Sさんの今回の入院は、胃腸炎によって食事ができなくなり、ひどい低血糖を起こしてしまったためのものでした。

同じ部屋は今までも糖尿病の方がほとんどでしたが、1型の方とは初めて出会いました。

すでに病歴が6年とのことなので、不安に思っていたことについて質問したり、コントロールのコツなどを教えていただいたりしました。

いろいろなお話をさせていただく中で、ある時Sさんがこんなことをおっしゃいました。

「アキさんはまだ病気になって間もないのに、ニコニコして前向きにいろいろ勉強してて偉いわね。私はそのころ、メソメソしてばかりで…。」

私は、本心を言うべきか迷いました。まだ知り合って数日の人に気持ちをあかしてよいものかどうか…。でも、他に同じ1型の人は周りにいないし、Sさんの優しい人柄にも甘えさせてもらい、「実は、本当は病気のこと、自分の中で全然消化できていないんです。でも、今まで誰にも言えなくて…。」と打ち明けました。話しながら私は泣いてしまいました。知り合ったばかりの人の前で泣くのは恥ずかしかったけど、我慢できませんでした。

するとSさんはこんなふうに言ってくれました。

「今まで独りで我慢してたのね。独りで頑張ってたんだ…。確かにこの病気になったことは、自分に責任なんてまったくないけれど、合併症を起こさないようにするのは自分の努力次第だと思うの。自分の努力で病気を治すことはできないけど、せめて合併症の予防は頑張りましょうよ。一人じゃないんだし。」

Sさんのこの言葉が、どれほど励みになったかわかりません。1型と判った後、食事療法など、なんだか努力しても無駄なような気がして、糖尿病と判明してすぐの時の「生活習慣を改善して頑張ろう」という気持ちがなくなりかけていました。

もちろん、1型ですからインスリン注射をなくすことは不可能ですし、今はまだ残っているインスリン分泌能力も、いつか必ずゼロになる日がやってくることも間違いありません。ですが、合併症に関してはSさんのおっしゃるとおりだと思いました。投げやりになってもいいことなど何もありません。

病気になったことを消化しきれていないのは相変わらずですし、インスリン注射のたびに嫌な気持ちがするのは、むしろ日が経つにつれて強まっています。でも、その都度Sさんの言葉を思い出して自分を励ましています。

Sさんにも、さきの上司と同じくらい感謝しています。