ある日、「今度はあっちに行け!」と命令がきて、おもむろに事が動き出す。

引越業者を探し、家財の処分を始め、行く先の引越受け入れ体制を調べる。

今の家の引き払い時期を決め、出発まで一時滞在する場所を確保し、出発日から逆算するように考えて、荷造りの段取りをする。

一緒に行くスーツケースに入れるもの。

船便で送るもの。

こっちとあっちで季節が真逆だったら…一切使わないだろう衣服や家財を分けて…処分するか、日本に送るか考える。

……

これまで何度もやってきた引越だが、あの「お祭り騒ぎ」が、再び我が家にやってきて4ヶ月弱。

明日の朝、出発である。


行ったら行ったで始まる、生活の立ち上げ。

銀行口座もそんなに簡単に開けられない。

新しい土地の社会のルール的なものを見極めねばならない。

新しい家を探しながら、その日から、ホテル生活してご飯を食べていかねばならない。

夫は即座に仕事のスケジュール開始でアテにならず。

私は食事に洗濯にと、その国の段取りにあわせて、家事を即開始。

街を歩いて、気にいる店を見つけては、食材を集めていく。

日本食も作れるように、地元のアジア食材を調べていって、ひょんなところで宝に出会えることを期待して情報収集。

我が家は子供がいないから、この辺りで済むが、子供がいたら、教育のこと、医療のこと、心配は尽きない。


なにより、船便でいつ再会できるかわからない家財や衣類を待つ間に、どうしても必要なものが出てくる。

そうして、我が家の二重三重の買い物が始まる。

調理道具なんかもそうだ。

現地で良いものを見つけられれば、それでも良いともいえるが、

包丁何本もいらない。

鍋いっぱいいらない。

自分の好みだってある。

今回改めて大笑いしたのは、我が家の寝具の重複具合だ。

前回の引越では、COVID真っ只中だったこともあり、特に吟味もせずに、詰め込んできたようで(記憶はあまりない…)、

出てくる出てくる、枕の集団。

この枕、どこで買ったんだ?あぁぁ、あの国だ!

え、じゃあ、これは? あぁぁ、その前の、ほら、あの国だったよ!

終いには、大きな前からあるダンボールを開いてみたら…

10年以上前、日本でのしばしの生活で2人で気に入って買った、でっかい枕が2つ、開かずの箱として静かに眠っていたのを叩き起こすことに。


片付けをしながら、毎回だが今回は特に、夫婦でどうしたらこの重複の買い物、「無駄な買い物」を防げるか、

いろいろ頭を捻り、策を練った。

策を練ったが… そんなに起死回生な答えはない…


調味料や食材にしてもそうだ。

家を引き払うまでに、全ての食料を食べ終え、調味料を使い終えたい。

その一心で、できる限り外食を避け、家を守る私など、昼食時になると、パントリーをゴソゴソと漁り、

買い物せずに食べられるものを考えて消費に務めた。

しかし、人間、いや私だけかもしれないが、そういう考えに基づく食事は、時々、息が詰まる、侘しい気持ちになる…

贅沢な考えかもしれない。が、楽しく美味しく食べることに重きを置かないご飯は、あまり続くと辛い。

結局、ギリギリまで自炊で頑張ったが、家事をいつまでも続けていると、引越準備ができないジレンマに。

家を引き払う前日夜、泣く泣く余った調味料を捨てなければいけなくなった…


いろんなことを考えさせる、我が家の引越人生。

ずっと静かにひっそり暮らしてきたつもりだが、この街にも、けっこう知り合いが出来ていたようで、

出発前のホテル待機のここ数日、そんな知り合い達と別れの挨拶をし、

この街でも、生きた証があることを感じた。


また引越だ。

また新しいスタートだ。


今回は、

ここ数年愛用している、私の小さい手に合った包丁と小さいまな板に、

キャンプ用の小さくできる羽毛ブランケットと、膨らます枕がお供。

限りあるスーツケースの容量でも、なんとか連れて行けそうだ。

船便が着くまで、こんな小さいことだけど、買わずに済む方法を実践だ。

なんでもアップデートしなくちゃ、ということで。


あっちでも、

少しずつ、焦らず、自分のペースで、

生活を立ち上げ、

街に溶け込み、

顔見知りが増え、

放牧妻の生活を楽しめるまでになっていきたい。


さて…

行きますか…