秋の夜空は、星たちの輝きが一層華やかになります。数々の名曲を世に出し、多くのファンに愛された谷村新司さんが遠い空に逝きました。1971年、堀内孝雄さんと矢沢透さんと3人でフォークグループ「アリス」を結成して歌い続けていたことでも知られています。

 

 眼を閉じて何も見えず 悲しくて目を開ければ 

 荒野に向かう道より 他に見えるものはなし 

 ああ砕け散る宿命の星たちよ 

 せめて密やかにこの身を照らせよ 

 我は行く 蒼白き頬のままで 

 我は行く さらば昴よ 

 

 名曲「昴」の一節です。1980年、谷村新司さんが作詞作曲して、自ら歌い、ファンを魅了しました。ぼくもよく聴いたものです。

  

 昴とは星の一つかと思っていたらそうではなく、古代中国では収穫のタイミングを計り物差しであり。航海の目印とされていて、その結果、財産をもたらす「財の宝」と言われてきたそうです。

 

 そんなことから類推すると、谷村さんのいう「さらば昴よ」は、現代風に言えばまさしく物質文明のシンボルであり、その物質文明である「昴」に「さらば」と告げようという意味があるやに感じます。次の時代では、目に得ないものを見て、お金やモノといった物質にとらわれない精神的な豊かさを追い求める新しい時代を作ろう。そんな意味の歌詞ではないかと、分析する評論家もいます。

 

 谷村新司さんが作詞・作曲した数は数えきれないほどですが、なかでも山口百恵さんの「いい日旅立ち」もまた誰もが歌える曲です。1978年の作です。 

 

 こうした数々のヒット曲は世界中で歌われ、とりわけ中国では多くの若者の間で愛唱されました。2010年、上海万博の開会式に招かれた際、みんなの前でこの「昴」を熱唱した縁で、中国の音楽院の教授として招聘され、しばらく指導してきた経験もあります。 

 中国外務省は「哀悼の意を表します」とのコメントを出しました。 

 

 「昴」を作詞作曲した当時のことをこう述懐しています。「僕らはみんな子どものころは、目を閉じてもちゃんと見えてくる大事な顔や景色があった。でも大人になって、目を開けて目に映るものだけがすべてと思って生き始めると、目を閉じても何にも見えなくなってしまう。実は、そのことはとても悲しいことなのかもしれませんねって歌ってる歌」だと。 

 皮相感を感じます。

 

 71歳を迎えた時、まだあと10年は歌おうと堀内さんと約束しあっていたそうですが、その志も果たせず、10月8日74歳の生涯を閉じました。惜しまれて余りあるシンガーソングライターの遺した功績は、今もそして明日も歌い続けられるでしょう。 
2023年10月18日記