今夜は眠れない。今は起きていないといけない。理由を書くのはナンセンスだ。無意味である。
   信じられない幸福が突然落ちてきたら、ああ、それってすごいことだな、ひとしきりに感動してしまう。そんなこんなで眠れないのだ。魔法だ。呪縛だ。
   そんな日なのである。



   自分が好きなモノにとても寛容になれている。拘りを見逃し許容範囲を広げている。昔には耐えることが出来なかったことも驚くほど簡単に受け入れている。果たしてそれが良いか悪いかは置いておいて、便利になった。人間を許せている。

   裏を返せば関心が薄れたということだが、それは誤差の範囲だろう。違うベクトルの何かが突然変異したんだ。伸ばし続けていたゴムが劣化して力を無くしたんだ。

   きっとプラスに働いていると思う。気を張って、表面張力で支えていた不安は無くなったから。適度に脱力して諦めている。今はこれでいいと思う。純粋に好きなものを楽しんで苦手なものをそっと排除する。これでいいと思うな。
   いつか独り占めしたくなるほど好きなヒトやものが出来たら、そのときに変わればいいだろう。(少しだけそんな日を願っている)

   なので私はそれまで汎愛、博愛。
   みんな好きです。

   そういえば、大人になって?いや高校くらいから嫌いな人っていないよね。苦手な人は出会うけど嫌いになることはないよね。これは大人になったってことだろうか?ふーん、良いことに気づいてしまった!






   先日、京都でライブをしたんです。
   家を出たときは青い空でじめっと暑く、うわー夏じゃねーかーと思いながら自転車で駅まで向かいました。電車に揺られ京都に着き改札を出たところ、さっきまでの青空は何処に?一面曇り空。というより雷雲。雷がゴロゴロ鳴って雨が降るのも時間の問題でした。駅から会場まで10分ほど歩くので急ごうと歩き出した瞬間。本当まさに足を出した瞬間。
   豪雨。豪雨。えーー!驚くほどのゲリラ豪雨。時間の問題どころか秒単位じゃん。
   私、傘持ってないよ。どうしよう歩けません。外国人観光客は揃って豪雨の動画を撮っている。そんな余裕をかましている暇はない。

   とりあえずコンビニで傘を買いました。傘すら気休めですがギターを守ることは出来るだろうと。ところで私、初めてコンビニ傘を買ったんですが700円もするんです。高いね。でもしっかりした傘だったしこれからも使えるなら許してやろう、、と自分を慰めるように気持ち新たに会場へ向かいました。屋根のある道を通ったので傘の出番は道路を渡って少し歩いた2分のみ。会場に着いて10分もすると雨は幾分マシになってましたがそれも私は許しました。(後に知ったが本当に私が駅から降り立ったその瞬間から会場に着くまでだけのゲリラ豪雨にジャストミートされたのだ)

   全身雨に打たれてセットした前髪も崩れてまるで鬼太郎のようだ。それでもライブは楽しかった。ライブは天気関係なく楽しいね。


   夜。終電に乗って地元の一つ前の駅に着きました。このまま地元までのあと一駅を乗ると40円多くかかる。私はその40円を節約しようとライブ後の疲れた身体に鞭を打ち、閉まりかけのドアをすり抜け電車を降りた。
   ギターを背負いリュックを前に持ち、さらに大きな重い荷物を持ち40円の道を歩いた。地元の駅まで30分。長かった。よく歩いた。やっとの思いで駅に止めておいた自転車に荷物を乗せる。
   ここで私は気づいてしまった。
   傘、無くね?


   脳内で記憶を辿りました。私が歩いた30分の道中、ずっと傘は持っていなかった!確かに電車の中では持っていたのに。となると「閉まりかけのドアをすり抜け電車を降りた」ときですか?
   思わずうわぁと呟いた。心が折れてしまった。




   要約。買った傘をその日のうちに手放した。







   悲しかったです。なんてったって700円で買った傘を2分しか使ってあげられずにお別れをしたんだもの。
   あまりの悔しさに次の日から3日間かけて鉄道会社に問い合わせましたが、それでも見つからなかった話はいつか直接私に聞いてください。涙して答えますね。




   忘れ物には気をつけましょう





   またね。