最近ハマっているホラー作家「梨」さんの小説『6』を読了。
お化けや幽霊を超えた、現実の恐怖を描いた作品です。
深夜に読むのはオススメしません💦
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梨『6』(玄光社)
タイトル通り6つの話が収録された短編集。
場所も登場人物もそれぞれ異なるが、最後まで読むと繋がりがわかってくる。
どのエピソードも何らかの理由で「ここではない異界」と接触してしまった人々の末路だ。
●「ROOFy」
デパートの屋上遊園地で異界に迷い込んでしまう話。
遊園地やキャンプ場でトイレに入ると落ち着かないのはそういうことかと思う。
賑やかな場所に置かれたあの個室は、異界との境目なのかもしれない。
絶叫と共に腐り始めるアトラクション達。
楽しい夢の世界も、結局は懊悩や虚栄に塗れた現実世界に過ぎなかった。
主人公はそのことに無理やり気付かされることとなる。
「全部お前にも起こるからな」
いきなり最初から逃げ場が無くなってゾッとする。
●「FIVE by five」
ある山道の石塔にまつわる怪談を取材中に失踪したライター。
残された記事を読み解くと、彼が隠したかった事実が浮かび上がってきた。
文章の不自然な部分から真相を探っていくのがおもしろい。
ライターは取材中に出会った謎の集団から奇妙な話を聞かされていた。
人間界を含めた6つの世界、そこから抜け出すために自殺する幽霊。
「死後の世界なんて禄でもないよ」って幽霊に言われたら、確かに怖い。
●「FOURierists」
特定の山道でだけ拾えるFMラジオの電波を追いかける大学生たち。
ビデオ映像の書き起こしというスタイルが実録ホラーっぽくてドキドキする。
そのFMラジオでは罰当たりな行動を推奨しているらしい。儀式で使ったものを粗末にするとか。
ラジオ局が異界にあって、罰当たりな行動で人を異界に引きずり込もうとしてる?
終始テンション高そうなパーソナリティの女性が不気味。
「怒りました?」
●「THREE times three」
「愛の新世界」という宗教団体の勧誘マニュアル。
「畜生様」なる動物霊を信仰する宗教らしい。
勧誘セミナーで集めた人々を、新世界に導く修行と称した合宿に参加させる。
合宿では食事や睡眠時間を徐々に減らし、罵倒しながらスピーチをさせる。
最後に「畜生様」を呼び出す儀式をして、涙を流しながら全員で喜び合う……
まさに典型的な洗脳の手口。リアル過ぎて気分悪くなる。
高校生の頃、道端で変なセミナーだか食事会だかによく誘われたのを思い出す。
付いていったらどうなっていたことやら。
最後のアレの意味がよくわからなかったけど、全部読み終わって納得。
盛大に失敗したわけね。まあ自業自得だと思うけど。
●「TWOnk」
曾祖母は少年の幽霊が見えていた。
曾祖母の死後、幽霊も首を吊る。
家に残った彼の「死体」は、やがて家族を崩壊させていく。
第2話に出てきた自殺する幽霊の話。発想が凄すぎる。
第3話のFMラジオが流れてるのも気になる。
一家が全滅したのに、語り手だけ助かったのは何故だろう。
ひいおばあちゃんが守ってくれたんだったらいいな。
●「ONE」
語り手がエレベーターを通して見せられる悪夢のような光景。
ここで全ての真相が明らかになる。
仏教の教えによれば、亡くなった人は地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の6つの世界のどこかに生まれ変わる。
この生まれ変わり=輪廻転生を繰り返して徳を積めば、やがて解脱して極楽浄土に行けるらしい。
確かに6つの世界はあった。しかし極楽浄土はどこにも無く、それぞれの世界で死んでは別の世界に戻り…を繰り返すだけ。
楽しみの多い世界である天上(第1話の遊園地)も、寿命?が来て腐り始めている。
そのことに気付いてしまった人間たちは何とか解脱しようと手を尽くした。
謎の石塔、罰当たりな行為、畜生様の信仰、幽霊の自殺。
全てはこの世界から抜け出すための努力だったのだ。
残念ながらどれも無駄に終わり、むしろ世界が崩壊する可能性が示唆されている。
これだけでもう十分救いが無いのに、ラストでは最悪の結末が待っている。
「あ、僕はその時点で、躓いていたのか」
不快で、不穏で、不幸な話が淡々と語られる。
何か良くないことが起きているのだけはわかるけど、結局誰も止められない。
そして全てが明らかになった時、最初からどうしようもなかったことに気付くのだ。
「生まれ変わるとか転生するとか。死後の世界もそうですね。みんなそうまでして死ぬのを否定したいのかなって思ってたんですけど、多分そうじゃないんですね。(中略)誰も答え合わせをできないから、そこに色んな希望を持たせようとしてるんです」
最悪なのに妙に爽やかな終わり方なのは、現実から逃れようとあがく人間たちへの皮肉なんだろうか。
選択肢なんて無いのに何やってんだか、って。
なら人間界に長く留まるのが一番良いよね、多分。
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今日も読んでいただきありがとうございます。
それではまた。
