土曜日の夜更け、窓からの風に当たりながらベッドでゴロゴロしていると、外から何やらギャアギャアとケモノの声がする。
近所には猫が多いので特別気にしなかったが、尋常じゃない苦しげな声が20分ほど止まない。
猫がどこかに引っかかったか、ネズミがどこかに挟まったのか、
ちょっと心配になり夫に「ケモノ、見に行こうよ」と言うと、
「行こうか」と二つ返事。夫は大抵のことに「いいよ」と言う。
ベランダからケモノの声がする方を確認し、外へ。うちのマンションはエレベーターの無い5階なので、黙って永遠と階段を降りる。この夜更けに何をやってるんだろう。ちなみに我々の部屋にはネズミが出る。平成30年にもなってネズミにキャベツを齧られる日々を過ごしている。
マンションを降り声がする方に向かったが、よくわからない。
「道の向こうかもしれないね」
深夜の1時半、住宅街の隙間を満遍なく見て回る男女。完全に不審者だ。1人じゃなくてまだ良かった。
ケモノの声はギャアギャア続いている。
「声は近いのにね」
可哀想だけど帰ろうか、と呟きながら家と家の隙間にライトを当てると
丸い光が4つ。
「目だ。こっち見てる」
その瞬間、乱れる光の玉、ギャアギャアと叫ぶ声。こいつらだ。うるせえ。
暗すぎて目玉が反射する光しか見えないが、たぶんハクビシンの子どもだろう。取っ組み合いのケンカ中だったらしい。
ライトをチカチカ点滅させると警戒して静かになった。猫だったら拾って飼ったのに。
そういえばハクビシンは昔「雷獣」と呼ばれていたらしい。雷とともに現れる妖怪。
雷獣の絵が、これ。