人生にはいつ何が起こるか分からない。失業、離婚、戦争、不況による経済破綻など不安の種は尽きない。地震や津波のような天災だってある。そうした運命を変えるような出来事は予期せず起こり、その多くは努力や用心だけでは避けられないことである。

そうした不安の代表的なもので人が一番恐れているものは、誰もが避けられない死であろう。たとえ死にまでは至らなくても、事故や病気で身体が不自由になり、車椅子や寝たきりの生活になって今までの生活を続けられなくなるかもしれない。

多くの人は神仏に祈ったり、ポジティブ思想によって、願いが叶ったり、末期癌のような重病も治ると信じているようだ。たまにはそういうこともあるだろうが、わたしの知る限りそんな奇跡はめったに起こらない。神や宇宙は　人間一人ひとりの健康や人生には関心がないようだ。

　もし死が身近に迫った時、人は残された時間をどう過ごし、何をすべきなのだろうか ?

実を言うとわたし自身も、もし病気で余命宣告を受けらどうするかを考えたことがある。それは、身体に起こった異変に対する不安がきっかけだった。ある日、身体の左側の背中と胸部に違和感や痛みを感じたのだ。とっさに、ひょっとすると心臓病かもしれないと思った。

以前受けた検診で、医師から心臓に軽い異常があるので、何か異変があれば精密検査を受けた方がいいといわれたことがあった。ちなみに私の父は、今の私ぐらいの年齢で、路上で心筋梗塞の発作を起こし急死している。遺伝や体質的に、両親や家族が患った病気になりやすい。

急に不安になり、死が身近なものとして感じられた。定期健診で末期癌が見つかった、友人や同級生の顔が思い浮かんだ。悪いことばかり考え、きっと自分も死ぬのだと不安になった。そして、しばらくの間は、そのことが頭から離れずノイローゼ気味になってまった。

しばらくして冷静さを取り戻すと、もし遠からず死ぬなら、恐れるばかりではなく死ぬまでの期間に何をなすべきか考えるようになった。もうすぐ死ぬなら、社会的な成功や地位を追い求めても意味がない。

人の目を気にしたり、悠長に努力している時間はないのだ。もう先がないなら、あたらしいことに取り組む時間も余裕もない。本当にやりたい事をやり、今自分が持っているものの中から自分が生きてきた意味を学ぶしかない。

　どんな状況であれ、最悪の状態に直面した時に、人は成長する。死の淵にあっても、わたしたちは成長し何か学ぶことはあるだろう。

それでは、死の恐怖をいかに克服し、死ぬまでの期間をどう過ごし、どうすれば自分の死を受け入れられるか考えてみよう。

死ぬ前にすべきこと (1)