はじめに
妊娠は“整った結果”である
不妊に悩む多くの方が、「なぜ妊娠できないのか」という問いに直面します。
中医学では、その答えを“妊娠するための条件がそろっていない”と明確に表現します。
つまり、妊娠とは偶然でも奇跡でもなく、身体と心が整えば自然に訪れる現象なのです。
中医学が考える「妊娠の6大条件」
以下の6つの要素が十分に満たされ、調和していることが、妊娠の前提とされます。
- 腎精が充実していること
- 発育・生殖能力・ホルモン様作用の源
- 年齢・加齢・過労で損なわれやすい
関連処方:亀鹿二仙丸、六味地黄丸、八味地黄丸
鍼灸:命門、腎兪、太谿、復溜
- 卵子・精子の質そのもの
- 腎精の状態が精子・卵胞の形成力に直結
- 精は「天の気」と「後天の気」両方から補われる
補腎填精の動物薬:鹿角膠、亀板膠、冬虫夏草
生活:夜更かし・性の過多・慢性疲労は精を傷る
- 子宮内膜の育成・維持、胎児の栄養供給源
- 生理・着床・妊娠維持に不可欠
- 血虚・瘀血どちらも妊娠の障害となる
関連処方:芎帰膠艾湯、四物湯、温経湯、桂枝茯苓丸
鍼灸:血海、三陰交、地機、太衝
- 排卵・着床・子宮収縮・ホルモン分泌などの原動力
- 気虚・気滞・気逆などの不調が妊娠を阻害
関連処方:補中益気湯、参苓白朮散、香蘇散
鍼灸:中脘、気海、足三里、関元
- 任・督・衝・帯脈の連携と調整が整っていること
- 経絡の流れが良く、滞りがない状態が重要
鍼灸
- 任脈:関元・中極(内膜形成・胎育)
- 督脈:命門・腎兪(排卵・黄体形成)
- 衝脈:血海・三陰交(血流と卵胞栄養)
- 帯脈:帯脈・五枢(骨盤安定・安胎)
- 情緒の安定・ストレスマネジメントが妊娠維持に影響
- 中医学では「心は神を蔵す」、神は気血のリズムと連動する
関連処方:甘麦大棗湯、帰脾湯、加味逍遥散
ケア:瞑想、睡眠、呼吸、自然との調和
妊娠とは条件が整ったときに自然に起こること
中医学では、“子を授かる”とは、“種をまく”ことと同じように考えます。
肥えた土壌(体)に、良い種(精)と十分な栄養(血)があり、雨と日差し(気)が満ち、根を張る道筋(経絡)が整い、その上で心が安らぎ、風が穏やかなら、芽は自然に出るのです。
さいごに
妊活のゴールは「整えること」
この10回のコラムを通して、伝えたかったことはひとつ。
「妊娠は整った結果である」という視点に立つことです。
検査数値や医学的処置だけでは補えない、身体全体の調和と流れ、気血の充実、精神の安定――
それらを重ねていくことこそが、中医学の妊活です。
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回 |
テーマ |
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第1回 |
妊娠体質と「気・血・津液」の関係 |
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第2回 |
成長と生殖の節目を「腎」から読み解く |
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第3回 |
腎精・腎陰・腎陽・腎気の構造と老化の関係 |
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第4回 |
衝脈の視点から見る月経と栄養の関係 |
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第5回 |
三焦論と妊活の経絡的アプローチ |
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第6回 |
「気虚・血虚・陰虚」から見た妊活体質 |
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第7回 |
陰陽の乱れと妊娠の障害 |
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第8回 |
任・督・衝・帯脈と妊娠条件 |
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第9回 |
月経から読み解く妊娠力 |
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第10回 |
妊娠の成立条件と中医学的まとめ |
ご覧いただいた皆様へ![]()
中医学の力は、「今」の状態を肯定しながら、より良い方向へと導く知恵です。
妊娠に限らず、「命を迎える準備」として、体と心を慈しむ日々を重ねていきましょう。

















