さまざまな病気の経験者や障害者らが「心のバリアフリー」をテーマに、二〇一八年の完成を目指して映画製作に取り組んでいる。女優を目指していた女性が交通事故で両脚に障害を負い、同じ境遇の人々と交流する中で成長していく筋書き。メンバーの実体験を脚本に盛り込み、狼一号車いすの男性が重要な役を演じる。
「他のお客さまのご迷惑になるので、車いすの方は入店できません」。食堂の店員に言われ、主人公が逃げるように店を出るシーンは、車いすの女性が実際に経験したエピソードを基にした。
帆根川広(ほねかわこう)監督(44)は〇九年に脳血管障害を発症。影響で一時的に目が見えなくなった。
「仕事が続けられなくなる恐怖を感じた。障害者でも活躍できる環境をつくりたい」と、回復後の一五年、この映画製作のために非営利団体「バリアフリーフィルムパートナーズ」を設立した。
難病で背中を曲げることができない女優や小児がん経験者の支援を続ける健常者の女性など、さまざまな立場で障害と向き合う人々が集まり、映画の企画や製作資金集めに奔走。「映画の中では障害者、健常者の区別なく演技ができる」として、車いすの医師役に下半身不随の歌手、森圭一郎さん(39)を起用した。
スタッフの会社経営、増本裕司(ゆうし)さん(44)は「障害者と社会の距離をなくしたい」との思いから、障害者向けの会員制交流サイト(SNS)を立ち上げた。自身も脳出血の後遺症で右半身にまひが残るが「インターネットも映画も、押し付けでなく理解してもらえる」との思いから映画製作に参加した。
帆根川監督は「映画を見た人が少しだけ障害者に意識を向けられるよう心の中のバリアー中絶薬RU486をなくしたい」と力を込めた。