「岩間 寛」の詩集

「岩間 寛」の詩集

思い描いた詩(ポエム)やいい言葉を
時に文学的に
時に抒情的に綴ります

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教科書の縁から微かに見える

あなたの大きな背中

放課後の窓辺からカーテンに包まって眺める

あなたの輝く姿


やがて下校時刻が体だけ外界へと引き剥がす

漏れたため息が後ろに棚引き

あなたが残る校舎を包む

 

箍(かせ)を嵌めた足は地を引きずる

まるで廃人のように

まるで奴隷のように

なにものも写す瞳には

なにものも写すことはない

 

後ろから微かに声が聞えた

耳がぴんと反り返る

鼓膜が破れるくらいに

心臓が高鳴った

予感がした

握った掌がじんわりと粘つく

伸びてきた影であなただとわかる

横に並んだ私よりも少し高い肩


すれ違いざま

「じゃあな」

脱皮したばかりの低い声

夕日で顔が赤くなっていた

手を伸ばせば容易に届く

近くてとても遠いあなた


それでもあなたに触れたくて

そっと腕をあげて影を伸ばし

あなたとわたしが重なる瞬間

 



 

甘酸っぱいのは

レモンティーのせいだけじゃない




きみが口づけたカップに

震えながら唇を重ねる

味なんてわからない

ただ生温かさと甘酸っぱさが

体中を駆け巡る




それは桜満開の春だった

それは青々と澄み渡る水面に走る風だった

きみの顔をまともに見れない

だってぼくが今どんな顔をしているか

ぼくが一番わからないから




照れ隠しに窓の外を見ると

太陽と目が合った

眩しくて目を逸らすと

とうとうきみと目が合った




少し驚いたあとにはにかむきみ

初めて見るきみの表情に

耳の先まで熱くなる




ああ、駄目だ

今どんな顔をしているのだろうか




レモンティーはゆらゆら二人を写し

甘酸っぱい火照りを湯気に乗せている




 


 

鼻から小さく息を吐くと

囁くようにピーって声がした

今度は大きく息を吐くと

叫ぶようにプピーって声がした

こりゃ鼻の穴に住んでいる者の声だな




鼻をすすって追い出そうとしても

こいつは鼻でお祭り騒ぎ

出ていかないのなら

それ相応の用意あり




鼻紙片手に仁王立ち

ふんと鼻息自信の証

まぬけにプピっと叫んでた

そう言っていられるのも今のうちだぞ


とうとう鼻に鼻紙付けて

ちーんと鼻をかんでやる




それから大きく息を吸いこむと

鼻からふん、と吐きだした

ヒュウと息が逃げてゆく




あいつはどこかに旅立った

寂しくなんかないけれど

そのうちふらっと帰ってくる

鼻の穴の住人は

しばらくどこかへ旅立った