「ねえ、文字って何グラムあるかな?」

梢が"測り"に封筒を置いて
僕に聞いてくる

キッチンから。



「…えぇえ?なんて?」


聞こえてるけど、
質問が気になり過ぎてまた聞いた。



「いや、この手紙、
贈りたいんだけど、あと数gで
切手代変わっちゃうんだよね、
まだまだ書きたいのに。」


「そんなの知らないよ。大丈夫じゃない?」



なんだか真面目に答えた後、
ふふっと顔がにやけた。


「もう、本気なんだからね。」



いや、僕も真面目に答えたんだけどな、
本気で。



軽く頭を掻きながら
さっき注いだアイスコーヒーを
ひょっ、と一飲みして、
またスマホに目を向ける。

 



梢はいつも突然、

不思議なことを聞いてくる。


この前もスーパーからの
帰り道、


「ねえ、丸か四角か、二つ入れ物があって、
どちらか貰えるとしたらどっちがいい?」


「…入れ物?要らないよ、入れる物ないし。」

「それ、つまんない。どっちか選んで!」

「じゃあ、丸!」


「「その理由は?!」」
2人の声が重なる。

「って聞いてくると思った。」
少し悩んだ顔をして梢を見ながら笑った。

「ふふ、教えてよ」

「…丸の方がなんか優しそう。」

「なにそれ、でも、蒼君らしいね。」

「梢は?」

「私は四角!角にピタッとくっつけたいんだよね、綺麗に納めたいの。」


手紙のgに関しても、
梢は"きっちり"さんなのかもなあ、と
スマホ片手に思い出しながら、思う。

結局、その丸か四角か、
の事もそのまま終わっていたなあと感じた。
まだ入れ物も、もらってないんだけど。
梢から紹介された
"なぜか入れ物くれる人"から。




「書いてから、また測ってみよう。

うん、それしかないよ、そうしよう。」

梢は、ペンを取り
文字を書いていく。







何分経ったか、

アイスコーヒーの水滴が
コースターに染みた頃、
梢が手紙を測りにキッチンへ向かった。

「どう?」



「あはは、変わんないや。大丈夫そう。」


少し表情が晴れやかじゃない気がして、
「なんか残念そうだね。」と聞く。


「いや〜なんかさ、真面目にさ、しっかり想いを込めて書いたのに、重さは無いってなんかなあーと思って。」

意味わかんないでしょ、と笑う。


「いや、重さじゃないでしょ、
手紙は文字から感じる"暖かさ"でしょ。
梢が気持ちを込めて書いたなら伝わるよ。こんなスマホでも文字送れる便利な時代に、わざわざ書いて送るんだから。」


「蒼君、優しいね。ありがとう。
だけど、わざわざじゃないんだよ!
書きたくて書いてるんだから。」

それは、それは、失礼しました!

と、2人で笑い合う。




いいよな、言葉って、
形があって。色があって。話が合って。

彼女が、
丸って言えば丸だし、
僕が四角って言えば四角だし、

僕が空が今日は明るいねって言えば
彼女は今日は綺麗で青いねって教えてくれる。

みんなに平等に与えられて、
いちばん素直に、
自然に自由に使えるものだと思う。
言わなくても、見えなくても、
文字にしたら、点にしたら、色をつけたら、
あたたかくなる。


言葉があって良かったな、


そしてせっかくなら"言葉"を使うなら、
素直に、使いたいなあとふと、感じて…


「あ、、こずえ、、いつもありがとう、
これからも死ぬまでよろしく!」


「なに?急に…それは、重さあるね。
うん。重いよ。…でも、こちらこそ!」


ああ!出し過ぎた。と
少し慌てて水道の蛇口を閉めて、

指先に小さな雫を保ちながら
梢はふふっ…と柔らかな照れ笑いを浮かべた。