【 傾いた家にも地震保険はでる! 】

 被災者のみなさまへ

 今回の巨大地震で被災したみなさま、心からお見舞い申し上げます。
 家が少々傾いた程度では、地震保険金はでないと思っていませんか。
 実はでます。
 「でない」という方がおられますが、それは違います。
 木造住宅なら傾斜度3度、鉄筋住宅なら1. 2度超で「全損」扱いです。
 傾斜度はデジタルアングルメーター(1万円以下でネットで購入可)で計測できます。
 これ以下の斜度でも、家が傾くということは、基礎、壁、柱、屋根など「建物の構造耐力上主要な部分」(略して「建物の主要構造部」、建築基準法施行令1条3号)にひび割れ、ひずみなど相当なダメージをうけていますから、それらの物理的損傷割合を合算すれば、「全損」「半損」「一部損」のどれかにあてはまる可能性は多いにあります。
 また見落としがちですが、建物を原状回復させるための地盤等の復旧費用も建物の主要構造部の損害に含まれます。
 液状化したような軟弱な地盤の上に建っていた建物の場合には、地盤等の復旧費用だけで、1000万円以上数千万円に及び、たちまち「建物の保険価額」の「50%以上の損害」に該当します。この場合には、それだけで「全損」という評価が下されるのが正当な考え方です。

加茂隆康の「文化のホワイエ」はつづく
【 職人エスプリ 】

 住宅工事においては、新築でもリフォームでも、微妙な誤差や思惑違いが発生する。そんなとき、施主がクレームをつけると、住宅メーカーやリフォーム会社の方は、しばしば「その程度の問題は、『許容範囲』です」とおっしゃる。

 『許容範囲』とは何か。 
 私見では、『許容範囲』の定義は、「職人の巧みな技をもってしても、物理的に回避できないひずみや誤差」である。

 技の良い職人の手にかかれば、寸分の狂いなくできるのに、別の職人が施工すると、多少の狂いがでるというのは、単に技能のよしあしにすぎない。

 後者は単に下手なのだ。

 それは「許容範囲」ですませられる問題ではない。

 名医が手術すれば、ガンの病巣を100%除去できるのに、藪医者がやったら95%しか除去できず、とり残した5%のガンが転移して、患者さんが亡くなられたとしよう。

 「5%のガンをとり除けなかったのは、許容範囲です」と執刀医から言われて、ご遺族は納得できるだろうか。

 できないと思う。

 建築工事の職人にも、同じことが言える。

 腕の良い職人が最近は激減しているというのは、嘆かわしい現実である。

 住宅建築やリフォームでも、“完璧なまでに精度へのこだわりを持ち、「許容範囲」という言葉で安易にごまかさない”、これが職人のエスプリだと私は思う。