ああ、また女に嫌われた。
俺が勤めている書店ではレジカウンターの端っこでミニサイズの香水をショウケースに並べて販売している。
買っていくのはたいがい女連れの髪も肌も泥をかぶったように茶色いイケメンズで、
そのなにが不満なんだかわからないがふて腐りきった態度と
連れている女のべたべたした甘えっぷりが最高に目障りで
日頃からにがにがしく思っていた。
「今お客さんに聞かれたんですけど夏限定の香水って置いてますか?なんかこう爽やかな感じの」
とバイトの中ではまずまず見れるほうの女子が聞いてきたのはおとといの夕方。
ふだんろくに女と話すことのない俺にとっては
そんな業務度100%の問い合わせですらおろそかにできない。
しかしそのときは汗まみれで作業中であり
なおかつ一緒に作業していた後輩社員の鼻毛がありえない長さと本数と角度ではみだしていたので
暑くて痒くてどうにもならないでいた。
そこでつい「夏も冬もあるかこのポカチンが」
と怒鳴りそうになったがそこはそれ、小心かつ一応社会人としての自覚もなくはないので
「いや、置いてないと思うよ、そういう最新のやつは。ゴメンネ」と優しく答えたのだがふと気になり
「そのお客さんって女の人?」と聞いたところ男のお客さんだという。
それを聞いて不快指数がMAXに達し、
「けっ!そんなに爽やかになりてえならレモン汁でもかぶっとけっちゅんじゃ!!」と吐き捨てたところ・・・
鼻毛男はウケているのにバイトの子はピクッとも笑わず、無言で行ってしまった。
あとから他のバイトに聞いたらその男性客はバイト女子の彼氏だったらしくその後その子とは完全に業務以外の会話がなくなった・・・・
さあ、そんな俺が選ぶ2006年上半期いちばん泣けるラブストーリー大賞がこれ、「ソウルトレイン」!!
どこが泣けるラブストーリーなんだよやる気のない半ニートのオタクがイケメンの彼女に惚れて
ちょっと会話したくらいで有頂天になり勝手な妄想をふくらますってだけの話じゃねえかよというのが
世間一般の感想であろう。
まったくその通りだし付け加えて言うならば
この物語には普通のラブストーリーがよく謳っている
「人を好きになって成長する」などという綺麗事が微塵もない。
むしろ主人公のダメさ加減が今後さらに悪化するだろうという確信を抱かせて終わる。
しかしそれがいいじゃないか?
俺のような恋愛偏差値がゼロな男には
巷にあふれる美男美女の恋愛ドラマなど絵に描いた餅に過ぎないのだ。ちっとも共感できないしどいつもこいつも自分に酔ってるだけに見える。馬鹿くさい。
いくつになっても「ソウルトレイン」で泣ける男でありたい。・・・のか?