大学病院を受診して2日後から入院することになりました。生まれて初めての入院です。

一人暮らしで好き勝手に過ごしてきた私が、見ず知らずの人たちと何日間も同じ部屋で過ごすことができるのか、不安でたまりませんでした。

入院までの2日間は、入院準備と入院生活への不安で、病気そのものについて考えている余裕はありませんでした。

だから、自分が病気になってしまったことについて悲しんだのは入院して2、3日経ってからでした。

入院した日とその翌日は数々の検査をこなすので精一杯。それが一段落して少しゆっくりできる時間ができると、改めて自分が病気になってしまったという事実がのし掛かってきました。

「せめて2型であってほしい」と願いました。2型なら、自分の努力次第でインスリンや経口薬を必要としないところまで持っていくことができるからです。自分の体が、自分の意思や力でコントロールできなくなるという状態になるのが怖くてたまりませんでした。実際は、健康な状態であっても自分の意思など及ばない部分が多いのですけどね。

ですが数日後に、「インスリンを入れ始めたらやっぱりケトン体が消えましたよ。」と主治医の先生から話がありました。この「やっぱり」という言葉で半分1型である覚悟をしました。半分はまだ、「日本の糖尿病患者の9割は2型だというし、今までいつだって『大多数』に属してた平凡な自分がそこからはずれるわけがない。」という訳のわからない理屈のもとに、希望を捨てずにいました。

しかし、さらに数日後に抗GAD抗体が陽性だったことが判り、1型であることが決定的となりました。

私はますます落ち込みました。でも大部屋ですから、泣くこともままなりません。それからは毎日のシャワーの時間に泣いていました。

今まで病気などしたことがなかった私が突然入院することになり、家族はひどく心配していましたので、家族にも自分のつらい気持ちを打ち明けることはできませんでした。友達や同僚にも誰にも言えず、とにかく独りで悲しいのを我慢したまま入院生活も2週間が過ぎました。

そんなある日、お向かいのベッドに、6年ほど前に劇症1型糖尿病を発症したというSさんが入院してきました。

このSさんのおかげで、私はやっと自分の気持ちを表に出すことができるようになりました。

(つづく)