有権者の皆さまへ

 社会保障と税の一体改革をめぐる採決が26日に予定されています。10年先にも語られるであろう今回の局面に際し、私の考え方を予め明らかにする責任があると考え、以下に表す次第です。

 私の目の前に今、2つの合意文書と8つの法案とあります。2つの文書は「三党実務者確認書」と「社会保障・税一体改革に関する確認書」、8つの法案は、「社会保障制度改革推進法案」、「年金制度改革法案修正案」2本、「子ども・子育て支援関連法案修正案」3本、「消費税関連法案」2本。合意文書を踏まえ、法案についての賛否を表明する場が、26日の本会議採決となります。

 結論を先に申し上げます。今回の投票の重みを強烈に理解したうえで、私は賛成票を投じます。「子どもの財布に手をつけない社会のあり方に転換しなければならない」。これまでの政治活動にて数千回、私が一貫して訴えて続けてきたこの言葉に照らし合わせての判断であり、同時に、将来なされる歴史上の評価を想定しての判断でもあります。日本の未来のために、今回の法案は潰すより成立させるべきです。

 当然、葛藤や逡巡、申し訳なさがあります。政策面からの内容評価、順序の問題など、日々頂く様々なご批判には尤もな点も多々ありますし、私も同様の問題意識を持つ各論があります。しかし、現在の日本が置かれた条件、特に時間的制約といわゆるねじれ国会下の合意形成プロセスを考えた際、総論として「今回の法案を潰した方が日本の未来のためにより良い」との判断をすることはできません。

 社会保障制度全体の人口減少時代への対応、根源的な財源問題が10年以上の単位で先送りされ続けてきました。選挙に負けるからでしょう。その間の埋め合わせの多くは将来世代からの前借りであり、国の借金体質の基調をなしました。そして、昨年来の欧州経済危機、国際金融の動揺、ソブリンリスクの顕在化が、問題先送りと決められない政治の存在を許さなくなりました。

 「先々、消費税をあげなきゃ無理なことは分かっている!けど…」。日々、多くの方々との対話で繰り返された「けど…」の後には、マニフェストとの整合性、まずやるべきこととの関連、合意内容の問題などが続きます。一つ一つ、具体的な内容を説明するなかで「それは知らなかった」とご理解頂ける場合もあれば、そうでない場合もあります。個別論点についての見解は別途お示ししますが、矛盾と不足が残存することは間違いありません。

 しかし、それでも、国家を危険にさらして整合性を優先させることは誤りだと考えています。当然、そこに起因する矛盾の責任は私自身が負うことを覚悟しており、強くその意味を理解しているつもりです。その上で、将来を見据え、前借り・先食い方式からの明示的な転換点を形づくることを優先させたいと考えます。

 「俺の年金心配してくれるのは有難いけどさ、孫のほうにもうちょっとまわしてやってくれよ」、先日ある方から投げかけられた一言です。その方は、今回の合意内容により子育て支援施策に新たに7,000億単位の予算が追加されることを知り、喜んでくださいました。免罪符にするつもりは全くありませんが、心に染みた瞬間だったことは事実です。

 論理的に合意形成ができる議論は、政治の場の議論を本質的に必要としません。論理的にどちらも正しいらしく、国論を二分する議論に決断を下すことが政治の根源的使命です。国家として発するメッセージを問われている今、日本の未来への寄与度に基づく私の決断をご理解頂ければ幸いです。

平成24年6月25日
衆議院議員 神山洋介