▲7六歩    △8四歩    ▲2六歩    △8五歩    ▲7七角    △3四歩
▲8八銀    △3二金    ▲2五歩    △7七角成  ▲同 銀    △2二銀
▲4八銀    △6二銀    ▲3六歩    △7四歩    ▲7八金    △3三銀
▲3七銀    △7三銀    ▲4六銀    △6四銀

今回は相早繰り銀について見ていきます。古くからある形で、35歩同歩同銀の仕掛けに86歩同歩85歩の反撃を狙っていく展開が定番で、少しの形の違いで全然違う展開になっていきます。今回は基本的な形における展開をざっとご紹介していきます。

 

【基本図以下の指し手】

▲1六歩    △9四歩    ▲9六歩    △1四歩    ▲3五歩    (途中図1)    △同 歩    

▲同 銀    △8六歩    ▲同 歩    △8五歩    ▲2四歩    △同 歩    

▲同 銀    △5五角    (途中図2)    ▲4六角    △同 角    ▲同 歩    △2四銀    

▲同 飛    △2三歩    ▲2八飛    △8六歩    ▲8三歩    △同 飛    

▲8四歩    △同 飛    ▲6六角    △8二飛    ▲1一角成  △3七銀    (結果図1)


 

まずはお互い端歩を突き合って35歩(途中図)と仕掛ける変化から。16歩は必要な一手で15角の王手飛車のラインを消しています。続く96歩は価値の判断が難しいですが、今回は14歩と後手も歩調を合わせる順を選びました。さて、この形は古くから指されており、後手の継ぎ歩攻めに対し83歩同飛84歩同飛66角と反撃する筋が難しく結論が出ていない形でした。以下82飛11角成87歩成同金同飛成には88香があるため、後手も簡単に手の出せない形です。ところが、この将棋はある一局を境に姿を消すことになります。2019年に行われたC級1組の阿部健-佐々木勇戦がそれです。途中図2の55角が工夫で、46角同角同歩と形を乱してから24銀と取るのが伏線になります。以下例によって先手は83歩~84歩~66角を決行しますが、37銀(結果図1)が強烈な一手です。同桂36歩38歩には87歩成があるため先手は相当に受けにくい形です。本譜は25飛としましたが、87歩成85香78と82香成47角で、あっという間に先手玉は寄ってしまいました。

戻って83歩では84歩もありますが、55角83銀42飛(参考図1)で先手の攻めが重い形です。この55角が発見されて以降、この形での35歩は成立しないというのがプロの認識のようです。

【基本図以下の指し手②】

▲5八玉    △5二玉    ▲3五歩    (途中図)    △同 歩    ▲同 銀    △8六歩    

▲同 歩    △8五歩    ▲3四歩    △2二銀    ▲2四歩    △同 歩    

▲同 飛    △8六歩    ▲8八歩    △8五飛    ▲4六銀    △2五歩    (図1)    
 

58玉52玉の交換を入れて35歩(途中図)も現代調の仕掛けになります。8筋は取り込まれますが、58玉型が遠いのでバランスはとれている、という主張です。後手の25歩は仕掛けを積極的に咎めに行った手で、無難に23歩や、23銀28飛24歩といった手も考えられるところです。

 

【図1以下の指し手】

▲7五歩    △2七角    ▲2五飛    △3六角成  ▲2八飛    △7五飛    (途中図)   

▲2三歩    △同 銀    ▲6六角    △2六歩    ▲7五角    △同 歩    

▲8二飛    △7二角    ▲3七銀    △2七馬    ▲8六飛成  △7三桂    

▲2六龍    △同 馬    ▲同 飛    △8三角    (結果図2)

25歩は飛車の詰めろなので75歩と受けますが、27角が後手の真の狙いで、馬を作って抑え込みを狙います。75飛(途中図)では75歩や26歩も考えられるところで、いずれもいい勝負です。また本譜は75飛に23歩と積極的に技をかけに行きましたが、38金と無難に収める手も考えられるところです。本譜は飛車角交換に成功し、82飛72角と角を打たせることにも成功しましたが、形勢は難しいです。26歩~27馬が妙に受けにくい反撃で、先手はやむを得ず26竜と竜馬交換を迫りました。結果図2は難解でこれからの将棋です。結論として、この形での仕掛けは成立するものの、いずれも難解なやり取りが続きあえて仕掛けるかは微妙なところだといえそうです。

 

【基本図以下の指し手③】

 

最後に後手からの仕掛けを見ていきます。66歩が先手の工夫で、35歩同歩86歩に同銀を用意したり、56角を含みにした手になります。しかし後手からの仕掛けが気になるところで、76歩に68銀(途中図2)では飛車先が不安に見えます。しかし86歩同歩同銀は56角と打てば、以下84飛には85歩~74角、77歩成は同銀同銀成同金(参考図2)で受かっている形です。本譜は66銀としましたが、25飛~65飛と銀を捕獲し、駒損の代償に後手が馬を作った(結果図3)はいい勝負といえるでしょう。途中図の形はプロ間でも頻繁に指されており、結論が出ていない形です。

 

<今回のポイント・まとめ>

今回は相早繰り銀における35歩(75歩)の仕掛けおよびそれに対する継ぎ歩攻めの攻防を見ていきました。結論からいうと、

①59玉型での35歩仕掛けは55角が好手で、後手がやれる。

②58玉・52玉型での仕掛けは25歩から馬を作られる展開になり、難しいが先手があえて選ぶ変化かは疑問。

③66歩型に対する75歩仕掛けは有力で、変化は多岐に渡り結論が出ていない。

端歩のちょっとした関係や38金型など、細かいアヤがたくさんあり、相早繰り銀は仕掛けのパターンこそ限られているものの奥深い戦型です。面白い形が色々見つかったらまた記事にしたいと思います。