痛みが出たときどうする?
競技者にとって故障はつきもの。
あなたは、痛みを感じたときどうしますか?
- 強度を抑えて様子を見ながらトレーニング継続
- トレーニングを休止して様子をみる
- 痛みがなくなったら練習再開
だいたいこんな感じですよね。
これで治ればいいですが、故障期間が長引いたり、古傷として付き合うことになったり、上手くいかないこともしばしば。
先月の信越で大腿四頭筋腱の付着部を故障し、回復までに1か月かかった自分の例をもとに、
「基本的な」故障の治し方を解説します。
治るとは炎症が引くことではない
故障から治るまでの過程は、3段階に分けられます。
-
炎症期
-
仮の修復期
- 再構築期
多くのランナーが「痛みがなくなった=治った」と判断して練習を再開しますが、
一歩間違えると再発することになるので注意が必要。
「治った」と判断したタイミングが、
「修復期」なのか「再構築期」なのか。
この3段階を理解すると、
「休むべきか」と「動かすべきか」の線引きが分かり、
希望をもってリハビリトレーニングができます。
炎症期(発症~1週間)
患部の状態
-
長距離走後の筋・腱損傷により、微細な出血や炎症性が発生
-
白血球やマクロファージが損傷組織を分解し、「新しい修復の準備」を始める
-
「腫れがある」「押すと痛い」「日常でも痛みがある」が特徴
この時期にすべきこと
-
積極的に動かさない(安静が最優先)
-
アイシングや微弱電流(ATminiなど)で炎症コントロール
→ この時期に“無理に動かす”と、炎症が再燃して長期化する。
仮の修復期(7~14日)
患部の状態
-
炎症が収まると、**線維芽細胞(fibroblast)**が活発に働き始める
-
コラーゲンが新しく作られ、損傷部を“仮の糊”のように修復
-
しかしこの段階のコラーゲンは、配列がランダムで弱く、強度は不十分
この時期にすべきこと
-
アイソメトリック(壁押しなど)やストレッチで軽い筋収縮を入れる
-
微弱電流や温熱で血流促進
-
痛みが出ない範囲で、少しずつ可動域を戻す
→ 痛みが減っても「完治ではない」。まだ接着剤で固めただけの状態。
→ 痛みの出ない範囲で軽い荷重を再開。線維の方向性を整える。
再構築期(15日~30日)
患部の状態
-
再生したコラーゲンが、負荷の方向に応じて再配列していく段階
-
ここで「正しい方向のストレス」を入れることで、線維は強くしなやかに育つ
-
動かさないと、線維が硬く・短く修復されてしまい、違和感が残る
この時期にすべきこと
-
痛みのない範囲でラン再開(歩き+ジョグ)
-
腱や筋肉に伸張刺激を加える(エキセントリック収縮)
-
温熱+ストレッチで滑走性を回復
→ 「少し違和感があるが、悪化しない範囲」で動かすことが、線維の滑走性を高め、再発リスクを下げるポイント
走りながら治す人のリスク
身近にいませんか?
痛いと言いながら走り続けるランナー。
そしていつの間にか治っているランナー。
これは、
「再構築期に必要な刺激がたまたま適切に入った」
というケースがほとんど。
この「たまたま」というところがポイント。
傍から見ると、「痛いのに走り続けていた」ようにみえますが、炎症期を経て、仮修復期、再構築期に必要な刺激がたまたま適切に入った。というだけ。
これが感覚だけで上手くできる人がいます。
しかし、
炎症期に動かして悪化(再出血・腱線維断裂)
無理に負荷をかけて慢性的な障害に繋がる
といったリスクがあります。
もちろん故障の程度にもよりますが、
生涯スポーツとしてランニングを楽しみ続けたい場合、
走りながら治すことはおすすめしません。
まとめ
期分けの日数は、僕が回復までにかかった日数の目安。
2週間は日常生活でも痛みがあり完全休養。15日目からリハビリ開始。5kmジョグができるようになるまで25日ほどかかりました。
障害の程度や状態によって幅があるので、日数は参考程度にしてください。
今回の伝えたいことは、
腱や筋肉の障害の回復は3段階あるということ。
- 炎症
- 仮修復
- 再構築
焦って走り出すと「仮修復期の柔らかいコラーゲン」が再損傷して長引きます。
また、正しいタイミングで負荷をかけても、完治までには思っている以上に時間がかかります。
しかし、治る過程を理解することで不安をなくし、
希望をもってリハビリトレーニングに臨めます。
この知識が、同じように悩むランナーの回復の助けになれば幸いです。