「成人式の連休の時、ひょっこり息子が帰ってきたのよ」
「あら、よかったわね。就職で親元を離れて約一年? 寮に入ってるんでしょう? 息子さん、がんばってるわよね」
「それがよくないのよ。だって、お正月帰ってきたばっかりだったのよ。その時点では『五月の連休まで帰らないから』と言ってたのに。それなのに突然帰ってくるなんてあやしいと思わない? 『何か用事? 免許の更新とか?』と聞いたら『いや、それは来年。別に用事はない』とか言ってごろごろしてるし」
「里心がついたんでしょう。お正月の時居心地がよかったから、のんびりしに帰ってきたんでしょう」
「そんなかわいい息子じゃないわよ。そこでピンときたの。お正月の時、新しい彼女ができたってちらっと言ってたのね。もしかしてその彼女が、できちゃったんじゃないか、その相談じゃないか、って」
「ええ? できちゃった結婚? でもそれだったら彼女連れてこないと。いや、こっちが向こうへ挨拶に行くのか。それで?」
「でも、一向にそういう話を切り出す気配がないのね。三日待ったけど、とうとう何も言わずに帰ろうとするから引き止めて『ちょっとあんた、相談することがあるんじゃないの?』って言ってもきょとんとしてるから、『実は彼女ができちゃったから、急いで結婚する相談に帰って来たんじゃないの?』って聞いたのよ」
「そんなストレートに聞いたんだ?」
「だって聞かないと! 言い出せずに手遅れになったらどうするのよ。事と場合によっては時間が勝負なんだから」
「まあ、ね」
「そうしたら『何言ってんだ。違うよ。暇だったから帰ってきただけだよ』って言って帰って行ったわ」
「なんだ。よかったじゃない。何にもなくて」
「よかったけど、肝つぶしたわ。突然予想外の行動とらないでほしいわ」
「いやいや、お母さんが勝手に妄想して暴走しているだけなのでは? 一体自分の息子をなんだと思ってるのよ」
「だって、わからないじゃない! いつそういうことが起こっても不思議じゃないでしょう?」
「まあ、ね」