斎藤 美奈子(文芸評論家)
安保法案に反対する八月三十日の全国一斉デモを、翌三十一日の東京新聞は紙面をたっぷり割いて伝えた。同日の全国紙はどうだっただろう。
朝日新聞は一面のほか二面、社会面でこれを扱い、毎日新聞も一面で報道、社会面には抗議行動の広がりを示す全国地図を掲載した。
苦笑したのは読売新聞だ。社会面に載った小さな記事の見出しは「安保法案『反対』『賛成』デモ」。二十九日に新宿で行われた賛成デモ(主催者発表で五百人)と国会前の反対デモ(同十二万人)を同列に扱い、さも意見が拮抗している風を装う。写真も二枚。
が、ここまではまだマシ。笑いが引きつるのは産経新聞だ。社会面の記事の見出しは「周辺、雨中騒然」。<国会正門前には参加者が詰めかけ、騒然とした雰囲気になった><警察官が制止する中、参加者が柵を乗り越えて車道にあふれ、車道がふさがれる状態が夕方まで続いた>などの文面には「デモ=騒擾」とみなす姿勢がありあり。
公安関係者に対し、SEALDsについては<洗練された”クリーン”なイメージで存在感を示しているが、実態は不明な部分もある>。
読売が御用新聞風なら悪意に満ちた産経の報道は、もはや市民の敵レベル、特高警察風である。市民運動に対する認識も五十年古い。ジャーナリズムの看板はもう下ろしたら?
また数日後に「よくぞ言ってくれた」とばかりに読者投稿欄に載るんだろうな。
同じコラムには山口ナントカって人も書いていて、内容は似たり寄ったりなのだが、傾向としては似てきている。以前はそれなりに批判調だったのが、今では単なる罵倒だ。それも、「勝ち目のなくなってきた負けず嫌い」が言い捨てるかのような口調で。