今井寿恵さんとは、私、写真人がアメリカでビンボー学生をしていた頃に知り合った。
場所は、ケンタッキー州にあるチャーチルダウンズ競馬場である。
「なんて馬好きなオバサンだろう!?」と思っていたのだが・・・。
競馬場へ来たのはもちろん撮影が目的。
今井さんも、私、写真人も・・・。
あれから二十年以上が経つ。
会えばいつでもアメリカの競馬の話ばかり。
でも、今井さんがデジ一眼(ニコンD3)を購入したときは、
デジカメの話も良くしていたが・・・。
今井さんが17日、火曜日、自宅にて逝去された。77歳だった。
まだ”男尊女卑”が残り、ギャラリーといえば油絵が主流だった銀座のギャラリー(松島ギャラリー)で、
今井さんが写真展をやったのは昭和31年の事。
1ドルが360円の時代にニューヨークへ移り住み精力的に写真家として活躍した。
「あの頃はね、日本からニューヨークへの直行便がなくて、大変だったのよ。
一年にアメリカの日本を何往復もすると1000万近くお金を使ったわね・・・」
なんて、澄ました顔で言っていた。
細江英公氏との親交も深く、男・細江、女・今井といわれるくらい、
当時の写真界でもこの二人の作品は斬新だった。
現在でも何度となく当時の写真が写真展、または雑誌等で紹介される機会があるが、
未だ色あせて見えない。むしろ、新鮮に見える。
最近は、女性の写真界における進出が多くなってきたが、
今井さんほどに斬新な写真(=光を基調とした写真)を見たことがない。
どの女性写真家の作品も似たり寄ったりで個性がない。
今井さんのような写真家を望む、私、写真人である。
今井さんがニコンのD3を買ったとき、
「ニコンのデジタル、良いわよ~・・・。アナタのはど~~お?!」
とお茶目な笑顔で尋ねてきた今井さんの顔が忘れられない。