自分が中学生?の頃の小説なんですけど恥ずかしいので反転。

久々に読み返してみて、「あー、こんな時期もあったな」みたいな。

 

「ねぇ」

木に体育座りになって寄りかかり足を休めていた私は、首だけになったチェシャ猫を膝小僧の上にちょこんと乗せ、尋ねた。

「もし、わたしがチェシャ猫を食べちゃったら、どうなっちゃうの?」

ちっとも風になびかないフードのせいで、チェシャ猫の目は見えないけれど、一瞬チェシャ猫が固まったのを感じた。

「…何も変わらないよ」

驚いているのか、呆れているのか良く分からない口調で、チェシャ猫が言う。
口はいつもと変わらない三日月を転がした様な笑みを浮かべる。

「なんにも…?」
「うん。アリスのこの世界は変わらないよ。」

チェシャ猫は

僕が居なくなる以外は。

と、最後に付け足した。

「…変わるよ」

私は堪らず反論する。

「…チェシャ猫がいなくなったら、私は一生目の前が涙で霞んだ世界で暮らさなくちゃいけないことになるじゃない」

そんなのイヤだ。

目の前が常に霞んだ世界だなんて

きっとそんな世界の霞みが貴方を連想させて、私はまた涙を流すんだ。

貴方が居ない世界なら私は生きていたくはない。

「アリス、泣いているのかい」
「うるさいわね…冗談よ!!
チェシャ猫がそんな大真面目に答えるなんて、思ってなかったから…!!」

…一人は怖い。

孤独はつらい。

無人島に行くとしたら、何を持っていくか、ということを前に雪乃と議論になった事がある。
ナイフだとか、食料だとか、ゲーム機だとか、友達だとか…携帯電話だなんて言って笑い合った。(電波通じないよなんて言って笑った)

でも雪乃がナイフだと言ったのは、それで自分を殺すためだと言っていた。
もっと、生きるための道具として持っていくとかいうことかと思っていた私は冗談だからと笑った。
…それほど孤独は辛い。

でも、わたしは迷わず猫の首を持っていくだろう。
ナイフや食料やゲーム機や友達や携帯電話なんかより、
私は迷わず猫の首を抱えて、
無人島でひっそりと暮らす。

それが、人がたくさんいる世界よりも、私には幸福な世界だとも思った。


「アリス…泣いているのかい」
「チェシャ猫は…ずっと一緒にいてくれる?」

チェシャ猫の口がいつもより笑ったと思ったら、

…またお決まりの台詞を言うのだった。


「僕らのアリス、君が望むなら」