この本のトピックの中心は、M&Aの観点から経済安全保障のリスクを説明しているものでしたが、M&Aだけでなく、今後のビジネスにおける中国との付き合い方を考えさせる示唆に富むものでした。


最近は、半導体関連等、米中新冷戦が毎日のように報道されていますが、日本企業が真剣に中国との付き合い方を考え直さないといけない時期がきているのだと思います。

以下、この本で紹介されていた内容です。

<中国の軍民融合政策>

コロナ前までは、中国共産党の軍民融合政策のもと、中国企業が世界中でM&Aをしまくり、手段を選ばずに世界中の高度な技術を手に入れてきました。

その技術が中国で軍事転用されて兵器開発に使われている可能性が高い点に関し、日本企業はもっと警戒する必要があります。

<株式投資におけるリスク>

中国は、2010年7月に中国共産党がひとたび有事だと判断する事態が発生すれば、日系企業の中国子会社も含め、中国のあらゆる組織のヒト・カネ・モノの徴用を合法化しまうされて「国家動員法」を制定しています。

つまり、中国共産党が有事であると言い出した時点で、日本企業の中国における資産が中国政府のものとなり、また日本人出向者は人質になる可能性があるのです。

保有銘柄の会社が、中国で積極的な事業を展開しており、中国内に資産がたくさんある場合、一夜にして損失に変わる可能性があるのです。これは怖いですね。。。

<中国製造一本足のリスク>

そのため、中国に製造拠点があり、一本足打法になっている会社の株は買うのは出来るだけ止めておこうと思っています。

以前株を保有していた自転車のあさひは中国で自転車を製造して日本で販売していますが、有価証券報告書には「海外事業戦略には、現地において、政治、経済、社会の変化等の予期しない事象により、事業の継続が困難になる可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。」との記載がありました。。。

はっきりとは書いていませんが、この予期しない事象って中国共産党の意向という意味とも読み取れます。怖いですね。

<脱中国製造を進める日本企業>

逆に中国での製造を止めて脱中国製造を進めている企業がないのか調べたところ、日本政府の脱中国製造への補助金もあり、以下の会社が中国から日本国内、もしくは東南アジアへの製造拠点移転を進めているそうです。

  • 信越化学
  • HOYA
  • 塩野義製薬
  • テルモ
  • カネカ
  • 明電舎
  • シャープ
  • 沖電気
  • 住友ゴム
  • シャープ
  • サラヤ
  • アイリスオーヤマ

2019年まではパンデミックが起こって飛行機に乗る人がいなくなる世界になるなんて夢にも思わなかったので、世の中、何が起きるか本当にわかりません。ということで中国依存度が高い企業の株よりも、脱中国を進める上記の会社の株を買っておいた方がいいのかもしれません。


中国の売上比率が高い会社はこれからどう行動して行くのか要注目です。


私が社会人になったのは就職超氷河期の2000年だったのですが、幸い一部上場企業のメーカーに就職することが出来ました。


まあ、全般的にはいい会社でいい人も多かったのですが、今でいうブラック企業で、労働環境、特に拘束時間が非常に長くて、夜に広告代理店のお客さんを営業訪問したり、一番酷い時は夜中の2:00頃仕事が終わって営業車で帰宅するなんてこともありました。


一時期徹底的に仕事に没頭してみようと思い、ガムシャラに取り組んだこともありましたが、5年後、10年後もこの仕事をするのは厳しいしやりたくないなと思い、結局10年働いて退職しました。


そのように悩みながら働いていた時に何度も読んだ本がこの本でした。


久しぶりに読み直したら以下の内容に線が引かれていました。当時琴線に触れたのでしょう。。。 


  • 財産も知識も蓄えれば蓄えるほどかえって人間は自在さを失う。
  • 結果が思うようにいかなくたっていい。結果が悪くても、自分は筋をつらぬいたんだと思えば、これほど爽やかなことはない。人生というのはそういうきびしさをもって生きるからこそ面白い。
  • 何でもない一日のうちに、あれかこれかの決定的瞬間は絶え間なく待ち構えている。朝、目をさましてから、夜寝るまでに。瞬間瞬間に。
  • 危険な道をとる。死と対面することこそが、いのちを燃やす真のよろこびである。
  • 実際にはまず自分の分限というものを考えてしまう。自分を限定してしまい、その程度の人生で諦めてしまえば、これは安全な一生。だが、自分がいまの自分を否定して、更に進み、何か別な自分になろうとすることには大変な危険が伴う。
  • 会社は忙しいし、夜帰ってくると疲れてしまうし、そのうち女房を持ち、子供などを持ってしまうと、型通りの家庭生活に入ってしまう。大体においてここで人生を諦める。
  • 不成功を恐れてはいけない。人間の大部分の人々が成功しないのが普通。
  • 人間にとって成功とは、自分の夢に向かって自分がどれだけ挑んだか、努力したかではないだろうか。
  • これは自分にとってマイナスだな、危険だなと思う方を選ぶ。結果がまずくいこうがいくまいがかまわない。むしろ、まずくいった方が面白いと考えて、自分の運命を賭けていけば、いのちがパッとひらく。計算づくでない人生を体験する。
  • 何か、これと思ったら、まず、他人の目を気にしないこと。また自分の目も気にしないで、萎縮せずありのままに生きる。
  • 人に相談したって仕様がない。心の動く方向にまっすぐに行くのだ。失敗してもいいから。
  • さしあたり惹かれるものがなかったら、本を読むのもいい。本は自分自身との対話。
  • 「いまはまだ駄目だけれど、いずれ」と絶対に言わないこと。"いずれ"なんていうヤツに限って、現在の自分に責任をもっていない。
  • 自分を他と比べるから、自信などというものが問題になってくる。他と比較して自分を決めるというような卑しいことはやらない。自信なんていうのは相対的価値観。
  • なぜ友達に愉快な奴だと思われる必要があるんだろう。こういうタチの人は自動的に他人に気をつかって、サービスしてしまうんだろうけど。それは他人のためというより、つまりは自分の立場をよくしたい、自分を楽なポジションに置いておきたいからだとうことをもっとつきつめて考えてみた方がいい。
  • 人は自分を客観視しているように思っていても、実は誰でも自分が好きで、大事にしすぎているのだ。
  • やろうとしないから、やれないんだ。それだけのことだ。


岡本太郎さんは、この本を70代後半で書いたようですが、高齢になってこのような若々しい気持ちを持ち続けていたことが本当にすごいことだと思います。


読む人の現在の状況で、上記以外にも深く突き刺さる言葉が必ずあるはずなので、読んでいない方はぜひ一度読んでみて下さい。

現在私が働いているのは、一般的に大企業と言われるメーカーなのですが、まさにこの本に書かれていることが実際に起きていて非常に共感した内容でした。

 

<本質でないところの作業に時間をかける膨大なページ数の会議資料>

私の会社も5年ほど前にやっと会議資料がワードからパワーポイントになったのですが、ソフトが変わっただけで資料の構成要素は変わっていないので、会議によっては200ページを超える会議資料を作成することもあり。。。本来時間をかけるべきものは内容であり、本質とは関係ないグラフとか表、フォントサイズ等の見栄えをいかによくするかに時間をかけており、本来時間をかけるべきものは内容であり、本質とは関係ないグラフとか表、フォントサイズ等の見栄えをいかによくするかに時間をかけており、以前よりも生産性が落ちているような気がします。

 

<宛先多数の社内メール>

誰に対して発信されているのかよくわからない宛先多数のメールが氾濫しています。後で誰かから、聞いていないとクレームをつけらえた時の保険でとりあえず思いつく人に片っ端から送っているような感じ。メールをプリントアウトしたら1ページ目と2ページ目が宛先とCCだけで終わっていたこともありました。

 

<課内コミュニケーション>

転職して一番驚いたのが、隣にいる人に口頭で簡単に済む話をメールで連絡している点でした。口頭で説明すれば2-3分で済む話を、メールで30分ほどかけて書いて送ったりしていることもあり。備忘録としてメールを残したいのであれば、最初に口頭で説明して、その後にポイントだけメールで送るようにするだけでも大幅に時間が短縮出来ると思うのですが。。。

 

<受け身な仕事スタイル>

これは私の会社だけではないと思いますが、出社してまずメールを開くので、そのメールへの対応で午前中がつぶれてしまうこともあり、受け身の姿勢で仕事をすることが多くなってしまっています。その中には上記の大量CCメールも入っているので、一応目を通して置いたりと、洪水化した情報に溺れている状況。このままだと、自分で何かを考えたり、同僚とブレストしてアイデアをブラッシュアップしたりするような付加価値の高い仕事をする時間が少なくなり、生産性が低い仕事の仕方しかできない人間が大量に出てくる恐れあり、特に大企業はその傾向が強いと思う。

 

2000年前後は、ITが生産性を劇的に向上させるといわれていましたが、蓋を開けたらそんなことはなかったということ。但し、今回のコロナショックで、在宅勤務が普及し、働き方も大きく変わっていく可能性もあります。緊急事態宣言が出てようやく大企業も在宅を導入せざるをえなくなったので、ITが本当に生産性を上げるツールになる可能性もありますが、働き方改革を妨げるのは結局ツールではなく、人のマインドセットだと思っています。古い昭和感覚の上司は緊急事態宣言が終わった途端に、やっぱり在宅ではコミュニケーションがとりにくいとか言い出しそう。コミュニケーションがきちんととれるかどうかは、働き方の問題ではなく、ベースとなる人間関係を構築できているかどうかだと個人的には思うのですが。

 

読む人の職場環境によりいろいろ思うところはあるはずなので、ぜひ一度読んでみて下さい。

この本を読んでトヨタを連想しない人はいないと思うのですが、一応フィクションということになっています。

最近は池井戸潤以外の小説は読まなくなってしまいましたが、この本は友人に勧められ、読み始めたら面白くて止まらなくなってしまい、1日で読み終えてしまいました。


小説というか形を取っていますが、トヨタの歴史が非常によく纏まっているので、トヨタのことを知りたい人にはお勧めです。

将来を見越して90年代に現在主流となっているハイブリッドカー「プリウス」を断行したり、ダイハツを子会社化したりと武田剛平(奥田さん)の功績が非常によく纏まってます。

冒頭で、豊臣統一が女性問題で名古屋のフロント企業の事務所に連れ込まれ、それを武田剛平が救出するというエピソードがありますが、それさえも実際にあったエピソードのような気がします。

続編の「トヨトミの逆襲」も、IOT、EV(電気自動車)、自動運転、カーシェア等、競争の外部環境が大きく変化していく中でのトヨトミ自動車の動きと、イエスマンしか周りに置かずに邪魔なものは排除し独裁体制を作り上げていく豊臣統一社長が非常によく描かれているのでこちらもお勧めです。

マスコミの報道も、かつて年間約5,000億円(2018年度)もの宣伝広告費を出してくれていた最大の広告主のトヨタに関しては、本当のことを報道しないことも多かったので、この本を読んだ後にトヨタのニュースを見るとまた見方が変わるのではないかと思います。

例えば、トヨタは2018年に人事制度を大幅に変更し、執行役員の数も半分以下に減らしたり、2020年には副社長のポストを廃止することを決定しています。

マスコミは意思決定の迅速化と若手を抜擢できる体制の構築、ガバナンスの強化のためとポジティブな形で報道していますが、これも実際は豊田社長の独裁体制を強化するための人事施策のような気がしてきます。

この梶山 三郎という覆面作家が誰なのかは、近いところにいる人達は分かっているんだろうなと思います。

個人的には、奥田さんに近い経済記者が書いたような気がします。

この本は、私が以前ビジネススクールに通っていた時に参考図書として紹介されて読んだ本です。

周りの人や企業、団体の行動原理や、いろいろな企業で行われるマーケティングの背景にあるものを

①返報性

②コミットメントと一貫性

③社会的証明

④権威

⑤好意

⑥希少性

という6つの原理でアカデミックに分析・説明してくれています。

周りの人との付き合い方や悪い商法や宗教への勧誘に騙されないように読んでおいて損はありません。

騙されないようにするだけでなく、周りから可愛がられている人や営業成績がいい人の中には、無意識にこれらの原理を実践している人もいますが、原理さえ理解すれば、努力次第である程度自分も同様のふるまいが出来るようになるのではないでしょうか。

2017年に森友・加計問題で忖度という言葉がクローズアップされ、ユーキャン新語・流行語大賞にも選ばれてましたが、マスコミも広告宣伝費をたくさん出してくれる広告主企業にはめちゃくちゃ忖度するくせに、ここぞとばかりに忖度は悪いことと政権批判をしてました。

影響力の武器で言えば、いろいろな関係者の中で、①返報性、④権威、⑤好意等の原理が働いてあのような騒動になってしまったのではないかと思います。

名著は、一度だけでなく何度も読む価値があり、その度に自分を取り巻く環境により感銘を受ける部分が違うことがありますが、この本もそんな本の一冊です。

なお、史上最年少で自社株式を公開したリブセンス代表取締役社長の村上太一さんも、以前影響を受けた本としてこの本をあげていましたので、機会があればぜひ読んでみて下さい。