「久保君っ!!」
校舎裏に待っている久保君を呼ぶ。振り向いた彼の手には白い絵の具のついた絵筆が握られている。
すとん、と隣に座り、絵を覗き見る。綺麗な雲の形は白のグラデーションで塗られ、太陽の光と空は神々しい鳥をイメージされる色が塗りかけられている。
「な、何だよ。人の絵をじろじろ見んなよ。」
手で隠された絵は、太陽の光を軽く遮られ、少し光を失った。
しょうがないので周りの景色を見渡しながらさりげなく見る。久保君は真剣な目をして色を塗っている。
目に映るのはいつも絵と筆で、それ以外は何も見ていない。
私はなんだかつまらなくなって、いつもの癖のように空を見渡した。
今日は美しい晴天で、水色のグラデーションが晴れ晴れとしている。
今日の景色、きれいだよ。書いてみれば??といったら、久保君はやや呆れた顔で背に隠してあった水色のキャンバスを取り出した。
―もう書いてあるし。俺、毎日の空を絵にするのも趣味だから。と言われて少しうれしくなった。
また一つ、久保君の趣味を見つけられた。せっかく同じ話題を持っているんだもの。たくさん久保君の事、知りたい。
水色のキャンバスいっぱいに書かれた空。なんか欲しくなってきた。あの絵、きれいだ。
とそこでチャイムが鳴る。久保君は腰を浮かせて筆を片付け始めた。
「・・・里。・・・杏里?ちょっと杏里!!!!」
友人の草薙房江に呼ばれていたことに気付かないほど、今、私はボーっとしていた。
なんだか、久保君に会えない間はつまらなくて、絵が早く見たい。
―どうしてだろう??
次の日も、また次の日も、何日も連続で久保君に会いに行った。
絵を見ている間、楽しくて・・・
そして土曜日、こっそりと学校の校舎裏に行った。いるわけないのに・・・
だけど、そんな私の脇には、大きなキャンバスが9枚はさまれていた。
そして、9枚のキャンバスを新聞紙の上にさかさまに3枚ずつ並べる。
大きすぎるキャンバスのつなぎ目にガムテープを張ってひっくり返し・・・
私は満足した。
今度、このキャンバスに・・・大きく『雲の鳥』を書いてもらうんだ。
第三話へ続く
