いい人だったんだね。
忘れずにいたかったんだね。
不意に、投げかけられたそんな言葉。
そうだ。
そうだったんだ、きっと。
あたしは、忘れずに、いたかったんだ。
彼を好きだったから。
彼を好きな自分だけが、唯一自分を好きになれたことだったから。
一生彼だけを愛していくって、12年前、心に誓ったから。
裏切ることも、許せなかった。
好きで、いたかった。
忘れずに、いたかった。
忘れずにいることだけが、愛情の深さを証明できるかもしれなかった。
でも。
どれも関係なかった。
いない人には関係なくて、いないことが事実。
忘れずにいる理由、持っていたかった。
いつか会ったときのために。
でも、違う。違うんだ。
理由はない。
理由なんてもう、とっくに取り上げらている。
だからもう。
忘れたい。
初めて心から、そう思う。