■ニュースの概要■
アメリカ金融大手6社がアメリカ政府の支援を離脱する見通し。
シティグループやウェルズ・ファーゴが公的資金の返済計画を発表し、自立経営への復帰のめどがついた。

※政府支援を離脱する6社
JPモルガン・チェース
ゴールドマン・サックス
モルガン・スタンレー
バンク・オブ・アメリカ
ウェルズ・ファーゴ
シティグループ

<公的資金返済のメリット>
・経営の自由度が高まる。
・年間数十億ドルの配当負担がなくなる。
・幹部報酬の制限がなくなるので人材獲得の自由度が高まる。
・アメリカ政府にとっても、景気・雇用対策の財政負担が軽減される

<リスク>
・収益力は十分に回復しておらず、今後の不良債権の損失増加に耐えられるか
 (シティは本業で不振続き、バンカメは7~9月期決算で赤字)
 →返済は時期尚早との見方も強い

■個人的な見解■

シティグループの株価は公的資金返済の発表後から現在までに10%以上下落。
逆にウェルズ・ファーゴの株価はわずかに上昇。
その他にもバンク・オブ・アメリカやJPモルガンが株価を下げており、
公的資金の返済計画の発表によってアメリカ大手金融機関の株価が下げています。

バンク・オブ・アメリカとシティグループ以外は本業が回復の兆しを示していますが、
シティグループの直近の決算発表ではかろうじて黒字になった程度です。

幹部報酬の上限をなくすことが今回のシティグループの公的資金返済の一番の目的のようですが、
ほとんど利益が出ていない今は、不良債権をいかに処理するかのほうが重要なのではないでしょうか。

もし今後不良債権による負担が拡大してくれば、
シティグループは大規模な公募増資が行われる可能性もあると思います。

実際に、シティグループの幹部が今週中に株式で180億ドルを調達する可能性があると予想しています。

現在も公募増資が懸念されて株価は下がっていますが、
そんな大規模の公募増資が実現したらさらに下がってくる可能性もありそうですね。

今日はDCF法による理論株価の計算方法をまとめてみました。

将来のキャッシュフローや配当、割引率を正確に予測することは難しいので
実際には正確に理論株価を計算することは難しいです。

しかし、理論株価を計算することで利益確定ラインや株価が割安か割高かの参考にすることができます。

DCF法による理論株価の方法は2種類あります。

1:割引配当モデル(DDM法)
  →将来投資家が得る配当金の合計を期待収益率で割り引いて、現在価値にすることで株式の理論株価を求める手法。

2:DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
  →将来獲得するフリーキャッシュフローの現在価値の総和として事業価値を算出し、そこから理論株価を計算する手法


この記事ではまず割引配当モデル(DDM法)について説明します。
※ちなみにDDM法はDCF法の一部です。


1:割引配当モデル(DDM法)

株を持っていると毎年配当金を得ることができますよね?
DDM法では、投資家が毎年得られる配当金の現在価値の合計を理論株価として算出します。

現在の株価Pは1年後の配当金D1(インカムゲイン)と1年後の株価P1(キャピタルゲイン)によって表されます。
1年後の配当金と株価を割引率rによって現在価値にしたものが現在の株価となります。

  P = (D1 + P1)/(1+r)

さらに、1年後の株価は2年後の配当金D2と2年後の株価P2によって表されます。
さらにさらに、2年後の株価は3年後の配当金D3と3年後の株価P3によって表されます。

これをひたすら繰り返していくと

  P = D1/(1+r) + D2/(1+r)2 + D3/(1+r)3+・・・・
      +Dn/(1+r)n + Pn/(1+r)n 
    = ∑{Dn/(1+r)n} + Pn/(1+r)n 


ここでnを無限大まで大きくすると、Pn/(1+r)nは十分に小さくなるので無視できるようになります。

配当金が毎年一定と仮定すると、
∑{D/(1+r)nは初項D/(1+r)、公比1/(1+r)の無限等比級数となるので、理論株価は以下のように計算されます。

  P = D/r
(株価) = (配当金)/(割引率)


※ちなみに、割引率は投資に対する期待収益率と等しくなります。
期待収益率の求め方はまた別の記事でまとめます。


上記の理論株価の計算では配当金が一定であると仮定しています。
毎期の配当金が年間の成長率gで成長する場合、理論株価は次のように計算されます。

  P = D/(1+r) + D(1+g)/(1+r)2 + D(1+g)2/(1+r)3+・・・・
      +D
(1+g)n-1/(1+r)n + Pn/(1+r)n 
    = ∑{D
(1+g)n-1/(1+r)n} + Pn/(1+r)n 

これを先ほどと同じようにnを無限大にした無限等比級数として計算すると理論株価Pは次のようになります。

  P = D / (r-g)
(株価) = (配当金)/(期待収益率-成長率)


たとえば、配当金が1,000円で期待収益率が5%、成長率が2%であるとすると
理論株価 P = 1000円 / ( 6% - 2% ) = 20,000円 となります。

ここで、r-g = D/P となるので、
( r-g ) はその株式の配当利回りとして解釈することができます。
今日紹介する本は依田孝昭著の「ザ・ファンドマネジャー その仕事と投資哲学 」です。

最初に断っておくと、この本には具体的な投資のテクニックなどは書かれていません。

そのかわり、外資金融でファンドマネージャーとして働いた経験もある著者が
ファンドマネージャーとはいったいどういう仕事なのか?
どういった投資哲学の元で実際の投資を行っているのか?
という2点について具体的な事例を用いて分かりやすく説明されています。


小手先の投資テクニックに惑わされるのではなく、
投資哲学という軸を持って投資を行うことの大切さを実感させられる書籍です。

ザ・ファンドマネジャー その仕事と投資哲学


個人的に特に役に立った知識をここでアウトプット(紹介)します。


■自分の意見がコンセンサスと同じでは問題
コンセンサスは市場の価格に織り込み済み
→自分の見方が多くに人と同じであるならば問題あり。


■投資の神様でも間違える
株式投資の神様と呼ばれるジョン・テンプルトン
→3回に1回は投資判断を間違える。


■ファンドマネージャーの条件
決断力がある
論理的なものの考え方ができる
間違いを恐れない
間違いを素直に認める
旺盛な知的好奇心
他人に意見を聞く
思考の柔軟性
精神的なタフさ
実行力

・ファンドマネージャーとして成功するための条件
1.投資上の失敗を恐れてはならない
  (数多くの失敗を犯し、その中から身をもって学び取れ)
2.常に他の多くの人から学ぶ態度を堅持すること


■債券ファンドマネージャーと株式ファンドマネージャーの違い
二者の違いは債券と株式という資産の特性に起因します。

債券:将来のキャッシュフローが確定しており、債券の価格は大きく変動しない
株式:将来のキャッシュフローは確定しておらず、ファンドマネージャーが将来のキャッシュフローを予測し、
    自分で価格を決めるべきもの。株式の価格は大きく変動する可能性もあり。


■ファンドマネージャーに必要なCFA
CFAはアメリカの証券アナリストの資格です。
資産運用に従事する人が必ずこの資格を持っている必要はありませんが、
ほとんどのファンドマネージャー等はCFAを持っていたようです。


■ポートフォリオ運用の3つのプロセス
1.資産配分
 運用の対象となる資産クラスを選択し、それぞれにどれだけ投資するか組み入れ比率を決める。

2.マーケットタイミング
 長期的な投資戦略のための資産配分からそれぞれの資産クラスの組み入れ比率について短期的に乖離させること。
 短期的に有望と思われる資産クラスに多く投資して、
 逆に魅力度の低い資産クラスへの投資を少なく配分します。

3.個別銘柄選択
 多数の資産クラスで構成されているポートフォリオのトータルリターンを考えた場合、
 個別銘柄選択によるリターンの貢献度は資産配分やマーケットタイミングに比べるとかなり小さいです。
 しかし、各資産クラスの単独ポートフォリオ運用では銘柄選択によってリターンは大きく変わります。


この章を読んで、個人投資家と機関投資家の大きな違いの1つは、
個人投資家は個別銘柄の選択に大きく力を入れているのに対して、
機関投資家は資産配分やマーケットタイミングに力を入れていることだと思いました。
 

■トップダウンとボトムアップ
トップダウン:マクロ環境の判断からスタートして個々の投資対象の決定に到達するアプローチ
ボトムアップ:マクロ環境や契機等は考えずに、個々の銘柄に関する魅力を分析して投資判断とするアプローチ


■市場は効率的か?
市場の効率性の3つの段階
1.ウィークフォーム:過去の情報は全て価格に反映
2.セミストロングフォーム:公開されている情報は全て価格に反映
3.ストロングフォーム:情報は非公開のものも含めて全て価格に反映

もし、市場が効率的で全ての価格が公正で妥当であれば、
ファンダメンタル分析に基づいて価格の割安or割高の判断をする余地はありません。

また、過去の情報が全て価格に反映されているなら、
チャートや指標によるテクニカル分析や、過去のデータに基づくクォンツ分析も
将来のリターンを予想するには有効とは言えません。

市場が効率的ならば、市場平均よりも良い運用成果を期待するのは無理ということになります。
(アクティブ戦略は意味がなくなります)
→インデックス運用というパッシブ戦略が有効になる。

しかし、ここに大きな矛盾が生じるようになります。


■アクティブとパッシブ
アクティブとパッシブには投資家の性格についての意味と運用戦略としての意味の2つがあります。

・投資家の性格
アクティブ:企業の経営に積極的に関与して企業価値を高め、投資からのリターンを向上させる投資家
パッシブ:株式を保有するだけで、企業の経営には関与しない投資家

・運用戦略
アクティブ:投資対象の資産クラスの市場平均より高いリターンを上げようとする戦略
→市場の非効率性を前提としています。
 非効率であるから情報が十分に価格に反映されておらず、割安な株というものが存在します。
 その割安な株を購入して割高で売却できれば市場平均よりも高いリターンを得ることができます。

パッシブ:ベンチマークと同程度のリターンを求める戦略
→市場が完全に効率的であれば、市場平均よりも高いリターンを市場と同じリスクで獲得するのは不可能です。
 そのため、市場指数の模倣となるようなパッシブ戦略として、インデックス運用が意味を持ちます。
 しかし、パッシブ運用が主流となってインデックス銘柄をポートフォリオに組み入れる動きが増えると、
 個々の銘柄の投資価値を無視した価格形成が行われるようになります。
 すると、パッシブ運用は市場の完全効率性を前提にしているにもかかわらず、
 市場の非効率かを助長するようになってしまいます。


ザ・ファンドマネジャー その仕事と投資哲学