図書館で予約してた「リカバリー・カバヒコ」、やっと届きました!
(青山さんの小説はどれも大体半年待ち)
返却期限が近いので、早速感想書きます。
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青山美智子『リカバリー・カバヒコ』(光文社)
分譲マンション「アドヴァンス・ヒル」に住む5人が主人公の連作短編集。
アドヴァンス・ヒルの近くにある日の出公園には、古びたカバのアニマルライド「カバヒコ」がポツンと置かれている。
このカバヒコには伝説があって、自分の治して欲しい場所と同じ所に触れると回復するらしい。
人呼んで「リカバリー・カバヒコ」。カバだけに(笑)。
成績が悪くてテストの点を書き換えた高校生、
ママ友と上手く馴染めない元アパレル店員、
ストレスで休職中のウェディングプランナー、
駅伝が嫌で怪我のふりをしたら本当に足を悪くした小学生、
母親との関係がこじれている雑誌編集長…
5人の主人公はふとしたきっかけでカバヒコに出会い、具合が悪くなる前の自分に戻してとお願いする。
その後彼らは思いがけない体験をして、心も体もだんだんと回復していく。
青山さんの作品ではお馴染みの「幸せを呼ぶキャラ(?)」が今回も登場。
ボロボロな姿で口を広げてのんきに笑っているカバ。
動いたり喋ったりはしないけど、触れた人を「リカバリー」する何かを呼び寄せる力がある……のかもしれない。
第4話の主人公、勇哉を「リカバリー」してくれたのは整体師の伊勢崎さんだった。
治療が終わり「これで元どおりですね」と喜ぶ勇哉に、彼はこう答える。
「人間の体はね、回復したあと、前とまったく同じ状態に戻るというわけじゃないんだ」
「えっ」
「病気やけがをしたっていう、その経験と記憶がつく。体にも心にも頭にもね。
回復したあと、前とは違う自分になってるんだよ」
―第4話「勇哉の足」より
傷や痛みを自分の大事な経験として受け入れること。
受け入れれば、不安で逃げてきたものとの向き合い方も変わってくる。
カバヒコはそのきっかけをくれた。実際にどう向き合うかは自分次第。
「前とは違う自分」として新たに踏み出していくみんなの姿に心が温かくなった。
一番共感したのは第3話のちはる。
同僚に引け目を感じたりとか、誰かの些細な言動で不安になったりとか、
抱えているものが少し似ていて、結構痛いところを突かれたような気がした。
ちはるの心を救った、ある人からの手紙に思わずホロリとなった。
表情や態度で誤解させてしまうことって結構あるし、言葉で伝えるって大切!
「ああ、私は、なんてばかな勘違いをしていたのだろう。勝手な想像で、なんて無駄な回り道をしていたのだろう。
ちゃんと真正面から向き合えば、わかることだったのに」
―第3話「ちはるの耳」より
今回も全てのお話は少しずつ繋がっている。
第5話のお好み焼き屋のシーン、たった4行だけどほっこりした。
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【おまけ】
今年の3月。
新宿の紀伊國屋書店に寄ったら「リカバリー・カバヒコ」の宣伝中で、
カバヒコにも会いました!
ウルウルした目と口元のかわいいこと(*^^*)
小説でみんなが悩みを打ち明けてた気持ち、わかる気がする。
いろいろ考え過ぎちゃうタイプ(&頭痛持ち)なんで頭を撫でさせてもらいました。
今も他の書店やイベントで活躍中とのこと。がんばれ~
今日も読んでいただきありがとうございます。
それではまた。