開始から4時間以上遅れて、ようやく福ちゃんが到着した。
前日飲み過ぎたのが遅刻の理由らしかったが、よく覚えていない。
彼は、来るなり靴を買った。
靴も持たずにマラソン大会に来ていた。
短パンも無い。ジャージで走るつもりだ。二日酔いの中、渋滞でイライラしながらようやく着いたこの山梨の山中で、軽くジョギングでもするつもりだったのだろう。
肝心なものを準備してきていないのに、順番待ちの間に読む「カーセンサー」はしっかり準備してきていた。
靴やズボンよりも大事な「カーセンサー」。
出版社冥利に尽きる。
それでもなぜか怒る気がしない、憎めない男「福ちゃん」。
福ちゃんが来てからは、多少疲れの見え始めた私達も、休める時間が増え、心にも身体にも多少余裕がでてきた。
ただ、この余裕もつかの間のものであった。
走り始めてもう6時間が過ぎようとしていた。
足の張りもだいぶ強くなってきた。
この4倍走るのか。しかも岡っぴきがそろそろいなくなる。
考えてはいけないと思いながらもついつい考えてしまう。
岡っぴきが帰るまで残り数時間となった。
残される3人は順に自分の順番を一回ずつ飛ばして、休息をとった。
その分岡っぴきが多く走った。
さらに、岡っぴきは残る私達のへの置き土産として、3人にマッサージを施した。
さすが体育教員免許を持つ男。ふつうのマッサージではない。
ものすごく気持ちのいいマッサージだった。
これほどの力の抜けるマッサージを受けたことは、普通の種のマッサージでは初めてだった。
これだけではなかった。
「疲れたときには柑橘系の果物!」
彼はこのときの為にグレープフルーツを持ってきていた。
そして、自分では一つも食べずに私達へ残していってくれた。
しかもナイフを付けて。
このグレープフルーツの味は向こう20年忘れることはないだろう。
みんなにマッサージを施す岡っぴき
やっと到着しおどける福ちゃん