
義と認められるためであり、

信仰と信じるが、パラレリズムで記されているため、信仰は信じることを伴うことが分かります。何を信じたことが信仰なのか、見てみます。

(回復訳) ローマ人への手紙 10章17節
10:17 ですから、信仰πίστις אֱמוּנָהは聞くことἀκοή שְׁמוּעָהから来るのであり、聞くことἀκοή שְׁמוּעָהはキリストΧριστός ・θεός の言葉によるのです。

上記の御言葉と、ローマ人の手紙4:11と合わせて考えると、キリスト(神)のことばを聞いて信じたことが信仰であると、考えることができます。

C)    信仰と御国の建設の関係

(回復訳) へブル人への手紙 11章1節
11:1 さて信仰πίστις אֱמוּנָהとは、望んでいる事柄ἐλπίζω מִקְוֶהを実体化することὑπόστασις であり、見ていない事柄を確認することです。

望んでいる事柄とは何か、原語を辿ってみます。パウロは、「父祖たちに与えられた約束ἐπαγγελία הַבְטָחָהに望みἐλπίς תִּקְוָהを抱いている」と語っています。(使徒26:6)この約束とは、アブラハムとその子孫への地の相続の約束ἐπαγγέλλω בָּטַח(使徒7:5)アブラハムへの祝福と、アブラハムの子孫を大いに増やし、地のすべての国々がアブラハムの子孫によって祝福を受ける約束ἐπαγγέλλω  בָּטַח(へブル6:13-14、創世記22:17-18)大きな苦難の後に来る御国の約束ἐπαγγέλλω בָּטַח(へブル12:26-28)義の宿る新しい天と地の約束ἐπάγγελμα הַבְטָחָה(2ペテロ3:13)などで、将来、終わりאַחֲרִיתの希望תִּקְוָה・ἐλπίς(Apostolic Bible Polyglot Greek Text )のことです。(エレミヤ31:17)

そして、へブル11:1で「…信仰πίστις אֱמוּנָהとは、望んでいる事柄ἐλπίζω מִקְוֶהを実体化することὑπόστασις であり…」とありますから、信仰とは、望んでいる事柄である、神の約束が実体化することをもたらすものであると、考えることができます。 

ローマ4:11、10:17と合わせて考えると、数々の御国に関する神の約束について、キリスト(神)のことばを聞いて信じたことが信仰であり、その信仰は実体化する、という仕組みが見えます。

そして、信仰が強められれば、必然的に、実体化する神の約束も強まると考えられます。イェシュアは、「世の始まりから今に至るまでなかったような、また今後も決してないような、大きな苦難がある」と言われました。(マタイ24:22)アブラハムがサタンの持つ死の力によって、信仰を強められたように(ローマ4:19-20)大きな苦難の時、いまだかつてなかったサタンの大活躍によって、イスラエルの残りの者は信仰を大いに強められ、御国が実体化する営みが大いに進められると考えられます。

そして、イスラエルの残りの者は、大きな苦難の時に、神の良い計画である御国の建設のための道具として用いられた異邦人を、彼らの地に迎え入れるようにされると、考えることができます。


まとめ

イザヤ書11章が預言する千年王国の一体性は、強いものと弱いもの、捕食者と捕食される者が「ともに」宿る姿として記されています。字義通りの被造物として読むと、聖霊によって新創造された人が地を従え、被造物も一つになって生きる姿の実現が見えました。

一方で、比喩として読むと、「狼」とはカルデア人や異邦人であり、「子羊」とはイスラエルの残りの者であることを見ました。大きな苦難の時、サタンと獣(荒らす者)を拝む異邦人は、イスラエルの残りの者を強姦し、略奪と暴虐を尽くす戦犯となります。

しかし、千年王国において、イスラエルの残りの者はかつて自分たちを捕らえ、苦しめた異邦人を迎え入れることを見ました。その理由とは、 第一に、諸国の民を支配し惑わした獣が火の池に投げ込まれて消滅し、イスラエルの残りの者を苦しめる脅威がなくなるからです。第二に、 悪魔でありサタンである古い蛇が捕らえられ、底知れぬ所に千年の間縛られて封印されるため、もはや異邦人を惑わして悪を行わせることがないためです。第三に、 寄留する異邦人にも御霊による心の割礼が与えられ、主を知ることが海をおおう水のように地に満ちることで、彼らが互いに害を加えたり滅ぼしたりしなくなるからです。第四に、 サタンが持つ死の力で信仰を強められたイスラエルの残りの者が、神の約束が実体化する御国の建設という壮大な計画の中で、かつての敵である異邦人が神の計画に用いられた道具であったと霊的に悟るからです。苦難の中で信仰を強められ、全うした彼らは、異邦人を神の計画の一部として理解し、寄留者として温かく受け入れることができると考えました。