ラトル指揮&ベルリンフィルのマタイ受難曲。
(ピーター・セラーズというと、ピンクパンサーのクルーゾー警部役の名優がまず出てくるが、全くの別人)
福音史家が演技上でも、イエス役を兼ねたり(イエス役は客席から歌う)、
合唱が動的に散らばったり、
セラーズならではのユニークな演出で、
視覚的にも強く訴えかけてくるライブ映像だった。
バッハの受難曲に演出を加えるのは、当然賛否両論はあるだろう(ましてやセラーズだし)。
音楽そのものを純粋に味わうのに余計な演出は要らない、
といったような意見もそれはそれで十分に納得できる。
これについては、身近にちょっとしたエピソードがあって、
自分の相方は、もともとクラシックは全く聴かない人だったのだが、
何かの話題の時に、
iPodに入れていたヨハネ受難曲の一部(一部、といっても途中ほんの1分か2分くらい)を聴かせてみたところ、
聴いているうちに涙がポロポロとこぼれだして、
何で泣いてるのか、本人自身が一番驚いていた(いまだに不思議がっている)。
彼女の感性が豊かなこともあるとは思うが、
歌詞・言葉の意味や、その内容・場面が分からなくても、
バッハの音楽自体そのものが、
何よりも雄弁に、強く心を揺さぶる力をもっていることを証明する、よい例だ。
とはいえ、今回のような演出は、
それはそれでアリではないかと思う。
ユダとのやり取り、ペテロの否認で見せる人間の弱さ、
群衆の愚かさ、ピラトの心情と立場上の葛藤など、
特にマタイ受難曲のような非常に人間臭い作品においては。
(ヨハネ受難曲が、天から降り注ぐ天使の歌だとしたら、
マタイ受難曲は、地に縛られた人間が天を見上げて、声を絞り出して叫んでいるようなイメージを
自分は持っている)
演奏自体、非常にクオリティが高いこともあり、
この演出がより感動を高めることはあっても、損なうことはまずないのではないかと。
演奏についていえば、
非常に丁寧に音を作っている印象を受けた。
今までいろいろな指揮者のマタイを聴いているが、
他の指揮者なら通常、もっと音を張ったり走るようなところを、抑えて静かに演奏したり、
「え、ココでそうくる?」というようなところが結構あった。
ラトルはラトルで解釈・意図した結果なのであろう。
普段多く聴き慣れている人ほど、新たな発見があるかもしれない。
参考までに自分の好きなマタイ受難曲を紹介しておく。
ピリオド(古楽器)スタイルが好みなのと、
バッハの受難曲(特にヨハネ)には、少年合唱が入ってほしいという希望があり偏っているので、
あらかじめお断りしておく。
・レオンハルト指揮ラ・プティット・バンド
・クレオベリー指揮ブランデンブルグコンソート、ケンブリッジ・キングス・カレッジCho
・クレンペラー指揮フィルハーモニア管弦楽団
・ミュンヒンガー指揮シュトゥットガルト室内管
・鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン
・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管
一つだけ、としたら、レオンハルトのものになるかな。
他のどの演奏よりも静かで淡々としているように評されるし、
実際そう聞こえるが、
たとえばメンゲルベルグやリヒターのようにベクトルが外に直截的に向いていないだけであると思う。
ペテロ否認の後の有名なアルトのアリアErbarme Dich, Mein Gott
のルネ・ヤコブス(カウンターテナー)はまさに絶品!
見た目はおとなしいが、本当の意味での深い強い感動を与えてくれる録音だと思う。
レオンハルトにはヨハネ受難曲の録音がないまま(少なくとも公式には)亡くなったことは、
個人的に非常に残念に感じている。
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余談だが(本当にくだらない余談…(^_^;)
ボーナストラックに、
セラーズのインタビューが収録されているのだが、
いくら鬼才といっても
どう見ても寝癖にしかみえないセラーズの髪型には誰もツッコまないのかしら?
作ったスタイルとしたら意図がわからないし、
寝癖だとしたら、一体どういう寝方をしたらあんな形になるのかがわからない。。。
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