雨が窓を打つ音が聞こえる。

雷が轟く音が聞こえる。

水をはねながら車が通る音が聞こえる。

外は荒れ狂ってたくさんの音が聞こえるのに、なぜか心は静かになる。

 

昔から夏の雨の日は好きなのです。

雨の日に見た景色や匂いが浮かんでくるのです。

 

だんだん暗くなってゆく空を教室から見ていたこと。

稲光から音がするまでの秒数を数えて、雷までの距離を計算していたこと。

部活の途中で大雨が降ってきて、ずぶ濡れになりながらはしゃいでいたこと。

どうぜずぶ濡れだからと、わざと水たまりを通った帰り道のこと。

水泳大会の途中で雨が降ってきて、みんなでテントで待機していたときのこと。

雨が止むのを待ちながら、自転車置き場でいつまでもおしゃべりしていたときのこと。

キャンプで夜に雨が降ってきて、小屋に避難したときのこと。

停電になって部屋が真っ暗になり、冷蔵庫の電気も切れてしまったので、ロウソクの火を灯しながら冷蔵庫のビールを飲んだこと。

雨で出かけられないから、部屋で一日中テレビを見ていたこと。

ずぶ濡れの髪の毛を拭いた好きなバンドのタオルがソファーに無造作に掛けられていた一人暮らしの部屋のこと。

雨粒が流れるオフィスの窓から見える電車のこと。

風雨で帰宅途中に電車が止まり、宿泊したホテルのプールで泳いだこと。

湿った土と濡れたタオルの匂いのこと。

 

そして、そんなことを思い出しながらエッセイを書いている今日のこと。

 

久しぶりにピーター・スピアーの絵本『雨、あめ』をめくってみた。

 

強い雨風の日はドキドキを感じるのです。

大変な思いをしている方もいるだろうし、不謹慎なのかもしれませんが、静かにドキドキしています。

 

神山ユキ

2024.8.16