エピソード0 


僕は、疲弊しきっていた。


従業員が全く足りておらず、高速回転する現場

動物の死や、改善傾向に一喜一憂してられない

状況。とにかく回すのに必死。


うまく回らず苛立つ獣医師

気を使いながら、ゴマをすりながら

先輩の仕事で貰えるものはないか聞く。


休憩も満足に取れず、残業の毎日。

帰っても、分からないことを調べてまとめて

ってしてると、職場からの電話。

カルテの記入間違いだ。


命に関わることなので、患者の担当になると

重荷がどっと増えた。


その上での夜勤。


自分の時間なんて、殆ど無かった。

気の休まる時間もなく、ずっと力んだ緊張状態。


夜が眠れなくなり

肩こり、背中痛、頭痛がひどくなっていった。


朝方、意識が飛んで病院に運ばれたことも

あったっけ。


ある日、ふらついて仕事を早退。


病院に行くと「鬱ですね。仕事休みましょうか。」


え?


まさか。こんなに明るい性格の僕が、鬱?


衝撃だった。


しばらくしても、治る気配なし。

気を抜いたら涙があふれる。体がだるい

何もしたくない。

睡眠薬を処方されて飲んだが、ふわふわして

記憶もイマイチで冴えない。


1ヶ月、2ヶ月と終わりの見えないこの状態で

職場に迷惑がかかると判断し、退職。


2年間も勉強して、憧れた仕事

かっこいい職場。命の最前線に立つ。

どうやら、僕がその仕事をするには

弱すぎたようだった。


それからは、家事をしながらぼーっと過ごす日々。

2ヶ月微熱が続く。涙がとまらない。


心も身体も疲弊しきった僕は

当時のパートナーに、申し訳ない気持ちと

情けない気持ちでいっぱいで


何かしないと。何かにならないと。


必死で模索していた。


そんな時、久々に連絡してきた

高校時代ともに戦った部活の仲間が

近所に住んでいたのだ。


僕の顔を見て、その子は言った。

「ほんまに、かんくんなん…?」


そのくらい、顔が死んでたんだろう。

2時間くらい話した末に、夢を聞かれた。


「誰もが、自分らしくいれる服を作りたい」


壁にもたれなら、僕は ぼそっと呟いた。


「良いやん!それやろよ!」


…と、ここからトントン拍子で話が進む。


だが、しんどいのはココからだった。


次回へ続く。