「……!!!!!!!!????」
いきなりキッチンから叫び声がしたものだから、やつれていた黒田と刻の二人は、疲れていて動きたくなかったのだが、振り向きざるを得なかった。
柘榴は、キッチンでまな板に刺した包丁を見つめうつむき、前髪で目は見えないが、黙りこくっている。とても叫んだあとの人間には見えない。
「……どした」
黒田が恐る恐る聞いた。
柘榴はじっとしたまま、何も言わず動かない。
刻と黒田は顔を見合わせる。
すると瞬間、キッチンにいたはずの柘榴が、右手に包丁を持って、いきなり目の前に現れた。
「あああああ!!!」
二人は驚いて叫ぶ。
柘榴が突然現れたのにも焦ったが、一番は、右手。その鋭利な凶器である。
二人とも、それなりに体術は使える。
いざとなれば、刃先をいなし、避け、屈服させる事も出来るには出来る。
落ち着いて、取りあえず、声をかけようとした途端。
ダァンッ!!!!
「ッピッ」
柘榴がお互いの間にあった小さいテーブルに、すごい早さで足を立てた。
刻が驚いて変な音を出す。
柘榴の顔は見えない。
二人は瞬時にシャキッと姿勢を正し、だらだらと汗を流す。
(…っ何で、何でこの子怒ってんのおおおオ!!??(泣))
二人には解らない。
柘榴が死闘の末、吹っ切れたことを。
柘榴が、ゆっくりと口を開く。
「刻。」
「ッハイッ!!」
名前を呼ばれた刻が反射的に返事をし、さらに背筋を伸ばす。
「……ちゃんと責任とれるんだな…?」
「ハイ取れます!」
(何のぉおおおおおおおおお!!!???)
刻は泣きそうだ。
何のことかさっぱりわからないまま、やはり反射で返事を返してしまう。
否、仕方ないのだ。こうするより他無い。
柘榴は続ける。
「にいちゃんを……」
一層黒いオーラを出し始める弟に、年長二人は至って情けない。ビクビクしながら聞いている。
名前を呼ばれた黒田は、次は俺か…!!?と死にそうだ。
しかし、柘榴が口にしたのは、余りにも予測不可能なものだった。
「兄ちゃんを……
幸せにする覚悟はあるんだろうな!! 刻!!!!」
柘榴の顔は、娘を嫁に出す父親そのものだった。
「………!!!!!!!??????」
黒田は唖然とする。
何の話やらさっぱりわからない。
どういう意味だ…?何をトチ狂ってるんだこの子は!?
焦る黒田の傍ら、もう一人の馬鹿は、一瞬で真剣な顔つきになり、見たことも無いような顔で、
「…はい 幸せにします!」
その表情は、普段のこいつからは見られないような正々堂々としたものだった。
黒田は、時間が止まった。