今から十年前のことだ。私は父の仕事の事情により、家族とアメリカに渡った。当時、私 は5歳でキンダーガーデン(いわゆるアメリカの保育園)に通うことになった。私はとにかく保育園が大嫌いだった。母と離れるのが寂しかったし、一人にされるのが怖かったからだ。
そんな不安を払拭できないまま私は母に連れられながらキンダーガーデンに行く。玄関につくと何人かの女の子や男の子たちが近づいてきて、先生がニコニコしながら迎え入れてくれた。そんな温かい空気に包まれたはずなのに私の心は全く穏やかではなかった。私は彼らの話す英語が一切わからず、いきなり未知の世界に迷い込んだ気分だったからだ。母に泣きつこうと振り返るが、母はもういなかった、、、 母が行ってしまったショックと周りとのコミュニケーションが図れない疎外感で、私は最悪の日を過ごした。次の日からキンダーガーデンに対する恐怖がより一層募り、私は母との別れ際で母を少しでも引き留めようと泣きじゃくった。この日々は少なくとも三か月は続いた。それでも母は粘り強く私を連れて行き、泣きじゃくる私に「じゃあね。」と優しく言って帰ってしまうのであった。私はそんな母を当時とても恨めしく思った。しかし今から思えばそれは母の優しさだったのだと思う。きっと母も泣いている私の姿に胸を痛めながら私のためになるように精一杯送り出してくれたのだ。
そんな当時の自分を情けなく思いながらも、今でも「いってきます。」というときは寂しさを感じる。