お店の中で、キッチンの中で、ずっと篭って料理をしていても、わからないことはたくさんあります。だからこそ僕はキッチンから出て、旅を続けて、人に会って、刺激を得て、学んで、料理して、というサイクルを一番大事にして、お店を始めました。
 
 20歳の頃から10年も毎年海外放浪に出ていたのに、コロナで海外に行けなくなって、、いついけるかもわからなくて。でもお店は止められないから、過去の旅を思い返して、教わったレシピを見返して、いろんな引き出しを駆使して料理を続ける。それだけではやっぱり、オイルが切れそうだな。と思ってしまっていました。

 勝沼でもう一つの生活を立ち上げる決心をしたのはそういう流れがあったからです。
キッチンの中での日常と、旅先での新鮮な体験。その往復ができないのであれば、日常の中に旅を持ち込んだらいいじゃないか。そんな風に思いついたのです。東京では、キッチンの中では、体験できないような要素を日常の中に取り入れて、日常を再構築したらいいのだ。
豊かな自然と触れること。生産者と触れること。いろんな生き物と触れること。畑で土をいじること。家で楽器をつま弾けること。そんなことを日常に取り入れた2拠点生活を思いついたら、なんだかワクワクしてきて。そしてブドウビールを作るために勝沼に通ううちに、実現するモチベーションが上がってきて。ついに年の瀬が近づく頃には、勝沼で家を借りることを決心しました。そして、マルサン葡萄酒の若尾さんに2拠点生活の決心をしたこと、勝沼でバレルエイジング工場&住処を探したいことをついに告白したのでした。

 



自分たちが探していた物件のイメージは
・一軒家に大きな敷地
・畑がある
・動物を飼える
・バレルエイジング倉庫を敷地内に作れる
そんな物件。

勝沼を車で走ってると空き家がいっぱい散見されるので、そんな理想的な物件が見つかるんじゃないか。そんなイメージで探し始めたのですが、空き家バンクやネットなど色々な情報を辿っても、そんな都合の良い賃貸が出てくることはありませんでした。

 どうやら、勝沼では空き家賃貸は殆ど出回ってないのではないか。そんなことに気づき始めたころ、先に「旧甲州街道沿いでバレルエイジング用の倉庫を貸してくれる人がいるかもしれない」という話を若尾さんから着信しました。そして紹介してもらったのがぶどう農家、百果苑のしんすけさんでした。

 

 

 

早速しんすけさんに物件を見せてもらうと、なんとブドウ祭りの会場に隣接した物件で、広さも十分。そして何より、「ビール屋さんを誘致したら勝沼がもっと面白くなるから、是非ここでやってほしい」という話もしていただき、とても気持ちが盛り上がりました。住む場所はともかく、バレルエイジング工場はここでできるかもしれない!と。

 


 






時を同じくして、勝沼で家を探すべく、若尾さんに紹介していただいた勝沼移住者で設計士の S PLUS ONE Architecture 坂野さんにお話を伺うと、勝沼では滅多に戸建て賃貸がオモテで出てくることはなくて、自分たちが最初に理想としていたような家は、勝沼に縁を持ちながらゆっくり探さないと見つからないのではないか、ということがわかってきました。

それらの話を総合すると、2拠点生活をまず推し進めるためには、住む場所はなんとかするとして、百果苑さんの場所でまずバレルエイジングビールを作るという「商売」を始め、それを名刺がわりに少しずつ勝沼の人と繋がっていくのが良いのではないかと、思い至りました。そして早速百果苑のしんすけさんに連絡したのでした。

そうすると、あとはとりあえず生活ができるコンパクトな家を探すぞ!ということになり紹介頂いた地元の不動産屋さんに向かうと、なんと1軒だけ2Kのコンパクトな平屋(はなれのサイズ)がちょうど空いたようで、紹介してもらいました。戸建て賃貸は滅多に出ないと聞いていたので、コンパクトでちょうど良いし、もう決めてしまおう!と内見して即決!


(内見の日から住めそうな趣き。外には大家さんのぶどう畑が広がる)

そんなこんなで、若尾さんへの告白から、ものの2ヶ月の間に倉庫と住処が見つかってしまったのでした。

鶏や猫が飼えて、ギターをジャカジャカ弾けるような大っきな家には、将来いつか引っ越すとして、まずは勝沼と東京で2拠点生活を始めて、バレルエイジングビールから始めるぞ!そんな風に決心したのでした。